性獣の生贄 第16話
何が起こったのか、分からなかった。
勇太に自身の大きくいきり立った男としての象徴を口に含ませ、何度目かの射精を迎えたギンガブルー・ゴウキ。光沢のある鮮やかな青と白のスーツを身に纏い、がっちりとした両足を投げ出して呆然と座り込んでいる。そして、その両足の中心部分から飛び出したゴウキの男としての象徴は、ゴウキの脈動に合わせるかのようにビクン、ビクン、と揺れ動き、真っ赤に腫れ上がったその先端部分からは白みがかった液体をトロトロと溢れさせていた。
「…ゆ…う…た…?」
目の前に立っている3人の青年のうちのリーダー格・ライトの話によれば、しゅうしゅうと溢れ出る黒い靄、勇太の生命力を止めるにはゴウキの淫猥な液体を飲ませれば止まるとのことだった。だから同じようにやったのに、勇太の体から溢れ出る黒い靄は更に勢いを増し、一気に飛び出した。そして、勇太はパタンと地面に突っ伏したのである。まさに、崩れ落ちると言う言葉が似合うほどに。
「…あ〜らら…」
赤いジャケットを羽織ったライトが声を上げる。
「…オレらには大人に急成長するためのエネルギー源だったのに、人間の勇太にはそれは逆効果だったか…」
しれっとして言うライト。
「…せっかく大人になれそうだったのにね…」
青いジャケットを羽織ったトカッチが言う。そのメガネの奥の瞳がギラリと光った。
「…とは言っても、俺達には何の責任もないし…」
緑色のジャケットを羽織ったヒカリがゴウキを蔑むように見つめる。その言葉に、
「…俺達には、…何の責任もない、…だと…ぉ…?」
と、ゴウキがわなわなと体を震わせて呟くように言った。
「…お前らが、…散々、…オレや勇太を欺いたって言うのに、…よくも、…よくも…ぉ…ッ!!」
その目から大粒の涙がボロボロと溢れ出る。
「…お前ら…ぁ…ッ!!…許さん…ッッッッ!!!!」
涙でぐしゃぐしゃの瞳の奥には、明らかに怒りが渦巻いていた。
だが、その時だった。
「…ぐ…、…うお…ッ!?」
ゴウキが立ち上がろうとしても、体中に力が入らないのだ。
「…ぐ…、…ぐぅ…ッ!!」
まず、腕に力が入らない。全身に倦怠感が漂い、腕に力が入らなければ、そのがっちりとした足にも力が入らなかった。何だか、意識もぐらんぐらんとするような気がする。
「…ククク…!!」
その時、ゴウキはぎょっとした表情を見せた。ライトが勝ち誇った笑みを浮かべていたのだ。
「…お、…ま…え…ら…!?」
「今頃気付いたの?」
トカッチがニヤニヤと笑う。
「何度も何度もアースの力を放出する、…いや、…動物行動における射精は大量のエネルギーを消費する」
ヒカリがそう言うと、
「良く言うよね!全速ダッシュ100メートルって!」
とトカッチが言った。
「え?そうなのか?」
ライトがそれに合わせるかのように調子に乗って言う。ヒカリは静かにコクンと頷いて、
「そんな一度にエネルギーを大量に消費する行為を、ゴウキは5回もやったんだ。しかも短時間に連続で!」
と言うと、フンと鼻で笑い、
「そんな状態なのに、俺達に勝てると思ってる、わけッ!?」
と言ったかと思うと、ブンと右足を振り上げた。次の瞬間、
ゴキッ!!
