ちぎれた翼 第１０話
「…く…ッ!!」
冷静に物事を判断する暇もないほど、あっと言う間に四肢を拘束され、暗い空間の中で立たされているブラックコンドル・結城凱。
「…んがああああッッッッ!!!!」
ありとあらゆる力を使い、何とかしてその拘束を解こうとする。しかし、どう足掻いても、その拘束が解かれることはなかった。
「…くっそおおおおッッッッ!!!!離しやがれええええッッッッ!!!!」
凱の声が空しくその空間に響いた。
「…フフフ…！」
そんな凱の目の前に、勝ち誇った笑みを浮かべる少年・トランがいた。
「…いい眺めだねぇ、ブラックコンドルぅ？」
顎の下に右手の親指と人差し指でＬ字型を作り、まるで顎を支えるかのようにしている。
「…こんの、…くそガキぃぃぃッッッ!!!!」
凱が叫んだところで、無駄な抵抗なのは分かっていた。トランの異常なほどの力を嫌と言うほど痛感していたし、何より、子供とは言え、男であるトランに体をベタベタと触られるのには我慢がならなかった。
するとトランは首をちょっと傾げ、
「ねぇ、ブラックコンドルぅ」
と、凱を呼んだ。
「な、何だよッ!?」
ぶっきらぼうに返事をする凱。
「…キミには、学習能力はないのかい？」
「…どッ、…どう言う意味でぇッ!!」
思わず江戸っ子口調になる。
「だぁかぁらぁ！」
トランはそう言うと凱に近付いた。そして、不意に右足を振り上げたと思った次の瞬間、
ドゴォッ!!
と言う鈍い音が聞こえた。
トランの右足が、凱の股下を直撃していたのである。
「…あ…あ…、…が…!!」
その瞬間、凱の呼吸が止まった。いや、実際には止まったわけではなかったが、そのくらいの激痛が下腹部に響いた。そして、男性にしか味わえないあの独特の痛みがやって来たかと思った次の瞬間、
「…ぁぁぁ…。…ぐぅわああああああああああッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
と言う絶叫が響き渡った。
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
四肢を拘束されているので、自身の大事なところ、凱にとってはまさに武器と言ったところを押さえることが出来ない。腰をくの字に折り曲げることさえ出来ない。せいぜい、腰を左右に振ることが出来るくらいだろうか。
「だぁかぁらぁ、何度も言ってるだろ？」
バイザーをしているので表情までは窺うことは出来なかったが、口を尖らせている辺り、トランが明らかに不機嫌であることは容易に窺えた。
「ボクはいつまでも子供扱いされることが一番大っ嫌いなんだ!!」
そう言うとトランは、再び右足を大きく後ろへ振り上げた。
「やッ、止めろおおおおッッッッ!!!!」
思わず悲鳴を上げた凱。これ以上、自身の武器を蹴り上げられたりしたら、使い物にならなくなる。
「…わ、…悪かった!!…オレが悪かったから、…もう、…蹴るのは止めてくれ…!!」
ここは取り敢えず、自分が悪かったことにしてこの子供を落ち着かせよう、凱はそう思った。するとトランはにっこりとして、
「しょうがないから、止めてやるよ!!」
と言い、振り上げていた右足を下ろした。
「…く…ッ…!!」
その勝ち誇ったような言い方に凱は再び腹が立ったが、そこは大人としての対応をしようと決めた。
「おい、トラン」
「なぁにぃ？」
トランが首を傾げる。
「これだけは言っておく」
「うん」
「…オレは、…男に体をベタベタ触られるのが、好きじゃねぇんだ」
「うん」
「ましてや、男の一番大事なところを、…って、うわああああッッッッ!!!!!!」
再び、凱が悲鳴を上げた。
凱がトランを説得しようと声をかけている最中に、トランがゆっくりと歩み寄って来たかと思うと、凱の体に横からしっかりと抱き付いたのである。
「…だッ、…だからッ!!…そ、…そう言うのが、…一番嫌いなんだよッ!!」
「え〜？ボクは一番好きなんだけどなッ!!」
そう言いながらも、トランは凱の腹筋、腕、太股を擦り上げる。
「うわああああッッッッ!!!!やッ、止めろおおおおッッッッ!!!!」
ぞわぞわとした悪寒が凱の体を突き抜ける。そのせいで凱の体中に鳥肌が立つ。
「凄いよ、ブラックコンドルぅ…!!」
バードニックスーツと言う特殊な素材で出来た、やや厚手のスーツの上からでも、それを纏った者の肉付きをうっすらと浮かび上がらせている。
「腕や足なんか、物凄く硬いよ…！…それに、この腹筋!!」
そう言いながら、凱の胸から腹へかけて何度も擦るトラン。
「胸の筋肉なんて隆々だし、腹筋なんかバッキバキだし…!!」
「んだッ、…だからッ、…止めろ…ってぇ…!!」
何とかしてトランを引き離そうと試みるも、トランはしっかりと凱に組み付いて離れない。
「ンフフフ…!!」
不意にトランが笑みを浮かべた。バイザー越しのトランの視線を見た瞬間、凱は恐怖に慄いた。
「…や、…止…めろ…!!」
次にトランが何をするか、一発で見抜いた凱が思わず声を上げる。
「…体中の筋肉がこんなだったら、…ブラックコンドルの大事なところはどんなのかなぁ…？」
「…や、…止めてくれ、トラン…！…な？…頼むから、…それだけは勘弁してくれ…!!」
凱がそう言う間にも、トランの右手がゆっくりと腹から下へ下りて行く。
「…普段から少し大きいんだね、ブラックコンドルのここって。スーツ越しに大きく膨らんでるよ？」
思わず顔が熱くなる。
いや、本来ならば、それは凱にとって自慢のはずだった。それで何人の女性を落としたことか。
だが、今、目の前にいてそれを褒めているのは男だ。しかも、自分よりも遥かに年下だ。
「…止めろ…!!」
トランの指が、ゆっくりと凱のそれに触れ始める。
「止めろッ!!止めろ止めろッ!!」
凱が体を揺らす。だが、トランの右手は少しずつ凱の股間を覆い始める。
「止めろおおおおッッッッ!!!!」
凱が叫んだのと同時に、トランの右手が凱の股間を完全に覆い、優しく揉み込み始めたのだ。
「うああああッッッッ!!!!」
ムギュムギュと凱の代名詞とも言える場所が、少年によって揉み込まれている。
「…んどッ、…どこ、…触ってんだよッ!!」
思わずトランを睨み付ける。だが、トランは、
「…ブラックコンドルのここってさぁ、…ほんと、…大きいよね…!!」
とウットリとした表情を見せたのである。
「大きくなっていないのにぃ、太いしぃ、硬いしぃ、それに玉なんて物凄いボリュームだし!!」
そう言いながら、トランは何度も何度も、凱の股間全体を手のひらで撫で回す。
「…だッ、だからッ、…んはッ!!…へッ、…変なとこ、…触んじゃねぇッ!!」
トランの執拗な行為を何とか振り払おうと身を捩じらす凱。
だがこの時、自分の身に異変が起ころうとは、今の凱は知らないでいた。