災魔の誘惑 第22話
暗闇に浮かぶ、光沢のある鮮やかな赤色のスーツ。装着者の体付きをクッキリと浮かび上がらせるほどに密着したアンチハザードスーツ。
「…お…前…ら…ぁ…ッ!!」
ゴーブラスターを手に構え、目の前にいる災魔獣ツタカズラと、その横で奇声を上げているインプスを睨み付けていた。そして、彼女達の足元に転がっている、自分の兄弟。
「…ショウに…ッ!!…ショウにッ、何をしたああああああああッッッッッッッッ!!!!!!??」
ゴーレッド・巽マトイ。その厳しい眼差しがツタカズラ達を睨み付けている。だがツタカズラは、
「…ククク…!!」
と相変わらず低く笑い続ける。
「何がおかしいッ!?」
カッとなったマトイがそう怒鳴った時だった。
「それは私がお答えしましょう」
コツーン…。コツーン…。
暗闇中に足音を響かせながら、黒メガネの、触角のような髭を持つ男・呪士ピエールがスゥッと姿を現した。それにはマトイも、
「うおッ!?」
と言って思わず後ずさる。
「…クックック…!!」
ピエールは黒い丸眼鏡の奥の瞳をギラギラと輝かせ、
「ゴーグリーンには…。…ショウ君には、我々災魔一族のAV男優になっていただきました…!」
と言った。
「…は?」
やや長い沈黙の後、マトイは事の状況を理解出来ず、一言、そう言うだけだった。するとピエールは、
「あなた方の世界にもあるでしょう?男性と女性が、己の本能の赴くままに性を貪り尽くす、そんな映像が…!」
と言い、
「我々、災魔の世界にもあるんですよ」
と言った。
「ただ、あなた方の世界のようなきれいなものを我々は好みません。どちらかと言うと、アブノーマルな物の方が食い付きが良くてですね。そんな時、ショウ君にお会いしたんです」
その丸眼鏡がキラリと光る。
「…何でも、お金に困っていた、と仰られて…。…出演していただくたびに、我々はショウ君へ快楽と共に、出演料として大金をショウ君にプレゼントさせていただいていました」
「ふっざっけるなああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
突然、マトイの怒鳴り声が辺りに響き渡った。
「…ショウが…!…ショウがッ、そんなことをするはずねえッ!!俺達はッ、誇り高き首都消防局員だッ!!それに、お前ら災魔一族からこの地球を守るゴーゴーファイブでもあるんだッ!!…ショウがッ、…そんなこと…!!」
「…フッ!!」
その時、ピエールが吹き出した。
「なッ、何がおかしいんでええええッッッッ!!!!!!??」
べらんめえ口調になるマトイ。だが、ピエールは、
「やれやれ。何を言い出すかと思えば…」
と言い、ツタカズラの足元でうつ伏せに倒れているショウに近付くと、
「…よい…っしょ…!」
と言いながら右足で仰向けにひっくり返らせた。そして、
「…ほら…。…これが何よりの証拠です…」
と言ったかと思うと、ゴーグリーンのスーツを飛び出し、未だに勃起しているショウの男としての象徴であるペニスを静かに握った。そして、
「…はぁぁぁぁ…!!」
と低く唸ったその時だった。
ビクッ!!ビクッ!!ビクビクッッッッ!!!!
ショウのペニスが何度も大きく脈打ったのと同時に、ショウ自身の体もビクンビクンと大きく跳ね、
「…あ…あ…あ…あ…!!」
と短い声を上げた。そして、
「…イクッ!!イクッ!!イクイクイクイクッッッッ!!!!」
と、体を弓なりにしたその途端、
ドビュッ!!ドビュッ!!ドビュドビュドビュドビュッッッッ!!!!ビュクビュクビュクビュクッッッッ!!!!
と、ショウのペニスの先端から、まだこれほど出るのかと言うほど、濃白色な淫猥な液体が飛び出し、噴水を作り出した。
「止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
マトイが思わず駆け出して行く。そんなマトイとピエールの間にツタカズラが入り込み、その皺枯れた腕を振るったのだ。
バシイイイイッッッッ!!!!
と言う衝撃音と同時に、
「ぐわああああッッッッ!!!!」
と、マトイが弾き飛ばされて転がる。だがすぐに体勢を立て直すと、
「…災魔…獣…うううう…ッッッッ!!!!」
と唸り声を上げた。
「ゴーレッド。どうしてお前がここにいるのだ?ここには我々とゴーグリーン以外、入って来ることは出来ないようになっているのに…」
女性の声だが、芯が強そうなその声に圧倒されそうになる。だが、マトイは一切、怯むことなく、
「ショウがその穴に落ちた時、閉じかけたそれの合間を縫ってここへ飛び込んだんだよ!」
と言うと、右親指を地面の方へ向かって振り下ろした。
「…?…ショウ…?」
その日――。
ショウが完全に災魔獣ツタカズラに心を奪われ、広大な河川敷でのロケの後、この暗闇に落ちることになっていたその日。出掛ける前のショウを、マトイは見かけていた。
「…へへ…ッ!!」
不気味なくらいにニタニタと笑うショウ。
「…な、…何だ、あいつ…?」
その不気味さに気付いたマトイだったが、その視線がショウのある1点で釘付けになった。
「…な…!!」
ショウの2本の足の付け根部分。ショウの男としての象徴がふくよかに息づいているその部分が大きく膨れ上がり、ショウのチノパンを大きく盛り上げていたのだ。
「…お、…おいッ、ショウ…!!」
と言い掛けて体が凍り付くような感覚を覚えていた。
ショウの体から、不気味なほどに真っ黒なオーラが溢れ、ショウの目が虚ろになり、いつもの精悍な顔付きが消えていたのだった。
「俺はショウの後をつけ、あの撮影現場に行ったのさ。お前らの仕業だってこともその時点で分かった!!そして、ショウがあの穴に落ちた瞬間、俺もその隙間を縫うようにしてここへ飛び込んだのさ!!」
「…ククク…!!」
その時、ピエールが肩を波打たせながら笑い始めた。そして、
「…そうですか…。…そこまで知ってしまったのですね…?」
と言ったかと思うと、黒い丸眼鏡の奥の瞳をギラギラさせ、
「だが、こちらにとっては好都合。猪突猛進型の似た者同士が飛び込んで来てくれたお陰で、お前達を倒した後の地球征服が楽になりましたよ…!!」
と言った。
「フン!どうかなッ!!」
マトイがそう言い、ピエールへ向かって駆け出したその時だった。
それまで床の上に仰向けで引っ繰り返っていたショウがいきなり素早く起き上がったかと思うと、ゴーブラスターのトリガーを引いた。その瞬間、
パパパパッッッッ!!!!パアアアアンンンンッッッッ!!!!パアアアアンンンンッッッッ!!!!ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う衝撃音と共に、マトイのゴーレッドのアンチハザードスーツが眩しくスパークした。
「うぅわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
不意を突かれ、マトイが後方へ吹き飛ぶ。
「…ショ…、…ショウ…!?」
そこで見たもの。
ゴーグリーン・巽ショウがピエールとツタカズラを守るように立ちはだかり、ゴーブラスターを構え、その逆三角形のバイザーでマトイを見下ろしていたのだった。