暴走 第16話
「…クッ…!!…うう…ッ!!」
何とかしてこの束縛を振り解きたい、懸命に体を動かそうとするレッドバスター・桜田ヒロム。
「ニ・ワ・ト・リ!!」
耳元で囁くように、ヒロムへ禁断の言葉を告げたのは、何を隠そう、ゴーバスターズとして共にヴァグラスと戦っているブルーバスター・岩崎リュウジだった。
「…ククク…!!」
そんなリュウジが今、ヒロムの目の前でギラギラと目を輝かせて低く笑っている。手にしていたソウガンブレードは遠く後方へ投げ捨てられていた。
「…さぁて…」
リュウジの両腕がヒロムへ伸びて行く。
「…リュ、…リュウジ…さ…!」
リュウジの名を呼ぼうとしたヒロムの両頬に、リュウジのしなやかな指が触れる。
「!?」
その妖しい手の動きに、ヒロムに思わず鳥肌が立った。
リュウジの両手はゆっくりと頬から首を伝い、肩へと下りて行く。そして、ヒロムの真っ赤なレッドバスターのスーツの上に掛けられているトランスポッドにその手を通した。
「反撃されても困るからな…」
リュウジはそう言うと、ヒロムの肩からトランスポッドを外し始めた。
「…まぁ、反撃出来るかどうかも分からねぇけどな…!」
「…止めて、…下さい…ッ!!…リュウジ…、…さん…ッ!!」
抵抗を試みようとするヒロムだったが、やはり体が言うことを聞かない。あっと言う間にヒロムのトランスポッドはリュウジに外されていた。
「どうせこれは、もうお前には必要のないものだ」
そう言うとリュウジはヒロムのトランスポッドをやはり後方へ無造作に放り投げた。
「これでどっちも丸腰だな!」
嬉しそうにそう言うリュウジ。そして、身動きの取れないヒロムを静かに抱き締めた。
「な…!!」
その抱き締め方に危機感を感じたヒロム。リュウジは、ヒロムの腕をも包み込むようにして体全体をしっかりと抱き締めていたのである。
「リュッ、リュウジさんッ!!」
少しずつ体の硬直が弱まって行く。少しずつだが体が動かせるようになり、ほんの少しだが抵抗を試み始めた。
「おっと。そろそろ時間切れか?」
リュウジのその低い声に思わずギクリとなるヒロム。その時だった。
「…うぐッ!?…うぅッ!!…うわあああああッッッッッ!!!!!!」
ヒロムが大声を上げざるを得なかった。
ヒロムを抱き締めているリュウジがその腕に少しずつ力を加え始めていたのだ。ただでさえ、馬鹿力なリュウジ。その力が今、暴走によって更に増していた。
「ぐわああああッッッッ!!!!!!!!ああああッッッッ!!!!!!!!」
ヒロムの叫び声が徐々に悲鳴に変わって行く。体中を襲う激痛が半端ない。ミシミシと骨と言う骨が音を立てているようだ。
と突然、リュウジの腕の力が急に抜けた。
「…ッ!?」
バランスを崩しそうになり、ヒロムが前のめりに倒れようとする。
「おっと!」
そんなヒロムをしっかりと受け止めるリュウジ。
「…ッ!!」
何かを言いたそうに、懸命にリュウジを睨み付けるヒロム。するとリュウジはフッと笑い、
「まあまあ。そんな怖い顔すんなよ!」
と言い、ヒロムを背後から抱え込むようにして抱きかかえ、そのままズルズルと壁際まで引き摺って行った。
「…オレを、…どうする気ですか、…リュウジ…さん…ッ!!」
時折疼く骨の軋みに耐えながら、ヒロムがリュウジに声を掛ける。するとリュウジは、
「もっと楽しいことしようぜ、ヒロム!」
と言い、ヒロムの頬にそっと口付けをした。
「…オレにはそんな趣味ないですけど…!」
小さく溜め息を吐いて、ヒロムがリュウジに言う。するとリュウジは、
「お前にはなくても、オレがヤリてぇんだよな!」
と言い、
「さぁ、少しお人形さんになってもらおうか」
とヒロムの耳元で言ったかと思うと、
「ニワトリ!」
と再び言い放った。
「うぐッ!?」
その瞬間、ヒロムの体がグインと伸び、硬直した。
「フフッ!」
リュウジは低く笑うと、ヒロムを脇の下で抱え込んでいる腕をゆっくりとヒロムの体の上へ伸ばし、妖しい手付きで触れ始めたのだ。
「…リュ、…リュウ…ジ…さん…ッ!!」
ゾワゾワとした悪寒がヒロムを襲う。
キュッ!キュッ!
ヒロムのレッドバスターの革製のスーツと、リュウジのブルーバスターのグローブが擦れ合い、くすぐったい音を立てる。
ざわざわとヒロムの体を撫でるリュウジ。
「…リュ、…リュウジ…さん…ッ!!…止めて、…下さい…ッ!!」
ヒロムが声を上げるも、リュウジは手を止めない。
「さぁて、ヒロム君の感じるところはぁ、どこかなァ?」
そう言うとリュウジは、ヒロムの胸元へ指を動かし、クイッと引っ掻くように指を弾いた。
「あッ!!」
その瞬間、ヒロムが目を見開き、甲高い声を上げてビクンと体を跳ねらせた。
「…あ…あ…あ…!!」
ピクピクとヒロムの体が小刻みに震える。今まで感じたことのなかった感覚に、ヒロムは戸惑いを隠せずにいた。
「…ククク…!!」
ヒロムの背後でリュウジが低く笑う。
「ヒロムの感じるところ、見ィつけた!!」