ちぎれた翼V 第3話
イエローオウルにクロスチェンジした大石雷太。
肩から背中にかけて、鳥のようなデザインが施され、背中は黄色一色。尻の部分までが黄色一色で、そこから下は白。その間には黒のラインが入っていた。
正面は黄色と白、黒を基調とし、鳥をあしらったエンブレムと胸のVラインが入った上半身。白を基調とし、競泳水着のような形をした黄色のパンツに黒のラインが縁取られている下半身。それは全てきらきらと輝き、それを着こなしている人間の腕や足、胸などの筋肉を隆々と浮かび上がらせていた。そして、頭部には黄色を基調とし、額の部分にはフクロウを模したデザインが施されたマスクがあった。
「…これは、…かなりの上物かもしれんな…!!」
その姿を見ていたトランザが不気味に口元を歪ませた。
「…そ、そもそも、ここはどこなんだいッ!!」
雷太のやや高めの声が辺り一面に響く。
「ここは巨大魔城バイロック。我が城だ」
トランザがニヤニヤとしながら言う。
「なるほどね」
雷太は大きく溜め息を吐くと、
「僕達はここにお前の力によってワープさせられた、ってことだね?」
と言うと、
「ご名答」
とトランザが蔑んだ眼差しをして言った。
「…で、どうするのッ!?かかって来るのッ、来ないのッ!?」
雷太がとにかく威勢を張る。そんな雷太を見て、トランザは、
「…フン…!」
と鼻で笑った。
「…随分、威勢を張るのはいいが、…貴様、震えておるぞ?」
「…ッ!!」
雷太が息を呑む。
雷太の太い足が膝からガクガクと震えている。
「…それに何だ、そのへっぴり腰は?」
雷太の腰が僅かに後方へ引いている。
「…フッ!…アハハハハハハ…!!」
トランザが大声で笑い、雷太を侮蔑するような視線を送る。
「これは滑稽だ!そんな奴が俺を倒そうと乗り込んで来るとは!」
「…うう…ッ…!!」
雷太の両拳がブルブルと震える。
「…うるさああああいッッッッ!!!!」
次の瞬間、雷太が駆け出していた。
「…僕だって…ッ!!」
残された香のためにも、アコのためにも、自分が頑張るしかなかった。
「…僕だってええええッッッッ!!!!…やれるんだああああッッッッ!!!!」
そう叫びながらトランザへ右拳を振るった。
「フンッ!!」
それを軽々と避けるトランザ。
「オラオラオラアアアアッッッッ!!!!」
何度も、何度も、必死に両拳をトランザへ向かって突き出す。最初は余裕でそれを避けていたトランザだったが、その表情が徐々に険しくなって行った。その途端、
「ええいッ、鬱陶しい奴めッ!!」
と鬼の形相で叫んだかと思うと、左腕に装着したキーパッド・メタルトランサーを操作した。
ピッ!!
軽快な音が聞こえたその瞬間、
「うわッ!?わわわッ!?」
と雷太が素っ頓狂な声を上げながら、フワフワと宙に浮き上がり始めたのである。
「ふんッ!!」
その時、トランザがボルトランザの刃先を雷太の方へ向けた。するとそこから光の刃が飛び出し、雷太のその体へと突き刺さった。
ブスブスッ!!
鈍い音と同時に、
バアアアアンンンンッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!
と言う爆発音が響いた。
「ああッ!!ああッ!!うああああッッッッ!!!!」
光沢のある白と黄色を基調とした雷太のバードニックスーツがスパークし、爆発する。そして、雷太は地面に叩き付けられた。
「…ま、…まだまだああああッッッッ!!!!」
それでも雷太は立ち上がると、トランザへ突進して行く。
「うおおおおおおッッッッッッ!!!!!!」
「なッ、何ッ!?」
トランザが驚き、慌てるのも無理はない。
「うおおおおおおッッッッッッ!!!!!!」
雷太は何と、トランザを軽々と持ち上げたのだ。そして、
「うおりゃああああッッッッ!!!!」
とまるで投げ技を掛けるように、トランザを投げ飛ばしたのだ。
「うおおおおッッッッ!!??」
これにはトランザも驚き、声を上げた。そして、ズザザッ、と言う音と共に背後に跪いたのだった。
「…おッ、…おのれええええッッッッ!!!!」
トランザの目が血走る。
「行けッ、バイオ次元獣・ホークコンドルッ!!」
トランザがそう言った時だった。
暗闇の中から黒い物体が物凄い勢いで飛び出したと思った次の瞬間、その者は雷太の体をがっしりと掴んだ。
「…んなッ!?」
雷太が驚く間もなく、雷太の体が再び宙を舞い始めたのである。
「うわああああッッッッ!!!!」
物凄いスピードでグルグルと辺りを回る、大きく黒い翼。その視線は鋭く、また爪が恐ろしいほどに鋭く尖っていた。
「放せッ!!放せええええッッッッ!!!!」
雷太が体をバタバタと暴れさせるが、ホークコンドルの爪は雷太の体をがっしりと掴んだまま、ビクともしない。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
その時だった。トランザの頭よりも遥か上空をグルグルと旋回していたホークコンドルがカクンと角度を変えたかと思うと、床目がけて一気に急降下し始めたのだ。
「うわああああああッッッッッッ!!!!!!」
あっと言う間に地面に背中を激しく擦り付けられる雷太。
パアアアアンンンンッッッッ!!!!パアアアアンンンンッッッッ!!!!
その摩擦熱によって、雷太のバードニックスーツの背面がスパークする。
「やッ、止めろおおおおッッッッ!!!!」
雷太が悲鳴を上げるものの、ホークコンドルはかなりのスピードで雷太を引き摺り続ける。
「うわああああああッッッッッッ!!!!!!」
そして、それが長時間続いた時、ホークコンドルはようやく雷太の体を放した。その反動で、雷太の体がゴロゴロと床に転がり、真っ白な靄がその風圧で宙に舞った。
「…う…ッ、…うう…ッ!!」
体中が痛い。意識が少し朦朧とする。
(…やっぱり、…僕の力じゃ…)
「何をぼんやりしている、イエローオウル?まだ終わったわけではないぞ?」
その時、トランザの冷たい声が聞こえた。
「…ッ!?」
そして、トランザの方を向いた雷太は、あまりの恐怖に言葉を失った。