暴走 第30話

 

 エネルギー管理局地下倉庫。

 バスターマシンの整備工場の横に位置する、薄暗く、狭い通路を通ったその奥にある、まるで忘れ去られたように存在している場所。滅多に人が寄り付かず、普段はひんやりとしているこの場所が、今はどんよりと空気が澱み、熱気と湿り気を帯びていた。

 そこには2人の男の姿が。

 デスクの上に目を見開いたまま、上半身を横たえている男。赤を基調とし銀と黒のラインをあしらった、革のジャケットのようなものを身に纏い、下半身は黒の革ズボンを穿いている。だが、そのジャケット・バスタースーツは胸の部分を横一文字に切り裂かれ、そこからは彼の小さな胸の突起が見え隠れしていた。そして、下半身は股間部分をズタズタにされ、そこから彼の局部が飛び出ていたのである。その局部は小さく萎み、しっかりと皮に包まれ、濃白色な、強烈な異臭を放つ液体がべっとりとこびり付いていた。

 もう1人の男は赤いジャケットを着た男の足元に大の字に伸び切っていた。青を基調とし銀と黒のラインをあしらった、皮のジャケットのようなものを身に纏い、下半身は黒の革ズボンを穿いている。そして、赤いジャケットを着た男と同じように股間部分を切り裂かれ、そこからは彼の局部が飛び出していた。それは赤いジャケットを着た男とは対称的に大きく勃起し、ドクンドクンと脈打っていたのである。どす黒く、太く、硬いそれの先端はしっかりとくびれを形成し、真っ赤な先端には透明で粘着質な液体がそれを覆うように纏わり付き、淫猥な輝きを放っていた。

 普段はひんやりとしているこの場所で、先ほどまで情事が行われていた。床に大の字に伸びている男、ブルーバスター・岩崎リュウジが、デスクの上で意識を失っている男、レッドバスター・桜田ヒロムを執拗に陵辱していたのだった。2人が出した夥しい量の精液は、床のあちこちにも散らばり、真っ白な花を咲かせていた。

 全ては、更に別の、1人の男によって仕組まれたことだった。

 

「…やれやれ…。…ここまで上手く行くとは思いませんでしたよ…。…まさに、Très bien!(トレ ビアン=素晴らしい)」

 ヒロムの胸の部分が突然、光を放ったかと思った次の瞬間、そこから粒子状の物質が溢れ出し、人の形を形成した。銀色のコートのようなものを身に纏い、長めの髪は後ろへ掻き上げられ、飛行士のようなゴーグルを額に上げている。切れ長の目は妖しい光を放ち、中性的な顔立ちをしていた。

 エンターは一言そう言った瞬間、室内の強烈な異臭に思わず顔をしかめた。だが、

「…フッ…!」

 と笑い、自身が飛び出して来たヒロムの方を振り返った。そして、しなやかな指を伸ばすと、ヒロムの体にべっとりとこびり付いているヒロムの精液を拭った。ヌチャ、と言う淫猥な音がしてそれがエンターの指に纏わり付く。

「…」

 エンターはそれをじっと見つめていたが、ゆっくりと口の中へ入れ、クチャクチャと音を立てながら味わった。

「…Cest bon!(セ ボン=美味しい) さすがに若いだけありますね。…では、…全てを頂くとしましょうか…!」

 エンターはそう言うと、背中に背負っていたリュックサックの中からノート端末を取り出した。そして、ケーブルを引っ張り出し、周りをキョロキョロと見回し、あるものを見つけた瞬間、ニヤリと満足げに笑みを浮かべ、そこへケーブルを貼り付けた。そんなエンターの右手には1枚のカードのようなものが。

「…メタウィルス、…『吸い取る』。…インストール…!」

 エンターはそう呟くように言うと、そのカードをノート端末のスロットへ通した。すると、ケーブルを貼り付けたものが光を放ち、形を変えて行ったかと思うと、人の形を形成したのである。

『ソ・ウ・ジ・キ・ロ・イ・ド!ソ・ウ・ジ・キ・ロ・イ・ド!』

 無機質なコンピューター合成音のような声が響いたかと思うと、エンターが見つけたもの・掃除機が形を変え、メタロイド・ソウジキロイドへと姿を変えた。その右手は掃除機のノズルのような細長い筒状になっており、その肩にはタンクのようなものが取り付けられていた。

「…さぁ、…ソウジキロイド…」

 エンターはゆっくりとソウジキロイドの元へ歩み寄る。そして、

「この者達から溢れ出ているこの液体を全て吸い取って下さい」

 と言った。

「…な、…何です、…これはぁッ!?

