希望と絶望 第3話

 

 黄島と洋介は人里離れた寂れた小屋へやって来た。誰も寄り付かないような、人里奥深いところにあった一軒の小屋。カビ臭く、埃がかぶった農機具やテーブル。部屋中至るところにクモの巣が張られていた。

「…すまん、…洋介…」

 がっしりとした体格からは似つかわしくないほど、黄島が項垂れている。

「…こんなところしか、…用意出来なかった…」

「大丈夫だよ、黄島」

 全身迷彩柄の、顔だけが人間の姿の洋介が笑って言った。

「…君のことだ、このことを誰にも話していないんだろう?」

 その時、黄島の顔がピクリと動いたのを、洋介は見逃さなかった。

「やっぱりね」

 苦笑した洋介だったが、

「ありがとう、黄島」

 とすぐに黄島へお礼を言った。

「…う、…うぅ…」

 何ともやるせない思いになる。暗黒科学帝国デスダークの戦闘兵であるマダラマンに改造された幼馴染みを守ってやると豪語したのに、結局、何も出来なかった。いくら洋介が自分の幼馴染みだからと言ってそれを説明したところで、他のメンバーもそれを信用してくれるかどうか…。いや、メンバーは信用してくれたとしても、自分達をサポートしてくれているコンピューターボーイズ・ガールズ達を不安にさせてしまうかもしれない。そう思った黄島は、みんなに洋介のことを話すことが出なかったのだ。だがそこには、幼馴染みを助けたいと願う黄島の思いもあり、今日、この場所まで葛藤していたのは容易に窺えた。

「…ごめんな、…黄島ぁ…」

 そんな黄島の苦渋の決断を見て取れたのか、洋介が黄島に詫びを入れた。

「…俺のせいで、…お前に辛い思いをさせて…」

「バカッ!そんなことあるかよッ!!

 大声を上げ、洋介を抱き締める黄島。

「お前はオレの幼馴染みだ!どんなことがあったって、オレが絶対に守ってみせるさ!」

 大柄な体格の黄島とは反対に、やや華奢な体の洋介。そんな洋介を抱き締める黄島の両腕に力が籠り、

「…い、…痛いよ…、…黄島ぁ…」

 と洋介が苦悶の表情を浮かべた。

「…あ…ッ!!

 まるで柔道のさば折りのようにグイグイと力を込めていた。黄島はすぐにその腕の力を抜くと、

「す、すまんッ、洋介ッ!!

 と、慌てて洋介を放した。

「…ぷっ!」

 突然、洋介が笑い始めた。

「…んなッ、…何だよッ!?

 黄島が訝って洋介を見下ろす。洋介はクックと笑っていたかと思うと、

「…だって、黄島、…さっきからあやまってばかりなんだもの…!」

 と言ったかと思うと、また笑い始めた。

「…そッ、…それは…ッ!!

 顔を真っ赤にする黄島。そんな黄島に、洋介が再び抱き付いた。

「…洋…介…?」

 むっちりとした自分の背中に腕を回す洋介に戸惑う黄島。

「…黄島ぁ…」

 心なしか、顔を赤らめている洋介。

「…昔みたいに、…抱いてくれないか?」

 そうだった。時々、気弱になる洋介。そんな時、黄島はいつも洋介を優しく抱き締めていたのだ。

「オレがいっつも傍にいるから。何にも心配要らないからな!」

 キラキラした笑顔でニッと笑っていた自分。そんな記憶が黄島の脳裏に甦る。

「…洋介…」

 黄島の巨体にすっぽりと覆われるような格好になる洋介。

「…あったかい…」

 洋介が目を閉じ、黄島の温もりを感じる。

「…懐かしいな…」

 こんな状況になってしまっても、努めて明るく振舞おうとする黄島。

「…なぁ、…黄島ぁ…」

 不意に洋介が声を上げ、じっと黄島を見上げた。

「…?どした、洋介ぇ?」

 何だか、洋介の顔が心なしか、赤らんでいる。

「…洋…介…?」

 その時、何故だか、黄島の心臓はドキドキと高鳴っていた。洋介の潤んだ瞳、そして、自分の太腿に当たる硬いもの…。

「…なぁ、…黄島ぁ…。…ゴーグルイエローに変身してくれないか?」

「…ゴーグル…イエロー…!」

 まるで洋介の言葉に操られるかのように、ゴーグルブレスを振っていた。その瞬間、黄島の体が光を帯び、鮮やかな黄色のゴーグルスーツ、ゴーグルイエローに変身していた。

「…あぁ…、…黄島ぁ…!」

 その姿にウットリとした洋介が、黄島の胸に再び顔を埋める。

「…命を懸けて、この地球の平和を守ってるんだよな、黄島は…。…なのに、…俺は…!」

 そう言った途端、洋介が声を上げて泣き出した。

「なッ、泣くなよッ、洋介ッ!!

 洋介の悲痛な思いがひしひしと伝わって来る。今、改めて、デスダークのやり方に腹が立った。

(…洋介を、…こんな目に遭わせやがって…!!

 更に言えば、人間を改造するほど、デスダークの暗黒科学の力が発達しているのかと思うと、逆に恐怖を覚えた。

「気休めにしかならないかもしれないけど、きっと何か、お前を元に戻す方法も見つかるかもしれない!だから、諦めるなよッ!!

 本当に気休めだった。マダラマンに改造された友を、元の人間に戻すことが出来るのかどうか、可能性はゼロに等しかったからだ。総統タブーに頼んで、洋介を元に戻してくれ、とも言えるわけがなかった。

「…黄…島…ぁ…ッ!!

 泣きじゃくる洋介。その目からは涙がボロボロと溢れている。

「絶対にお前を守るからッ!!何があってもッ!!

 と、その時だった。

「黄島ああああッッッッ!!!!

 洋介が黄島をグイッと押した。

「…うおッ!?

 咄嗟のことにバランスを崩した黄島は、

「うわッ!?うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と悲鳴を上げ、洋介を上にして地面にひっくり返っていた。

「…痛ってぇ〜…!!

 ゴーグルイエローのマスクで後頭部をしたたかに打ち付けた。

「…ん?」

 その時、黄島は体に違和感を覚えていた。その場所を見た途端、黄島の顔が真っ赤になった。

「…おッ、…おいッ、洋介ッ!?

 黒いグローブに包まれた洋介の右手が、黄島のがっしりとした両足の付け根部分に置かれていた。その下には、黄島の男としての象徴が静かに息づいていた。

「…あ…」

 ぐしぐしと嗚咽していた洋介が、泣き止み、その部分を見つめた。そして、小さく笑うと、

「…昔も、…こんなことしたよね…?」

 と言い、その手をゆっくりと握ったり開いたりを繰り返し始めたのだ。

「…んなッ!?…ちょッ、…よッ、…洋介…ッ!!

 黄島の男としての象徴が静かに揉み込まれる。

「…あ…、…はあ…ッ!!

 その優しい刺激に、黄島が身悶えする。

「…よ、…洋…介…!」

 体に力が入らない。ピクン、ピクンと体が小刻みに跳ねる。

「…洋…介…ぇ…!」

 自身の大事な部分を揉み込まれ、黄島はその快楽に押し流されようとしていた。

 

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