秘密の契約と心の闇 第20話
光沢のある臙脂色のシノビスーツを身に纏ったカブトライジャー・霞一甲。筋肉隆々の彼の体付きがクッキリと浮かび上がり、普段から鍛えていることを窺わせるだけではなく、彼がパワーファイター系の戦士であることを容易に想像させた。
「…ククク…!」
サクヤがニヤニヤと笑う。
「…貴様、…中忍か…?」
一甲が静かに尋ねると、サクヤは静かに頷いた。
「そうだよ。俺は中忍サクヤ。流れ忍者なんかじゃない。タウ・ザント様にお仕えするれっきとしたジャカンジャの人間さ!」
そう言うとサクヤは、足元で気を失っているハリケンイエロー・尾藤吼太に近付き、すっかり萎え切って小さな山を作り出している吼太の股間に足を乗せた。
グジュッ!!
その瞬間、淫猥な音がし、吼太がビクリと体を跳ねらせた。光沢のある黄色のシノビスーツのその部分はぐっしょりと濡れ、光沢を失っていた。
「こいつには感謝しなきゃならないな!こいつのお陰で、大量の生体エネルギーをタウ・ザント様に献上出来るのだから!」
そう言いながらサクヤは、吼太の股間に乗せている足をグリグリと動かす。そのたびに吼太の体がビクビクと跳ねた。
「…止めろ…!」
静かに言う一甲。その口調は怒気を含んでいた。そんな一甲を見下すかのように、サクヤはフフン、と笑うと、
「俺は最初、人々を襲い、生体エネルギーを奪うと見せかけた。その時、こいつがまんまと罠にかかってくれたのさ。そして、人々を救う代わりに、自らが犠牲になると言った。そこまでは俺の計画通りだった。でもこいつは、思いも寄らない行動に出たんだ」
と言った。
「俺は最初だけ、こいつと遊んでやるつもりで、こいつに快楽を与え、生体エネルギーを奪った。お前達、人間の言葉を借りるのなら、『チンポを扱いて強制射精させる』ってやつかな」
そう言いながらも、サクヤは吼太の股間をグリグリと刺激する。その刺激を受けて、吼太が体をビクビクと跳ねらせ続ける。
「そしたらこいつ、すっかりその快楽にハマってしまったようだ。俺のもとへ何度も何度も来るようになり、俺はそのたびにこいつを強制射精させまくった。最初は恥じらっていたこいつだったが、いつの間にか、嬌声を上げて悦ぶようになったよ」
「…止めろと言ってるんだ…!」
一甲の拳がギリギリと音を立てる。
「フフッ!俺は最初の射精の後、次に会う時はこいつから全ての生体エネルギーを奪い取ってやろうと思っていたのさ。命と一緒にね!だがこいつは自分から俺のもとへやって来て、その体を差し出した。そして、何度も何度も生体エネルギーをくれるものだから、さすがの俺も殺すのは忍びなくてね。今じゃ、こいつはすっかり、俺の奴隷さ!…そして!」
その時、一甲は一瞬にして危険を感じた。
(…こいつ…!!)
思わず身構える一甲。
サクヤの目。獲物を確実に仕留めるような、野獣のような目付きをしていたのだ。
「今度は貴様が強制射精させられる番だぁッ!!」
その瞬間、サクヤの姿が一甲の視界から消えた。
(!?)
一甲が一瞬、ひるむ。その時だった。
ドゴォッ!!
