暴走 第18話
…チュッ!!…チュルッ…!!…クチュクチュクチュ…!!
淫猥な、くすぐったい音が、ひんやりと冷える地下倉庫内に響く。だが、その地下倉庫内では、
「…はぁ…、…はぁ…!!」
と言う荒々しい息遣いと、
「…んッ!!…んん…ッ!!…く…ぅ…ッ!!」
と言う呻くような声が聞こえて来る。前者はわりとトーンが低く、後者はやや高め。
「…んも…ッ、…もう…ッ!!…止めて…、…下さい…ッ!!」
やや高めの声でこう呻くように言ったのは、レッドバスターにモーフィンしている桜田ヒロムだ。
「…リュッ、…リュウジ…ッ、…さん…ッ!!」
目をギュッと閉じ、顔を真っ赤にするヒロム。そんな彼の胸元に、ヒロムより背の遥かに高い男性がもぞもぞと蠢いていた。青いレザーのスーツを着ている。その目はギラギラと輝き、口元は不気味に笑っていた。その口からは真っ赤な舌が伸び、その先端は真っ赤なレザーのスーツを切り裂かれ、そこから見え隠れしているヒロムの胸の淡いピンクの突起を転がしていたのである。ブルーバスターにモーフィンし、彼の弱点でもある「暴走」モードに入っている岩崎リュウジだ。
「…フフッ!」
リュウジは笑いと、ヒロムと顔を突き合わせ、
「胸が感じてしまうのか、ヒロムぅ?」
と囁くように問い掛けた。
「…ッ!!」
するとヒロムは、顔を赤らめ、ぷいっと横を向いた。
「フフッ!テレなくてもいいだろう、ヒロムぅ?」
そう言うとリュウジは、ヒロムの頬にそっとキスをした。
「んなッ!?」
目を見開き、慌てた表情でリュウジを見つめるヒロム。
「胸が感じるのは、女だけじゃないんだぜ?」
そう言うとリュウジは、ヒロムの右胸にそっと唇を近付けた。
チュッ!
くすぐったいような音がしたその途端、
「んあッ!!」
とヒロムが素っ頓狂な声を上げた。
「…フフッ!」
チラリとヒロムへ意地悪い視線を送ったリュウジは、続け様にヒロムの右胸の突起を舌で転がし始めたのである。
…チュッ!!…クチュクチュッ!!…チュッ!!
くすぐったい音が更に小刻みになったと思った次の瞬間、
「ああッ!!ああッ!!ああッ!!」
とヒロムが体をビクビクと跳ねらせながら、リュウジの下で悶え始めた。
「ほぉら、もっと愛してやるよ、ヒロムッ!!」
次の瞬間、リュウジの唇がヒロムの右胸をガッシリと捕らえた。そして、リュウジは舌を物凄い勢いで動かし始めたのである。
「はあああああッッッッッ!!!!!!」
ヒロムの叫び声がますます大きくなり、体がグインと弓なりになった。
その時だった。
「…おや?」
リュウジはそう言うと自身の腹の方を見やり、その瞬間、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
「ヒィロォムゥ。オレのお腹に変なものが当たってんですけど…!!」
ニタニタと笑うリュウジに対し、ヒロムは荒い息をし、顔を真っ赤にしている。
「ヒロムぅ?やっぱり感じてるんじゃねぇかぁ?」
「…べ、…別に…ッ!!」
荒い息をしながら、懸命にリュウジを睨み付けるヒロム。だが、その瞳はきょときょとと忙しなく動き、明らかに困惑していた。
「…ほう。…そうかい…!」
リュウジはそう言うと、
「じゃあ、もっと感じさせてやるよッ!!」
と言うが早いか、ヒロムの左胸に吸い付いたのである。
…チュッ!!…クチュクチュッ!!…チュッ!!
とあのくすぐったい、小刻みな音が響いたその瞬間、
「あああッッッ!!!!あああッッッ!!!!ああああああッッッッッッ!!!!!!」
と言うヒロムの悲鳴も大きく響いた。
「もッ、もうッ!!」
止めてくれと懇願しようとして、ヒロムの両腕がゆっくりとリュウジの背中へ回る。
「おっと!!」
それに気付いたリュウジはヒロムの両腕を掴むと、床の上へガッシリと組み敷いた。そして、
「ちゃんと言うことを聞かねぇと、ニワトリだぞ?」
と言った。
「があああッッッ!!!!」
禁句を聞いたヒロムが叫び声を上げ、再び棒のように体を強張らせた。
「…あ…あ…あ…!!」
ヒロムの体がブルブルと震え、目をカッと見開いた。その目尻からは涙が零れた。
「フフフ…!!」
リュウジは低く笑うと、無抵抗なヒロムを優しく抱き締めた。そして、顔を近付け、
「お前をもっと気持ち良くしてやるよ、ヒロム」
と言い、静かに唇を合わせた。
「…ッ!?」
驚いたヒロムが更に目を見開く。そんなヒロムの中途半端に開かれた口の中へ、自身の舌を侵入させるリュウジ。
…クチュクチュ、…チュッ!!…チュル…ッ!!
淫猥な音が響き、ヒロムの口腔が蹂躙されて行く。
そうしながら、リュウジの右手がゆっくりとヒロムの体を滑り下りて行く。
「…ん…ッ!!…んん…ッ!!」
ヒロムの目からは涙がぽろぽろと零れる。だが、禁句を聞かされ、体を思うように動かせない。暴走している仲間にいいように蹂躙される自分がもどかしい。それどころか、まともに性体験もしたことのないヒロムにとって、ほとんど初体験とも言うべき相手が自身の同僚で、しかも、同性と言うことに気が狂いそうになっていた。
「…覚悟しろよ、…ヒロム?」
その時、リュウジの唇が静かに離れ、リュウジと目が合った。
「…いや…だ…!!」
その時のリュウジの顔を、ヒロムは忘れることはないだろう。野獣とはまさに今のリュウジのことを言うようだ、そんなことを考えていた。
次の瞬間、リュウジの右手の青いグローブが、黒い革のズボンの中心部の山を静かに包み込んでいた。