性獣の生贄 第7話
「…あ…、…あぁ…が…!!」
息が出来ない。下腹部から込み上げて来る、何とも形容し難い鈍い痛みがギンガブルーにギンガ転生したゴウキの体を支配して行く。
「フフフッ!!」
目の前で青いジャケットを身に纏った1人の少年がニヤニヤと笑っている。
「…は、…晴…君…ッ!?」
ブルブルと巨体が震えている。そして、その両手は彼の2本の足の付け根、彼の男としての象徴であるペニスとその下に息づく2つの球体を押さえていた。
「どう?効いたでしょ?」
華奢な体からは想像出来ないほどの力で、自身の一番大事なところを蹴り上げられたゴウキ。
「…強烈…!!」
そんな青いジャケットの少年・晴の背後で、緑色のジャケットを身に纏った少年が呟いた。
「効いたも何も、男だったら絶対にこの痛み、分かるでしょ?」
「まぁ、ゴウキのタマはデッケエからなぁッ!!」
そんな緑色のジャケットの少年・洸の横で、赤のジャケットを身に纏った少年がニヤニヤと笑いながら言った。
「…そぉしぃてぇ…!」
すると赤のジャケットの少年・来斗は、洸と顔を見合わせ、大きく頷いた。そして、
「「はああああッッッッ!!!!」」
と叫びながら駆け出して来たかと思うと、ゴウキに向かってパンチやキックを繰り出して来たのである。
「…ぐッ!?…ぐおッ!?」
自身の股間から湧き上がって来る鈍い痛みに必死に耐えながら、今度は前後左右から飛び込んで来る拳や脚を辛うじて受け止める。
「…くっそおおおおッッッッ!!!!」
これが、どことも関係のない、ただのバルバンの手先だったら容赦なく攻撃していただろう。だが今のゴウキには、3人の子供のような魔物の背後に呆然と立っている勇太を人質に取られていた。ゴウキが抗えば抗うほど、勇太の体から溢れ出す黒い闇、つまり、勇太の生命力がどんどん削ぎ落とされて行くのだ。
と、その時だった。
「はああああッッッッ!!!!」
やや甲高い声が聞こえ、来斗の右拳が物凄い速さで動いた。
ドスッ!!
そして、次の瞬間には来斗の右拳は、ゴウキの腹に減り込んでいたのだった。
「…ぐふ…ッ!!」
また息が止まった。それだけではない。股間と、そのすぐ近くの腹から湧き上がって来る不快な感覚に、腹の奥底から何かが込み上げて来るような感覚さえする。
「…ら、…来…斗…君…ッ!!」
体をくの字に折り曲げながら、それでも懸命に前を向こうとするゴウキ。そんなゴウキの視界の片隅が、大きく飛び上がった洸の姿を捕らえた。
「はああああッッッッ!!!!」
ゴキッ、と言う鈍い音が聞こえたような気がした。と次の瞬間、ゴウキの左頬に激痛が走った。
「ぐはああああッッッッ!!!!」
そのあまりの衝撃に、ゴウキが思わず横へ吹き飛び、
「ぐあッ!!ああッ!!」
と言う悲鳴を上げながら地面をゴロゴロと転がった。
「…うう…ッ、…ぐうう…ッ!!」
あちこちから湧き上がって来る様々な痛みに耐えながら、ゴウキは懸命に立ち上がる。
「…へぇ…。…まだまだやれるんだ…?」
来斗がニヤニヤしながら言う。
「まぁ、あれだけのダメージでは、まだまだ動けるだろうね」
洸はあくまでも冷静にゴウキを見つめている。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
ゴウキはゴウキで、肩で大きく息をしながら、懸命に3人を見つめている。
「…お、…お願いだ、…来斗君…、…晴君…、…洸君…!!」
ギンガブルーのマスクの中から、優しい声が聞こえて来る。
「…もう、…こんなことは終わりにしよう。…オレは、…お前らとは、…戦いたくないッ!!…だって、…オレはお前達が通っている若竹小学校の用務員で、…お前達は、…若竹小学校の生徒…。…言ってみれば、…仲間じゃないか…ッ!!」
ゴウキの必死の呼びかけだった。だが、
「うわッ、虫唾が走らあッ!!」
と来斗が声を上げた。そして、
「ムカつくんだよね、そう言う教師面って!」
と言ったのだ。
「…あ…あ…あ…!!」
ゴウキの体がブルブルと震える。怒りなのか、悲しみなのか、ゴウキ自身も分からないでいた。
「やれやれ、うんざりするよね、そんなふうに言われると…!」
洸がそう言ったその瞬間、
シュウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う気の抜けるような音が聞こえたと同時に、
「ああッ!?うあッ!?ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う勇太の悲鳴がゴウキの耳を劈いた。
「ゆッ、勇太ああああッッッッ!!!!」
自分達と少し離れたところにいる勇太に気付き、悲鳴を上げるゴウキ。
「フフフ…!!」
晴が両手を前にかざし、何やら妖しいオーラを放っていた。
「何か、僕もムカついたからさ、勇太の生命力を少し多めに奪い取ってみたよ」
「…止めろ…!!」
気が付いた時には、ゴウキは無我夢中で駆け出していた。
「止めろオオオオッッッッ!!!!止めてくれええええッッッッ!!!!」
あと少しで勇太を抱き締められる、ゴウキがそう思い、手を伸ばしたその瞬間だった。
バチイイイイッッッッ!!!!
勇太の体に触れる直前で、ゴウキの手に青白い炎がスパークした。そして、
バアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う物凄い衝撃音と共に、ギンガブルーのスーツが爆発したのだった。
「うわああああッッッッ!!!!」
その衝撃でゴウキの体が背後へ吹き飛ぶ。
「ぐはッ!!」
そして、背後で体をしたたかに打ち付けた。
「…クックック…!!」
来斗が、地面にひっくり返っているゴウキの股の間に立った。
「無駄だよ、ゴウキィ!勇太の周りには、晴が結界を張ってる。お前がどんなに手を伸ばしても、その結界を破ることは不可能さ!」
「…お、…お前…らぁ…ッ!!」
とその時だった。来斗の目がカッと見開かれたかと思うと、
「いつまでもごちゃごちゃうるせえんだよッ、ゴウキィィィィッッッッ!!!!」
と言ったかと思うと右足を大きく振り上げた。そして、ゴウキの2本の足の付け根、ゴウキの男としての象徴であるペニスへ向かって真っ直ぐに振り下ろしたのである。
ドゴオオオオッッッッ!!!!
鈍い音が聞こえた次の瞬間、
「んぐッ!?」
と言う声を上げて、ゴウキの体が股間からVの字に折れ曲がった。
「…あ…あ…あ…!!」
ゴウキの顔から血の気が引き、再び真っ青になる。
「…ぁぁぁぁ…!!」
体がブルブルと震える。そして、次の瞬間、
「…ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う野太い声が、荒涼とした大地に響き渡ったのだった。