ちぎれた翼U 第7話

 

 急成長を遂げたトランザ。その有り余る超能力に振り回され、大きなダメージを負ったレッドホーク・天堂竜。

 肩から背中にかけて、鳥のようなデザインが施され、背中は赤一色。尻の部分までが赤一色で、そこから下は白。その境界部分の黄色いライン。赤と白、黄色を基調とし、鳥をあしらったエンブレムと胸のVライン。白を基調とし、競泳水着のような形をした赤いパンツに黄色のラインが縁取られているバードニックスーツの正面。その全てが土汚れに茶色く染まっていた。

「…ぐ…ッ、…ぐぅ…ッ!!

 光沢のあるそのバードニックスーツを際立たせるように、竜の背後には真っ白な十字架が立てられ、竜はそこに両腕を肩の高さに伸ばし、両足を軽く開かれた状態で縛り付けられていた。

「…は…ッ、…離せ…ぇ…ッ!!

 鷹をあしらった精悍な顔付きのマスクは吹き飛び、バードニックスーツの上に竜の素顔が露わになっている。その顔は恐怖に歪み、普段から大きな瞳は更に見開かれ、きょときょとと忙しなく動いていた。

「どうした、レッドホーク?震えているのか?」

 目の前には、黒と白を基調とし、銀色の髪を垂れ下げたトランザが腕組みをし、ニヤニヤ笑いながら立っている。

「いい光景だ。無様だよ、レッドホーク」

 そう言いながら静かに竜に近付いて行くトランザ。

「…くッ、…来るなぁッ!!

 竜は思わずそう叫んでいた。そして、拘束されている手足を無我夢中で動かす。ガチャガチャと鉄製の拘束具が乾いた金属音を立てた。

「アーッハッハッハッハ…!!

 その光景に耐えきれなくなったのか、トランザが大声で笑い始めた。

「ジェットマンのリーダーがそんな小心者だったとはな!これは驚きだ!ブラックコンドルの方がまだ勇敢だったぞ!!

 そう言った時、トランザは竜を睨み付けていた。

「我が次元戦団バイラムに刃向かった報い、受けてもらおうッ!!

 その時、トランザはボルトランザを振り上げ、

「はああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と叫びながら竜へ突進して来たのである。

「やッ、止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 竜が悲鳴を上げる。同時に、ボルトランザの刃先が煌めいたのが分かった。

 バアアアアンンンンッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!

 眩しい閃光と共に、竜のバードニックスーツが火花を散らす。

「うわッ!!ああッ!!ああッ!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!

 ボルトランザがバードニックスーツを斬り付け、火花が散るたびに竜が悲鳴を上げる。

「いやああああッッッッ!!!!

 そして、トランザが振り上げたボルトランザを後方へ引き、思い切り前へ突き出し、竜の体に突き刺したその時だった。

 ズガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!

 物凄い爆発と共に、

「ひぎゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う、竜の掠れた叫び声が辺り一面に響き渡った。

「…う、…う…うぁ…!!

 ガクリと首を垂れる竜。レッドホークのバードニックスーツからはしゅうしゅうと煙が立ち込め、ところどころ破壊され、そのスーツを強固なものにする様々な回路が飛び出ていた。

「…ククク…!!…いい様だな、レッドホーク…!!

 そう言ったトランザは、ボルトランザを真っ赤な舌で淫猥に舐め上げる。

「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!

 首を垂れながらも、懸命にトランザを睨み付ける竜。その顔にトランザはムッとした表情を浮かべると、

「…まだ、足りぬか…?」

 と言い、

「もう一度だぁッ!!

 とボルトランザを振り上げ、

「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と竜に向かって突進して行った。

 ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 大きな爆発音と同時に、

「ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う竜の絶叫が再びこだました。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 舞い散っていた砂塵が晴れた時、竜の姿は惨たらしいものになっていた。

 顔の至る所が真っ赤にうっ血している。竜の体を守っているはずのバードニックスーツはズタズタに切り裂かれ、もはや、その機能を失っていた。

 その目は相変わらず大きく見開かれ、拘束された手足はブルブルと震え続けていた。

「…おっと、いかんいかん…」

 不意に何かを思い出したかのように、トランザが声を上げた。

「俺としたことが、すっかり逆上してしまった…。…ここまでするつもりは全くなかったのに…!!

 その時、トランザはゆっくりと右手を差し出し、竜の左頬をそっと撫でた。

「ひッ!?

 思わず小さな悲鳴を上げる竜。するとトランザはニヤリと笑って、

「心配するな!もうこれ以上は酷いことはしない」

 と言い、自身の顔をゆっくりと竜に近付ける。

「…お前に、素敵な夢を見せてやろう…!」

 トランザはそう言うと、竜の左頬を覆っていた自身の右手を離し、その部分を真っ赤な舌でペロリと舐め上げた。

「ひぃぃ…ッ!!

 思わず顔を仰け反らす竜。だが、トランザはフンと鼻で笑うと、レッドホークのバードニックスーツの首の部分に手を掛けた。

「…な、…何…を…!!

 震える声を辛うじて絞り出す竜。するとトランザは大きく溜め息を吐き、

「やれやれ。聞いていなかったのか?お前に素敵な夢を見せてやろうと言うのだ…!」

 と言った瞬間、

「フンッ!!

 とバードニックスーツを掴んでいた手に力を入れたかと思うと、思い切り引っ張ったのである。

 …ビッ!!…ビリィィィィッッッッ!!!!

 鈍い音がし、既に機能を失っていたバードニックスーツは、まるでボロ布のように簡単に引き裂かれた。

「…あ、…あ…あ…あ…!!…うぅわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 竜が絶叫する。

「…おおおお…!!

 その瞬間、トランザが目を輝かせ、ウットリとした表情を見せた。

「…あ…、…あぁ…!!

 それとは逆に、怯えの表情を見せ続ける竜。

 大きく破られたレッドホークのバードニックスーツ。ボロ布のようになっていたそれは肩から胸の部分にかけて大きくはだけ、竜の胸筋が白日のもとに晒されていたのである。

「…何と、…何と逞しい…!!

 わずかながらに頬を紅潮させているトランザ。

「…こんなに美味しそうなもの、そう簡単には味わえんぞ…!!

 そう言ったトランザの真っ赤な舌が、紫色の唇をゆっくりと舐め上げた。

 

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