災魔の誘惑 第16話

 

「…ん…」

 暫くの間、意識を失っていたのかもしれない。少しだけ、頭がぼんやりとしている。

「…ここ…は…?」

 ゴーグリーンに装着したままでいるのは間違いないようだった。体にピッタリと密着するように纏わり付いたアンチハザードスーツ。そして、顔を覆うもわぁっとした空気。

「…え!?

 その時、ショウは自身の体に違和感を覚えていた。

「…な、…何…ッ!?

 両手首が痛い。いや、痛いと言うより、締め付けられるような感覚がした。しかも、自分の頭よりも上の方で。

(…オレ、…両手を縛られてる…?)

 そう思って体を揺らしたその時だった。

 ジャラッ!!ジャラジャラッッッッ!!!!

 乾いた金属音が頭上から聞こえた。

「…な…ッ、…何だッ、これッ!?

 その時だった。

「やっと気が付きましたか、ショウ君?」

 耳元で司従の声が聞こえて来る。

「…あ…」

 少しだけ、頭がはっきりしたように思えた。

(…そっか…。…今、オレは香さんのビデオの撮影中だったんだっけ…)

「ショウ君。君へ渡した台本に書き忘れていたよ。君は地面に掘られた穴から落ちる、と言う設定だったのです。ところがショウ君、その穴に落ちた途端、その場で気絶してしまったんですよ…!」

「…オ、…オレが!?

「そうなんです。でもまぁ、そこでシーン1は撮り終わりましたから、全く問題はありませんでしたけどね」

 モニターを見ながらニヤニヤと笑っている司従こと、呪士ピエール。その横には、香の姿から本来の姿に戻った災魔獣ツタカズラがいる。

「そしてこれからシーン2の撮影です。シーン2では敵の秘密基地に拉致され、両手を繋がれていると言う設定なのですよ」

「…だから…か。…って、いやいや!」

 ゴーグリーンのマスクが大きく左右に揺れる。そして、

「しッ、司従さんッ!!オレッ、また目隠しされてるんですかッ!?って言うか、そもそも、ここはどこなんですかッ!?

 と尋ねた。すると司従は、

「そうですよ?だって、君が目隠しをされた方がいい、って言ったものですから…。あ、それから、ここは某スタジオです。周りはがらんどうにし、ショウ君だけがスポットライトに照らされて、両手を縛られて立たされていると言う設定です」

 とあっけらかんと言った。

「…そ、…そんなぁ〜…」

 泣きべそをかくショウ。マスクをしているのなら、別に目隠しをしなくても素顔が晒されることはない。

「…香さんの姿、…見たかったぁ〜…!」

 露出度が極端に高い香のコスチューム。それを見られただけでも、ショウはきっと幸せだったに違いない。

 だがこれは、全ては呪士ピエールの仕組んだ罠。当然、目隠しをされるのもその罠の一部だったのである。その時だった。

「ごめんなさいね、ショウさん」

 香の声がマスク越しに聞こえた。

「か、香さんッ!?そこにいるのかッ!?

 その時だった。

 ドクンッ!!

 ショウの心臓が大きく高鳴り、

「…あ…あ…あ…あ…!!

 と、ショウが体を震わせた。ショウの体に触れた暖かいもの。

「…か、…かお…り…さん…?」

 柔らかいものがショウの体に密着し、その両腕のようなものを背中へ回しているようだ。

「…前にも言いましたけど、…私だって女性です。…大好きな人の前で、このような姿をじっくり晒したくはありませんわ…」

「…か…お…り…さん…」

 甘い匂いがショウの鼻を掠める。それだけで、ショウの意識はぼんやりとしてしまっていた。

 ドクンッ!!ドクンッ!!

 ショウの心臓はさっきから大きく高鳴りっぱなしだ。そして、ショウのがっしりとした2本の足の付け根部分に息づくショウの男としての象徴であるペニスがむくむくとその頭をもたげ、ゴーグリーンの鮮やかな緑色のアンチハザードスーツの中で臍へ向かって勃起し始めたのである。それを目敏く見つけた香は、

「フフッ!!ショウさんったら…!!

 と言うと、ショウに抱き付いているインプスに目配せをする。するとインプスはショウの体から離れたかと思うと、ショウの背後へ回った。同じように、香、いや、今は姿を変えた災魔獣ツタカズラも背後へ回り、

「まだ早いですわよ!」

 と言った瞬間、インプスが腰を屈め、肩幅程度に開かれたショウの股下から右手を伸ばし、そこに息づく2つの球体を握ったのである。その途端、

「んああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 とショウが悲鳴を上げ、体を大きく仰け反らせる。

「ショウ君!!凄く良いよッ!!既にカメラは回っているからッ、そのまま続けてッ!!

 耳元で司従、いや、呪士ピエールの声が聞こえて来る。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 ビリビリとした激しい電流のようなものがショウの体に流れる。

「フフッ!!ゴーグリーン。どうした?どうしてこんなに勃起している?」

「…あ…、…あぁぁ…!!(…そうだった。今は自分はサーペントナーガに捕らわれた正義のヒーロー・ゴーグリーンだった…)」

 我に返ったショウは、

「…べッ、…別にッ!!…勃ってなんかッ、…いねえッ!!

 と言い、

「この鎖を外せッ、サーペントナーガッ!!

 と怒鳴った。するとツタカズラは、

「フン!」

 と鼻で笑ったかと思うと、インプスに再びショウに抱き付かせた。

「はッ、離せッ!!

 香が抱き付いていると思い込んでいるショウ。口ではそう怒鳴り、体を捩らせるものの、心にはおぞましい感情が蠢いていた。

(…ああ…。…このまま、…ずっと香さんに抱き付かれていてえ…♥)

 その間にもインプスの両手がショウの体中を撫でる。

「…お前の体、物凄く美味しそうだ。お前の体から溢れ出るエネルギーを全て吸い取り、私のエネルギーと変えてやろう!!

 ツタカズラがそう言うと、インプスの手の動きが早くなる。

「…なッ、…止めろッ!!…止め…ろ…オオオオ…ッッッッ!!!!…気持ち…悪りィ…ッ!!(香さんッ、ごめんッ!!)」

 ゴーグリーンの真っ白なグローブを握り締め、それがギリギリと音を立てる。インプスはショウに横から抱き付くようにし、右手はショウの胸や腹、太腿などを撫でる。そして、左手でショウの背中や尻などを撫でていた。

「…く…っそ…オオオオ…ッッッッ!!!!…止めろ…ッ!!…止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 その時、インプスはショウの背後へと回る。そのショウの耳元に、ツタカズラが顔を寄せる。そして、

「…止めない…!!…貴様にはもっと淫らになってもらう…!!

 と言ったその瞬間、

 ズンッ!!

 と言う音と共に、

「はうッ!?

 とショウが素っ頓狂な声を上げ、再び体を大きく仰け反らせていた。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 ショウの2本の足の付け根部分。大きく開かれたそこに、背後からインプスが再び右腕を伸ばし、そこに息づくショウのペニスとその下に息づく2つの球体を鷲掴みにしていたのだった。

 

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