秘密の契約と心の闇 第18話
「じゃあ、オレ、今日も用事があるから…!」
ほぼ毎日、同じ時刻に出かけるようになったハリケンイエロー・尾藤吼太。出かける時刻になるまで、いつになくそわそわとしている。どこへ行くのかと問い掛けても、
「…い、…いや、ちょっと…ね…」
と言い、きちんと行き先を告げようとはしない。だが、お互いを信頼しているのか、ハリケンレッド・椎名鷹介も、ハリケンブルー・野乃七海も何も咎めることはなかった。異変が起こり始めているのにも気付かずに――。
だが、この男だけは気付いていた。
「…どこへ行く…?」
いつもよりも笑顔を大きくさせて、忍風館を飛び出した吼太に声を掛けるその男。その声にギクリとなり、思わず立ち止まる吼太。
「…い、…一甲…!?」
疾風流とライバル関係にある迅雷流の長男で、クワガライジャーにシノビチェンジする霞一甲が、忍風館を背に腕組みをし、吼太をじっと見つめていた。
「…毎日毎日、同じ時刻になると出かけて行く…」
そう言うと一甲はゆっくりと歩き出し、吼太に近付いた。
「…お前、…何を隠してる…?」
「べ、別に隠してなんて…」
その時だった。一甲が不意に吼太の腕を掴んだ。そのあまりの強さに、
「…痛ッ…!」
と吼太は思わずしかめっ面をした。すると一甲は、
「…やはりな…」
と溜め息を吐き、
「俺がちょっと腕を掴んだだけで痛がったりするのも、この痩せ細り方も普通じゃない」
と言った。そして、
「…お前、…何者かに精気を吸い取られているんじゃないのか…?」
と厳しい目付きで吼太に問い質す。だが吼太は、
「…そ、そんなことないって!…一甲の考え過ぎだよ…!」
と言うが、その目が確実に泳いでいるのが分かったのか、
「…じゃあ…」
と一甲が言ったかと思うと、ポケットから小さな鏡を取り出した。そして、
「お前の目の下のクマは何だ!?」
と急に声を荒げた。
「余程の寝不足か、働き過ぎじゃなきゃ、そんなクマは出来ない。だがこのところ、お前はここに帰って来ると、他の者が呼んでも気付かないほどグッスリと寝込んでいる。となれば、寝不足は考えられない。残るは働き過ぎと言うことだ。だが、最近ではジャカンジャの動きは殆どない。人々を襲っていると言う噂もな。だが、タウ・ザントの復活への動きが活発化している。それはつまり、タウ・ザントへ誰かが究極のエネルギーを献上していると言うことだ。…お前じゃないだろうな…?」
「な、何言ってんだよッ!?」
イライラを募らせた吼太が突然、叫んだ。
「…な、…何でオレが疑われなきゃならねぇんだよッ!?」
荒い息をして一甲を睨み付ける吼太。だが、一甲はじっと吼太を見つめている。
「オレがそんなこと、するわけねぇだろうッ!?…もう、…ほっといてくれよッ!!」
吼太はそう言うと、一甲にクルリと背を向け、物凄い勢いで駆け出して行った。
「サクヤ様ッ!!」
人里離れた、山間の集落へ辿り着いた吼太は、一軒の小屋の扉を勢いを付けて開けた。
「吼太さんッ!!」
吼太の顔を見るや、中学生くらいの少年・サクヤが嬉しそうに吼太に駆け寄り、その大きな体に飛び込んだ。
「申し訳ありませんでした、サクヤ様ッ!!遅くなってしまって…!」
そう言いながら、吼太はサクヤの体を強く抱き締める。
「何かあったの?」
太く逞しい吼太の腕の中から、サクヤが心配そうに吼太を見上げる。すると吼太は静かに微笑んで、
「いえ、何もありません。ご安心下さい」
と言った。するとサクヤもニッコリと微笑んで、
「じゃあ、吼太さん。ハリケンイエローになってよ!」
と言った。
「かしこまりました!」
すると吼太はサクヤと間合いを取り、
「忍風・シノビチェンジッ!!」
と叫び、ハリケンジャイロに手を掛けた。そして、
「はあああッッッ!!!!」
と言う気合いと共に、吼太の左腕が突き出され、同時に眩しい光に包まれた。
次の瞬間、吼太の体は、光沢のある鮮やかな黄色のシノビスーツに覆われ、吼太はハリケンイエローにシノビチェンジしていたのである。
「…うわあ…!」
何度も見慣れた様相だと言うのに、何度見ても新鮮に感じる。サクヤは思わず声を上げていた。
「…吼太さん…。相変わらず、逞しいよね!」
そう言うとサクヤは吼太に抱き付いた。
「…このお尻と言い…」
そう言うとサクヤは両手を吼太の筋肉質な尻へと回し、静かに撫で回す。
「…んッ!!…く…うう…ッ!!」
少しだけ膝を落とし、体をピクピクと反応させる吼太。
「あはっ!吼太さんったら、やらしいなぁ!お尻を触られただけで感じちゃってるのぉ?」
サクヤがほんのりと顔を赤らめて言う。すると吼太の、ハリケンイエローのマスクが静かに動き、
「…何だか、…今日はいつも以上に、…感じて、…しまいます…!!」
と言った。するとサクヤは、
「フフッ!」
と笑い、
「だよね!今日はここもこんなに大きくなってるもんね!」
と言うと、吼太の2本の足の付け根に息づく、吼太の男としての象徴をギュッと握った。その途端、
「んああああッッッッ!!!!」
と言う吼太の叫び声が小屋の中に響いた。
「あはっ!相変わらず、太くて固いおチンチンだね、吼太さんのって!」
サクヤは嬉しそうにそう言うと、吼太のペニスをゆるゆると上下する。
「あッ!!あッ!!あッ!!」
声を上げるものの、吼太は腰を落としたまま、微動だにしない。
「…やッ、…止めろおおお…ッ!!」
時折、ビクビクと体を跳ねらせながら、呻くように言う。
「フフッ!」
サクヤは小さく笑うと、吼太の目の前へゆっくりと跪いた。
「…サ、…サクヤ…様…?…な、…何を?」
吼太の股間の目の前に、サクヤの顔がある。
「…ま、…まさか…ッ!?」
不意に吼太の息遣いが荒くなる。するとサクヤは吼太の筋肉質な尻をグッと掴んだ。そして、
「覚悟はいい、吼太さん?」
と言い、吼太のペニスに顔を近付けたかと思うと、ハリケンイエローのシノビスーツの中で大きく勃起しているそれの先端部分をゆっくりと食み始めたのである。
「ああッ!!」
その刺激に、吼太のハリケンイエローのマスクが大きく上を向く。
…チュッ!!…チュク…ッ!!
淫猥な音が聞こえ始め、サクヤの口が何かを食べるようにゆっくりと動く。
「ああッ!!ああッ!!ああああッッッッ!!!!」
サクヤの頭を無意識に押さえ、快楽に喘ぐ吼太。
だが、この時の吼太は、これが吼太自身と、吼太の異変に気付いていた一甲の破滅への序曲であったことを、吼太はまだ知らないでいた。