ちぎれた翼V 第13話

 

「…あ…。…え…?」

 スカイキャンプの自室のベッドの上で布団を被り、ガタガタと震えていた雷太。そんな雷太の目の前に、目をギラギラと野獣のように輝かせたトランザがいた。

「…さぁ、…イエローオウル…。…お前を迎えに来てやったぞ…!!

 そして、トランザがそう言った瞬間、辺り一面、眩しい光に包まれた。

 そんな眩い光の中で、雷太は自分の体がフワフワと浮いているような感覚がしていたのだ。

「…ん?」

 と、その時だった。グンと体が下へ引っ張られるような感覚がしたと思った次の瞬間、雷太の体が急降下するような感覚にお襲われた。

「…え?…え?」

 辺り一面眩い光に包まれているので、本当に急降下しているのかも分からない。だが、体の感覚はまさにそれで、文字通り、真っ逆さまに落ちて行っていると言って良かった。

「…うわ…、…うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 雷太の巨体が頭から落ちて行く。

(…こ、…今度はどこへ…ッ!?

 そう思った時だった。

 クルクルと両手両足に何かが巻き付いた感覚がした瞬間、雷太の体がグンと再び引っ張られ、落下して行く感覚が消えた。と同時に、体を下へ引っ張られる全ての感覚が両手首に伝わり、グキッと言う音を立てた。

「…い、…痛…って…ええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!

 鈍い痛みが両手首を襲う。だがその時、眩しい光が消え、あの忌まわしい薄暗さと、ゴウウウン、ゴウウウンと言う地の底から響いて来るような不気味な音が聞こえて来た。

「…く…ッ、…うう…ッ!?

 その時、雷太は自身のあり得ない光景に目を疑った。

「…ぼッ、…僕…ッ、…クロスチェンジしている…?」

 いつの間にか、雷太の体はイエローオウルのバードニックスーツに包まれていた。そして、

「…な、何だッ、これッ!?

 と声を上げる。

 雷太の体。光沢のある鮮やかな白と黄色のバードニックスーツに覆われた、むっちりとしたその体が宙を舞っている。いや、宙にX字に拘束されていたのだ。そんな雷太の頭部には、フクロウをあしらった、あるべきはずのマスクが存在していなかった。

 そして。

 …コツ、…コツ…。

 と言う音が聞こえて来た時、

「…あ…あ…あ…あ…!!

 と雷太の声が震え始めた。

「…ククク…!!

 目の前には、見たくもない、思い出したくもない男がニヤニヤと笑みを浮かべて立っていた。バイラムの幹部・トランザ。

「…仲間との別れは済んだか、イエローオウル…?」

「…え?」

 きょとんとした表情を浮かべた雷太が気に入らなかったのか、トランザがムッとした表情を浮かべ、

「やれやれ。せっかく束の間の平和を与えてやったと言うのに、貴様は結局、何にも出来なかったのか?」

 と言った。

「貴様も我がコレクションに加わるために、ホワイトスワンやブルースワローとの別れを言わせてやろうと思ったこの俺の親心が分からぬとは…!」

「…いや、…香さんとアコさんだけじゃないッ!!

 突然、雷太が震える声でそう言った。

「…あっちには、…スカイキャンプには、…凱だっている…ッ!!

 その言葉に、トランザがきょとんとした。

「…なッ、…何だよッ!?

 雷太が顔を真っ赤にしてトランザを睨み付ける。

「…プッ!!…ククク…!!…アーッハッハッハッハ…!!

 と突然、大声で笑い始めた。

「…こ、…これはいい…ッ!!…俺が作り出してやった世界で、…仲間にも別れの言葉を告げられぬとは…!!

「…お前が、…作り出した、…世界…?」

 目をぱちくりさせる雷太。するとトランザはゼエゼエと荒い呼吸をしながら、

「良く言うではないか。夢枕に立つ、とな!」

 と言い、意地悪い瞳を雷太へ向けた。そして、

「あの世界は、ホワイトスワンの夢の世界だ」

 と言った。

「あの女、かなりしたたかだな。いや、魔性の女と言ってもいいかもしれん」

 と言うと、うーんと考え込むような仕草を見せた。

「…夢の中に、…ブルースワロー。…まぁ、それは女同士だから、夢の中にいても不思議ではなかろう。…だが…!」

 そう言うとトランザはクックと笑う。

「…その夢の中に、…ブラックコンドルまでがいたとは…!!…あの女、…まだまだブラックコンドルのことを愛しているのか?別れたと聞いているが?…おっと!」

 いかにもわざとらしく、目の前の雷太のことを忘れていたかのように言うと、

「その夢の中に、お前も入れてやったと言うわけだよ!」

 と言った。

「…何…だって…!?

 やはり、トランザと言う男は最低な発想の持ち主だ、雷太はそう思っていた。

「…か、…香さんのことを悪く言うなッ!!

 思わずムキになって叫んでいた。するとトランザは呆気に取られたような表情をしていたが、

「…プッ!!…ククク…!!…アーッハッハッハッハ…!!

 と再び大声で笑い始めたのだ。

「…なッ、…何がおかしい…ッ!?

 雷太が顔を真っ赤にして叫ぶ。

「…こ、…こいつはいい…ッ!!…お前達ジェットマンとは、…絆もへったくれもあったものではないのだな!…三角、…いや、四角関係がそこにはあるのかッ!?

「…ぐ…、…うう…ッ!!

 ギュッと唇を噛む。その力が強すぎたのか、うっすらと血が滲んだ。

「…そんなことも知らぬ俺だと思ったか…!」

 トランザがフフンと笑う。いや、正確には雷太を見下していた。

「正確には俺がまだトランザになる前、トランだった頃にブラックコンドルを処刑した。その際にヤツに聞き出したことだ!」

 そう言うとトランザは、

「まぁ、そんなことはどうでもいい!」

 と言い、

「貴様にも俺のコレクションになってもらうのだからな!」

 と、その目をギラリと輝かせた。

「…う…、…あぁぁ…!!

 その目を見た時、雷太が恐怖に震えた。だがそれと同時に、

 ドクンッ!!

 と心臓が大きく高鳴った。

「…あ…、…あぁぁ…!!

 体が火照る。体の奥底から何やら熱いものが込み上げて来るのが分かった。そして。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 雷太の声が震えている。

「…ん?」

 そんな雷太を見るなり、トランザは、

「…プッ!!…ククク…!!…アーッハッハッハッハ…!!

 と、またもや吹き出し、大声で笑い始めた。

「…き、…貴様…ッ!!…強がっているわりには、…体はやはり素直なようだな…!」

 雷太のむっちりとした2本の足の付け根。雷太の男としての象徴であるペニス。それが今、黄色の競泳用水着のようなデザインがあしらわれたそこで大きく勃起し、目の前にいるトランザに突き出すようにして大きなテントを張っていたのだった。

 

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