鈍い音がし、一甲は体に激痛を感じた。
「…ぐ…ふ…ッ!?」
体が腹部からくの字に折れ曲がっている。カブトライジャーのマスクの中で、一甲は目をカッと見開き、呼吸が出来ないでいた。
「…フフフ…!!」
サクヤの右拳が、一甲の腹部に減り込んでいた。
「…お…の…れ…ッ!!」
一甲は何とかして右手をイカヅチ丸へ伸ばし、その柄を握った。
「…貴様ぁッ!!許さんッ!!」
一甲がイカヅチ丸を振り翳す。と、その時だった。
サクヤが急に向きを変えたかと思うと、吼太のもとへ走り寄ったのである。そして、
「吼太さんッ!!吼太さんッ!!起きてッ!!ねぇッ、起きてよッ!!」
と叫び始めたのだ。その声は、先ほどまでの不気味な声ではなく、サクヤ少年そのものの声だった。
「吼太さんッ!!ねぇッ、吼太さんってばぁッ!!」
ゆさゆさとハリケンイエローのシノビスーツを纏った吼太を揺する。
「…ん…」
その時、吼太の指がピクリと動いた。そして、
「…あ…。…サクヤ…様…?」
とまるで寝起きのような声を上げた。
「助けてよッ、吼太さんッ!!あいつが、僕を殺そうとするんだッ!!」
吼太は、サクヤが指差した方をゆっくりと見た。その瞬間、
「…ッ!?」
と一言呻いたかと思うと、物凄い勢いで起き上がり、言葉を失った。
「…い、…一…甲…ッ!?」
「話は後だ、吼太ッ!!今はそいつを倒さねばならんッ!!」
一甲が再びイカヅチ丸を構える。
「ちょちょちょ、ちょっと待てよッ、一甲ッ!!」
突然、何を言い出すのかと言わん勢いで吼太は立ち上がると、思わずサクヤを後ろへ庇った。
「この子は流れ忍者で、ジャカンジャの手先なんかじゃないんだぜッ!?」
「だから、それが誤りだと言っているんだッ!!そいつの正体は中忍サクヤで、お前から奪った精液をタウ・ザントへ献上し、タウ・ザントを復活させようとしているんだぞ!?」
「んなバカなッ!!」
「どうでもいいから、さっさとそこをどけッ!!」
一甲がイカヅチ丸を振り翳し、吼太とサクヤの方へ向かって突進して来る。
「うわああああッッッッ!!!!」
サクヤが悲鳴を上げる。
「止めろオオオオッッッッ!!!!」
吼太がハヤテ丸を思わず抜き、一甲のイカヅチ丸を受け止める。キィン、と言う乾いた金属音が響いた。
「…吼…太…!?」
カブトライジャーのマスク越しに、一甲の呆然とした表情が窺える。
「…サクヤ様には、…一切、…手出しをさせないッ!!…サクヤ様は、…ジャカンジャなんかじゃないッ!!」
「お前ッ、洗脳されているのが分からないのかッ!?目を覚ませッ、吼太ッ!!」
「お前こそ、サクヤ様を疑うなんて、最低だぞッ!?」
「この分からず屋ッ!!」
「一甲の方が分からず屋だッ!!」
その瞬間、2人の姿が瞬時に消えたかと思うと、黄色と臙脂色の光の帯が宙でぶつかりながら飛び始めた。そして、時にはキィンと言う乾いた金属音が、そして、時には何かが爆発したような火の粉が見え隠れした。
「…やれやれ…」
その光景を、サクヤはじっと見つめていた。そして、指先をクイッと動かしたその時だった。
「うぐッ!?」
突然、一甲が姿を現したかと思うと、地面に大の字に立っていたのである。
「…な…に…ッ!?」
驚いた一甲が体を見回すが、一向に体が動かない。
「うわあッ!!」
反対に、姿を現した吼太はそのまま地面にドスンと倒れ込んだ。
「吼太さんッ!!」
サクヤが慌てて駆け寄る。
「大丈夫?」
「…サクヤ…様…?…何を…?」
吼太が驚いてサクヤに尋ねる。するとサクヤは一甲の方を向き、
「あいつを金縛りにかけたんだよ!」
と言った。
「…ッ!?」
その時、一甲は見逃さなかった。サクヤの口元が、不気味に歪んでいたのを。