ちぎれた翼U 第20話

 

「…う…、…あ…、…あ…!!

 まるで重力が掛かっている空間に放り込まれたように体がとても重く感じられる。ぼんやりとする意識、目が霞む。2人の男が目の前に立っているのは分かった。

「…ッ…!!

 じゃりじゃりとした感覚。その時、自分が地面に倒れていることが分かった。小さな砂や石が体に突き刺さる。光沢のある鮮やかな赤と白を基調としたバードニックスーツは、最早、その機能を完全に失い、ただのボロきれと化していた。小麦色に灼けた肌、ココナッツ色の胸の突起、そして、どす黒く、先端は真っ赤に腫れ上がったペニス。それら全てに突き刺さる砂や石は、まるで自らが行って来たことを全て否定するかのように、苦痛ではなく、激痛と屈辱を与えるものであった。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 体をブルブルと震わせながら、目の前の光景を見上げるレッドホーク・天堂竜。

「…フッ…!!

 その時、同じような光沢のある黒と白を基調としたバードニックスーツを身に纏った男が笑った。ブラックコンドル・結城凱だ。凱はゆっくりと竜のもとへしゃがみ込む。

「…情けねぇな、てめえはよぉ…!!

 凱は竜を見下すように言った。

「そんなんじゃ、女に嫌われるぜぇ?…いや、まともに女を愛せやしねぇぜ?」

「…う…、…あぁぁ…!!

 ニヤニヤと自分の目の前で笑っていることよりも、竜は親友を助けられなかったことに苛まれていた。凱の股間、しゃがみ込んでいるので本来ならあるはずの膨らみが全くなかったのだ。

「…がッ…、…凱…ッ!!

 ポロポロと涙が零れる。

「…すまない…、…凱…!!

 凱の腕を掴み、ズリズリと体を引き摺りながら、それでも真剣な眼差しで凱を見上げる。

「…俺は、…お前を、…助けられなかった…。…でも、…俺は、…絶対に諦めない…!!

 そう言うと竜の視線がもう1人の男の方へ移った。

「…ト…ランザ…ああああ…ッッッッ…!!!!

 その時、トランザはまるでハムスターのように頬をぷっくりと膨らませていたのだ。そして、

「んんッ!!

 と、凱に声をかける。すると凱は小さな容器、竜の精液が入ったそれをトランザへ差し出した。

「…やッ、…止めろ…おおおお…ッッッッ…!!!!

 トランザは凱に、竜の精液をくれてやると言っていた。今、トランザが持っている容器には特殊な酵素が入っており、それが竜の精液と混ざり合い、強力な精力剤になると言っていた。

「…ト、…トランザああああッッッッ!!!!

 竜の右手が渾身の力で動こうとする。その時、ピッ!!と言う音と共に竜の右手に激痛が走り、パァァァン、と言う乾いた音が響いた。

「…あ…が…ッ!!

 竜の手首からしゅうしゅうと煙が立ち上っている。

「…うぅ…ッ、…うわああああああッッッッッッ!!!!!!

 思わず左手で右手首を押さえる竜。

「おい、竜!見てみろよ!」

 その時、凱がニヤニヤしながら竜を見て、クイッと顎をしゃくった。

「…ひああああああああああッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

 竜が絶叫とも悲鳴ともつかない声を上げる。トランザの口から濃白色な液体がトロトロと溢れ出し、口元に持って来た小さな容器に注がれていたのである。そして、その右手は左腕に装着されているキーパッドメタルトランサーを操作していた。さっきの竜の右手の爆発もそのせいだった。

「…ぷは…ッ!!

 やがて、トランザが大きな息を吐き出したと同時に、容器が妖しく光り始めたのだ。

「…フフフ…!!

 トランザがニヤニヤとしながら、その容器を小刻みに振る。

 …グチュグチュッ!!…グチュグチュグチュグチュ…ッ!!

 淫猥な音が響き、容器の中の竜の精液がなみなみと揺れる。

「…さぁ、…ブラックコンドル…!」

 そう言うとトランザは、妖しく光り続ける容器を凱へ差し出した。

「これで貴様も男になるがいい!!

 凱は中に入っている竜の精液をじっと見つめたが、あまりの強烈な臭いに顔をしかめた。

「止めろおおおおッッッッ!!!!凱ィィィィッッッッ!!!!

 竜が顔を真っ赤にし、懇願するような眼差しで凱を見上げる。

「…ッ!!

 その時、意を決したかのように凱は目をギュッと閉じ、息を止めて容器の中身を一気に喉に流し込んだ。

「ひああああああああああッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

 竜の絶叫と、

 …ゴクッ!!…ゴクゴク…ッッッ!!!!

 と言う凱の喉が大きく動く音が同時に響く。

「…ふぅぅ…」

 やがて、凱が大きく溜め息を吐いたその時だった。

「…うぐ…ッ!?

 凱が目をカッと見開き、喉元を押さえ始めたのだ。

「…あ…あ…あ…!!

 竜は呆然と凱を見つめたまま、動くことが出来ない。

「…あ、…あぁぁ…!!

 カッと目を見開いていた凱。その半開きになった口元からは涎と一緒に竜の精液の残りが混じり、淫猥な糸を引いた。そして、

「…ぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う絶叫と共に体をグンと硬直させた。その時だった。

 凱の2本の足の付け根。凱の男子としての象徴が息づく場所。トランザによって潰され、形すらもなかったそこがモゾモゾと蠢き始めたのだ。

「…かッ、…体が…ッ!!…熱い…ッ!!…ふああああああああああッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

 まるで萎んだ風船に空気を入れて行くかのように、ボリュームのある2つの球体が形作られて行く。

「うおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

 そして次に、その上に息づく凱のペニスがむくむくと頭をもたげ始め、次第に大きく、太くなり始めた。

「がああああああああああッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!

 しかも、それはブラックコンドルの競泳水着のような形にデザインされた凱の腰周りでテントを張ったのだ。と、その時だった。

 …ビッ!!…ビィィィッッッ!!!!

 鈍い音がしたかと思ったその瞬間、凱の大きく勃起したペニスがブラックコンドルのバードニックスーツを文字通り突き破って飛び出して来た。

「…あ…、…あぁぁ…!!

 凱の大きく勃起したペニス。真っ赤に腫れ上がった先端は大きく膨れ上がり、その鈴口からはトロトロと淫猥な液体が溢れ出していた。太く、硬く、大きな凱のペニス。それを見て竜は呆然とする。

 シャワールームで見たことのあるそれとは全く違っていた。いや、実質は同じかもしれない。だがその大きさは竜自身も初めて見るものだった。

「…ふぅ…ッ!!…ふぅ…ッ!!

 凱が肩で大きく息をする。だが、

「…ククク…!!

 と低く笑い始めたのだ。

「…が…、…凱…!?

 未だに起き上がることが出来ない竜。だがその目には明らかに恐怖の色が窺えた。

「…竜…!…竜…ッ!!

 低い声で竜を呼ぶ凱。そんな凱の目がギラリと光り、凱の背後にはゆらゆらと陽炎のようなものが蠢いていた。

 

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