 ソウジキロイドは、異臭を放つ液体を眺め、驚いて声を上げた。

「…エネトロンの代替物です」

 エンターはそう言って、ソウジキロイドにクルリと背を向けた。

「…我がエネルギーとさせて頂きます…!!

「え?何です、エンター様?」

 最後の言葉が聞き取れなかったソウジキロイドがエンターに尋ねる。するとエンターはクルリと振り向き、

「何でもありません。さぁ、早くこれらを吸い取って下さい」

 と言った。

「かしこまりました!」

 ソウジキロイドがそう言った途端、右手のノズルが輝き出した。そして、

 ズボッ!!ズボボボボ…ッ!!

 と言う音を立てて、床に飛び散ったそれらを全て吸い取った。

「…おやおや?」

 その時、ソウジキロイドが素っ頓狂な声を上げた。

「こことここにも同じものが付いていますねぇ?」

 ソウジキロイドはそう言うと、ヒロムとリュウジのペニスをそれぞれノズルで指し示した。

「それに、この赤いやつにはこぉんな奥にまで!」

 ソウジキロイドは、今度はそのノズルをヒロムの双丘の奥へとやり、その秘門をつんつんと突いた。

「それも吸い取って下さい」

 そう言ったエンターの目がギラリと光り、不気味な笑みを浮かべる。

「表面だけではなく、彼らの体内から全てを…!」

「…では…!」

 ソウジキロイドはそう言うと、まず、リュウジの元へ歩み寄った。そして、未だ勃起し続けるリュウジのペニスへノズルをはめ込んだ。

「行きます!」

 そう言ったソウジキロイドがスイッチを押す。

 カチッ!バシュウウウウッッッッ!!!!

 けたたましい音を立てて、ソウジキロイドのノズルが吸引を始めた。

「…うッ!?…あッ!!あッ!!

 その勢いに、体がビクンと跳ね上がり、リュウジが目を覚ます。

「んんんんんああああああああッッッ!!!!

 ソウジキロイドの吸引で体がペニスを頂点として弓なりに引っ張られる。

「ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 リュウジが叫び声を上げたその時だった。

 ドビュッ!!ドビュッ!!ドビュウウウウッッッッ!!!!

 淫猥な音が聞こえたかと思った瞬間、リュウジの腰が何度もバウンドし、ペニスからは濃白色な液体が物凄い勢いで飛び出した。そしてそれは、ソウジキロイドのノズルを伝い、肩に配されているタンクへボタボタと落ちて行ったのである。

「フフフ!まだまだですよ!」

 ソウジキロイドはそう言うと、ノズルを更に奥深く差し込んだ。

 グシュッ!!グシュグシュッ!!ズボボボボボッッッッッ!!!!!!

「がああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 淫猥な音とリュウジの絶叫が辺りに響き渡る。

 ドビュッ!!ドビュドビュッ!!ビュウウウッッッッ!!!!ビュウウウッッッッ!!!!

 リュウジのペニスからは更に大量の精液が飛び出し、ソウジキロイドの肩のタンクへ流れ込んで行く。

「さぁて、あなたの全てを頂くとしましょう!」

 そう言ったソウジキロイドの体が光を放った。と同時に、それはリュウジの体をも包み込んだのである。そして、

「ひがあああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

 と言うリュウジの絶叫と共に、

 ビュウウウウッッッッ!!!!ビュウウウウッッッッ!!!!

 と更に精液が飛び出し、次の瞬間、グシャッと言う鈍い音が聞こえた。

Oh, là là.(オー, ラ ラ=おやおや)」

 エンターが声を上げる。

「…どうやら、…大切なところが潰れてしまったようですね…!」

 そう言いながらも笑みを浮かべているエンター。

「…あ…あ…あぁぁ…!!

 リュウジはブルブルと体を震わせていたが、

「…ふ…う…!」

 と呻くと、ドサッと体を地に投げ出し、ピクリとも動かなくなったのである。

「…あらぁ…!!

 ソウジキロイドがリュウジのペニスからノズルを外す。そして、露わになったそれを見た途端、声を上げた。

 リュウジのペニス。直前までレッドバスター・桜田ヒロムを執拗に犯し、その存在感を表していたそれが、今ではすっかり萎み、剥き出しになった先端には裂傷が出来ていた。そして、その下に息づいていた2つの睾丸は完全に潰れ、袋だけが力なく垂れ下がっていたのである。

「さぁ、残るはレッドバスターだけです!」

 エンターが両手を高く上げながら、大声で叫んだ。

 

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