と言う音が聞こえたかと思うと、
「ぐはああああッッッッ!!!!」
とゴウキが悲鳴を上げてゴロゴロと地面を転がっていたのだ。
「…うっわぁ〜…!」
その光景を見たトカッチが顔をしかめ、
「…強烈…!」
とライトは驚いて目を丸くした。
「…ぐは…ッ!!…ああ…ッ!!」
不意を突かれたゴウキはゴロゴロと地面を転がり、呻き声を上げる。冷たい大地をゴロゴロと転がったせいか、キラキラと輝くギンガブルーのスーツは砂埃にまみれていた。
「…エッロ…!」
ライトがニタニタと笑う。ギンガブルーのスーツの光沢だけでもゴウキの体の肉付きをクッキリと浮かび上がらせるのに、そこに砂埃がまみれ、ゴウキの体付きを際立たせている。
「…う…!!」
呻くように言ったゴウキ。その目に涙が溢れ、ポタポタと地面に零れた。
「…チッ…!!」
それを見ていたライトが舌打ちをした。さっきまでの笑みは消え、苛立ちが浮かんでいた。
「…つまんねぇなぁ…!!」
明らかに不機嫌になっているライト。それを見ていたトカッチが、
「…ラ、…ライ…ト…?」
と声を震わせる。
「まだまだやれるって思ったのに、もう戦意喪失かよ…!」
「そりゃ、そうだろうね。自分のせいで、勇太が死んだんだし…」
ヒカリがしれっとして言う。
「…ゆ…、…勇太…!」
ゴウキには今、自分が勇太にしたことへの後悔の波が大きく押し寄せていた。小学校中学年にもなれば、それなりに性についての興味も出て来る。そのことを聞きたがった勇太なのに、ゴウキはまだ早いとか、まだ知らなくていいとか言って教えなかった。それはある意味、正解だったかもしれない。だが、真実を知りたかった勇太の心を傷付けた。そして、それをライト達3人に、勇太のただの同級生だと思っていたバルバンの手先に利用された。
「…オレが…、…もっと素直に、…勇太に教えていたら…!」
後悔先に立たず、とは良く言ったものだ。
「おい、ゴウキ!」
気が付けば、目の前にはライトが立っていた。ゴウキを馬鹿にしたようにニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。
「…もう…、…止めてくれ…!」
「いや、止めるも何もさぁ…」
そう言うとライトはゴウキのツンツンの髪の毛を掴み、グイッと持ち上げる。一瞬、その痛みに顔をしかめるゴウキだったが、体は小さく小刻みに震えていた。
「…お前、…どうするつもりだよ…?」
「…ッ!!」
勇太を失った今、ゴウキはどうすることも出来ないでいた。勇太の父親であり、ゴウキ達ギンガマンがお世話になっているシルバースター乗馬倶楽部に勤める青山晴彦に顔向けも出来なければ、最悪の場合、仲間が路頭に迷うことになる。いや、それよりも地球を宇宙海賊バルバンから守るべきギンガマンに犯罪者のレッテルが貼られる。
「…た、…助けて…くれ…!」
本当に無意識だった。ブルブルと震えながら、ゴウキは自分よりも遥か年下の子供に懇願していたのだ。
するとライトはニヤリと笑い、
「いいぜ?でも…!」
と言うと、
「おい、トカッチ!あれを用意しろよ!」
と言った。するとトカッチは、
「これぇ?」
と言って、手にガラスの大きなタンクを持ち上げた。そのタンクのふたの部分には太くて黒いゴム管のようなものが取り付けられており、その先端にはこれまたガラスの細い注射器の容器のような形をしたものが取り付いていた。
「…な、…何だ、…それは…!?」
悪い予感がしてゴウキが声を震えわせながら尋ねる。
「…フフ…ッ!!」
ライトはトカッチからそれを受け取ると、
「これを、…こうするんだよッ!!」
と、注射器の容器のような形をした部分を、ギンガブルーのスーツから飛び出し、未だに大きく勃起しているゴウキの男としての象徴へ填め込んだのだった。
「…い、…嫌…だ…!!」
ゴウキの目から再び涙が溢れ出る。
「…たッ、…頼む…ッ!!…助けて…くれ…!!」
「ヤダね!」
ライトの声が冷たく響く。
「お前も、…処刑してやるからな…!!」