ちぎれた翼V 第17話
シュウウウウ…。シュウウウウ…。
真横一文字に切り刻まれた、雷太のイエローオウルのバードニックスーツ。
「…あ…あ…あ…、…あぁぁ…!!」
雷太は最早、戦意を失っていた。そして、
「…や、…止めろ…!!…もう、…本当に、…止めて…くれ…!!」
と、震える声で目の前にいる敵に向かって懇願する。と同時に、雷太の両手両足を拘束している鎖がカタカタと小刻みに震え、乾いた音を立てた。
「…ククク…!!」
そこには、銀色の逆立てた髪、紫色の唇をした男・帝王トランザと、無表情の美青年・ホークコンドルが立っていた。いずれも自分の力に比べたら遥かに高い戦闘力を持っていた。いや、戦闘力だけではなく、狡猾さも持ちえていたのだ。
「…さぁ、…次はどうする、ホークコンドル?」
ニヤニヤと笑いながら、トランザがホークコンドルに目配せする。するとホークコンドルは無言のまま雷太に近付くと、雷太の腰へと手を回した。そして、
「…美味そうな体だ…!」
と一言だけ言うと、あの蛇のようにおぞましい形をした舌を出し、真横一文字に引き裂かれた雷太のバードニックスーツの胸の部分に近付けた。
「…や、…止めろ…ぉ…ッ!!」
悪寒にブルブルと体を震わせる雷太が思わず身を引こうとする。その時、引き裂かれたバードニックスーツから見え隠れしている、雷太のむっちりとした胸とそこにある2つの淡いピンク色の2つの突起がプルプルと揺れた。だが、そんなささやかな抵抗もほんの一過性に過ぎないものであることは、雷太にも分かっていた。
…ピチャ…ッ!!
雷太の右胸のピンク色の突起にホークコンドルの蛇の舌が触れた途端、くすぐったいような音と同時に、
「はうッ!?」
と、雷太が素っ頓狂な声を上げた。
「フハハハハ…ッッッッ!!!!」
その時、トランザが火が付いたように笑い始めた。
「…きッ、…貴様…ッ!!…やはり、貴様はレッドホークやブラックコンドルとは違う」
…ピチャ…ッ!!…ピチャッ!!
その間にも、ホークコンドルは雷太の胸の突起への愛撫を止めない。くすぐったいような感覚が雷太を襲い、
「…ん…ッ!!…んん…ッ!!」
と雷太の口から吐息が漏れる。
「レッドホークやブラックコンドルは、俺に同じような屈辱を受けても決して怯まなかった。懸命に堪えようと、懸命にどこかで刃向かおうとしていたぞ!だが、貴様はどうだ?ホークコンドルに同じように辱めを受けても、貴様はそれを甘受しているではないか!」
そう言った時、トランザの目がギラリと光った。
「…貴様はただのイヌだ…!…ジェットマンに選ばれたことも、何らかの間違いだったのだろう。お前達人間が作り上げたコンピューターでさえ、間違いを起こすことはあるのだ。それが貴様に起こっただけのことだ!」
「…だッ、…黙れええええッッッッ!!!!」
その時、雷太は思わず怒鳴り声を上げていた。
「…僕が…ッ!!…僕がジェットマンに選ばれたのは、間違いだったのかもしれない…。…でもッ、…こんな僕でもッ、竜や凱と一緒にジェットマンになれたのは、…僕の誇りなんだッ!!…お前にどうこう言われたくないッ!!…言われてたまるかああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そう叫んだ時、雷太の目からはぽろぽろと涙が溢れていた。また、激しく動いたせいか、両手を拘束している鎖がジャラジャラと音を立てた。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
ある意味、雷太の意地でもあった。竜、凱と言う2トップを失い、女性と言う香とアコを守るのは自分しかいない。ましてや、香は竜の想い人であり、凱のかつての彼女でもあった。そして、雷太自身、密かに想いを寄せていたのも事実だった。
そんな雷太を、トランザは呆気に取られて見ていたが、
「…フンッ!」
と鼻で笑ったかと思うと、その目がギラリと光った。
「ならば、お望み通り、貴様をイヌにしてやろうッ!!」
その目は明らかに怒っていた。
「貴様も、レッドホークも、ブラックコンドルも、俺の予想外のことをしてくれる…!!…ゴミはゴミらしくしていればいいのだッ!!」
そう言うとトランザは、
「やれッ、ホークコンドルッ!!そいつを丸焼きにするのだッ!!」
と言った。
その時だった。
「…断る…!」
突然の低い声に、辺りがしんと静まり返った。
「…な…、…な…!!」
トランザがわなわなと震えている。そして、
「…きッ、…貴様ああああッッッッ!!!!…こッ、…この俺にッ、意見する気かああああッッッッ!!!!??」
と、ボルトランザを抜いたのだ。
だが、ホークコンドルはじっとトランザを見つめたまま、微動だにしない。
「…ぃぃぃぃいいいいやああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
怒りの捌け口を失ったトランザがボルトランザをホークコンドルに向かって振り下ろす。その時、ホークコンドルの右手が動いた。
バシィィィィッッッッ!!!!!!!!
その時、ホークコンドルの右手はボルトランザをしっかりと受け止めていた。と次の瞬間、
「…慌てるな、トランザ…!」
とホークコンドルがニヤリと笑ったのである。
「…ッ!?」
その顔にトランザが呆然とする。その一方で、
「…あ…あ…あ…あ…!!」
と、雷太も短い声を上げながら、ガクガクとそのむっちりとした太腿を震わせていた。静かに立っているものの、ニヤニヤと笑っているホークコンドルの体から、何とも言えないオーラが漂っていたからだ。
「…確かに、貴様の言う通り、こいつは何もかもをズタズタにする必要がある。だが、貴様のように肉体をもズタズタにし、文字通り何もかもをズタズタにするのは、オレは好きではないんでね…。…それよりも…」
その時、ホークコンドルが雷太の顎をクイッと持ち上げた。
「…美味そうな体だな、…イエローオウル…」
妖しい笑みを浮かべながら、真っ赤な舌を出して口を舐め回す。
「…ひぃ…ッ!!」
その光景を見ただけで、雷太は小さく悲鳴を上げた。
「…おのれええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そんなホークコンドルの背後でトランザが大声で叫んだ。だが、そんなトランザをちらりと一瞥したホークコンドルは、
「…貴様は、レッドホークとブラックコンドルを慰み物にしておけばいいだろう…?」
と言ったかと思うと、
「…オレは、…このイエローオウルを、…オレのイヌにする…!」
と言った。
その目には雷太に有無を言わさない、激しい憎悪の感情が秘められていた。