災魔の誘惑 第9話
「…マ、…マジ…かよ…ッ!?」
目の前に現れた女性に、ショウはそう声を上げざるを得なかった。
真っ白なワンピースに身を包み、はにかんだ笑顔を向けて来る。その容姿はすらっとしており、ショウの中では美形の部類に入っていた。一見、普通の女性にしか見えないのだが、彼女の体から溢れるオーラはどこか高貴で、近寄りがたいものを感じていた。
「はじめまして、ショウさん」
微笑んだ彼女の口元にえくぼが出来る。
「私は香。鹿鳴館香と言います」
「…え?…あ、…あぁ…」
まともに返事も出来ない自分が物凄くもどかしい。
(…こッ、…これじゃ、バカ丸出しじゃねえか…ッ!!)
顔を真っ赤にし、香に背を向けるショウ。
「どうかしました、ショウさん?」
香の優しい声が聞こえて来る。
「え!?…あ、…べッ、別にッ、何でもッ!!」
慌てて作り笑顔をするショウ。
(…これは…ッ!!)
この時、ショウの心の中にはおぞましい感情が渦巻いていた。
(…こんな高貴な女性が、白衣姿でオレをマッサージしてくれるとは思えない。…司従さんの言うマッサージって言うのは…!!)
ドクンッ!!
心臓が思わず大きく高鳴り、
「うああッ!!」
と、ショウは声を上げ、胸を押さえてその場に蹲った。
「ショウさんッ!?」
驚いた香が思わず駆け寄り、
「大丈夫ですかッ!?」
と、蹲ったショウの横に屈み込んで尋ねた。するとショウは、
「…あ、…あぁ…。…大丈夫…です…」
と言いながら、その視線をちらりと動かす。
ショウの視線は香のワンピースから見え隠れしている、ふくよかな胸の膨らみの谷間だった。
ドクンッ!!
その時、再び心臓が大きく高鳴ったのを覚え、同時に、ショウは下半身にじんじんとした疼きを感じていた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
ドクンドクンと心臓が高鳴るたびに、下半身のじんじんとした疼きは更に大きくなって行く。熱い何かがショウの体の中を駆け抜けて行くような感覚を覚え、ショウは顔を真っ赤にしながら香を見た。
「…ショウ…さん…?」
「…った…」
「…え?」
香がきょとんとした表情でショウを見たその瞬間、ショウは物凄い勢いで立ち上がっていた。そして、
「ほらッ、見てくれよッ!!オレのチンポッ、香さんのことを考えたらちゃんと勃ったんだッ!!」
と、腰を前へ突き出すようにした。
「きゃッ!!」
そのあまりの光景に、香は顔を赤らめ、顔を手で覆う。
「ハッハッハッ!!」
そんな2人のやり取りを見ていた司従が遂に笑い声を上げた。
「良かったじゃないか、ショウ君。私が言った通りだったでしょう?」
そう言いながら、司従はショウのもとへやって来た。そして、肩をぽんと叩き、
「いろいろあって疲れていたのでしょう。ゴーゴーファイブとしてのお仕事もありますしね。いつも死と隣り合わせでは、落ち着いてオナニーも出来ないですからね。そんな精神的なストレスが、あなたの大事なところを勃たせなくなっていたのでしょうね。そこへこの間の強烈な刺激を与えてしまい、ある意味、麻痺していたのかもしれませんね」
と言った。
「いずれにせよ、マッサージを受けて行って下さい」
ニヤリとする司従。
「…いいのか…?」
ショウが尋ねると、
「ただし、これも前回と同じように撮影をさせていただきますよ?もちろん、あなたはゴーグリーンに変身して、前回と同じように目隠しをさせていただきます」
と司従が言った。
「…え?…そ、…それじゃ、オレは香さんの顔を見れない…」
「心配しないで下さい」
ショウの言葉を遮るように、香がニッコリとして言った。
「ちゃんとマッサージをして差し上げますわ!」
そう言った時、香がショウに優しく寄りかかった。
「かッ、香さんッ!?」
あまりに突然のことに、ショウが素っ頓狂な声を上げる。
ドクンッ!!
この時、ショウは自身の下半身を呪った。香がショウに寄りかかった時、香の体からはほのかな匂いが溢れ、ショウの意識を一瞬、遠のかせたのだ。その香に釣られるように、ショウの2本の足の付け根にある、ショウの男としての象徴が更に大きさを増したのだった。
「…ショウさん。…あなたがそんなに大変な仕事をされているなんて、知りませんでしたわ。そんな方だからこそ、この疲れた体を癒して差し上げたいの。身も心も、トロトロになるほどにマッサージをさせていただきますわ。…それに…」
不意に香が悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「…目隠しをされた方が、…いっぱい気持ち良くなれるんじゃないですか?…それに私だって女性。…恥じらいもあります…」
「…うう…ッ、…うああ…ッ!!」
ショウの予感は的中していた。香がしてくれるマッサージは、普通のマッサージではないことを…!
「さぁ、ショウさん!」
ショウの筋肉質な胸を離れた香がスカートをひらひらさせながら一回りし、その穏やかな笑みをショウへ見せた。
「ゴーグリーンに変身して下さい」
「…ああ…!」
意を決したかのように、ショウはキッとした眼差しを香と、その後ろにいる司従に向けた。そして、
「着装ッ!!」
と叫んだ。その瞬間、ショウの体が眩しく輝き、光沢のある鮮やかな緑色のアンチハザードスーツがショウの体を包み、ゴーグリーンへと着装していた。
「わああ…」
香が目を輝かせ、頬を赤らめる。
「…では、始めましょうか…!」
司従はそう言うと、パンパンと手を叩いた。すると、それを合図に、たくさんのスタッフ達が機材を持ち、セッティングを始めたのだ。
「じゃあ、ショウさんはベッドへ…」
香に誘導されるがままに、ショウはベッドの上に横になる。
「あら…」
ショウの2本の足の付け根部分に息づく、ショウのペニスが大きな山を作り出している。それを見た香は、
「もうこんなに大きくなってる…」
と嬉しそうに言うと、ショウに顔を近付け、
「エッチなんですね、ショウさんは」
と言った。
ドクンッ!!
「…うぅ…ッ、…あぁぁ…ッ!!」
顔を真っ赤にし、目を虚ろにさせているショウ。香はニッコリと微笑んで、
「じゃあ、目隠しをしますわよ?」
と言うと、ショウの目をアイマスクで覆い、ショウの後頭部でしっかりと固定した。
「準備はいいかね、ショウ君?」
司従の声が聞こえて来る。
「…は…い…」
ショウが顔を真っ赤にし、息を大きく飲み込んだ。
「じゃあ、始めましょうか!」
司従の声を合図に、ビデオテープが音を立てて回り始めた。