座敷わらしの悪戯 第15話
(…うっわぁ…!)
表面上は平静を装ってはいるものの、ニンジャブルー・サイゾウの心の中は穏やかではなかった。
「…消えてしまう前に、…お前の願い、…叶えてあげたかったん…だけど…な…」
能力を使い過ぎ、体が消えそうになっていた座敷わらしが涙ながらに言った言葉が、サイゾウと、そして、目の前のソファにどっかりと腰掛け、困ったような表情をして床を見つめているニンジャレッド・サスケに重く伸し掛かっていた。
(…な、…何とかしなきゃ…!)
視線が忙しなくきょときょとと動く。
「…あ、…あの…さ、…サスケ…」
平静を装いたいのに、それが出来ない自分が情けない。全ては、サイゾウの道ならぬ恋に端を発しているのだから。
「…?」
その声に、サスケの視線が動いたのが分かった。サイゾウは無理に笑顔を作ると、
「…だッ、…大丈夫だってぇッ、サスケぇッ!…オ、…オレは何ともないから!…サ、サスケの傍にいられるんなら、それで十分だし…さ…!」
と言った。その時、サスケの眉がピクリと動いたのに、サイゾウは気付いた。
「…あ…」
サスケがじっとサイゾウを見つめている。そして、
「…お前は、…それでいいのか?」
と聞いて来た。
「…」
「…お前のオレへの感情は、そんなもんだったのか…?」
「…んなわけ、…ないだろ…?」
みるみるうちに目にいっぱい涙を溜めたサイゾウ。と、次の瞬間、サイゾウは顔を真っ赤にして、
「そんなわけないでしょッ!?オレのお前への気持ちは本当だよッ!!オレはッ、サスケのことが恋愛感情で大好きなんだよッ!!サスケが妖怪と戦っている姿を見て、女の子みたいにカッコいいって目をハートにしていたのは本当だよッ!!そんなサスケの姿を思い浮かべながら、イケないことだってしてるわよッ!!…本当はッ、…お前にッ、…サスケにッ、犯されたいとだって思ってるよオオオオッッッッ!!!!」
涙をぼろぼろと零しながら、一気にまくし立てるサイゾウ。はぁはぁと呼吸を荒げながら。だが、サスケは動じることなく、サイゾウをじっと見上げるだけだ。すると、サイゾウは寂しそうに笑って、
「…でも…、…サスケは、…オレにはそんな感情を持っていないんだろう?」
と尋ねる。するとサスケは、
「…ああ…」
と、短く答えた。その時、サイゾウは一瞬、固まったような素振りを見せたが、
「…だよ…ね…」
と言うと、
「…ちょっと、…出かけて…来るわ…」
と言って、サスケを残し、部屋を出て行った。
「…そこに、…いるんだろ?」
サイゾウの足音が聞こえなくなった時、顔を上げたサスケが声を発した。
「…バレてた…?」
そこからスッと姿を現したのは、ぐったりとしていたはずの座敷わらしだった。
「いつから?」
座敷わらしがサスケに問い掛ける。すると、サスケはフフッと笑って、
「オレはニンジャレッドなんだぜ?サイゾウは気付いてなかったようだが、サイゾウが声を荒げてた時に、お前がここに入って来たのは分かったぜ?」
と言った。
「それよりお前、具合は大丈夫なのか?」
じっと座敷わらしを見つめたまま、サスケが問い掛ける。すると座敷わらしはニッコリと笑って、
「さっきは、体力を一気に消耗し過ぎたからぶっ倒れたんだよ。でも、少し休んだから大丈夫だ」
と言った。だがすぐに、
「…でも、…寿命が近いのは、本当のことだけどね…」
と、寂しそうに笑った。
「…なぁ、…座敷わらし…」
不意にサスケが真顔に戻ったかと思うと、座敷わらしを呼んだ。
「うん?」
「…オレは、…どうしたらいい?」
すると、座敷わらしはニヤリと悪戯っぽく笑い、
「どうしたもこうしたも…。…だってお前、サイゾウには全く興味ないんだろう?」
と尋ねた。するとサスケは、
「当たり前だろうッ!?あいつだって、オレと同じ男なんだぜッ!?」
と言った。
「男が男を好きになってどうすんだよッ!?男同士で体を重ねるなんて、…考えただけでゾッとするぜ…ッ!!」
顔を真っ赤にして言うサスケ。だが、座敷わらしは更に悪戯っぽい笑みを浮かべて、
「そのわりには、サイゾウに犯されてた時、ビンビンにおっ勃たせてたじゃねぇかよ…!」
と言った。するとサスケは、
「…そッ、…それはッ、お前が変な魔法をかけたからだろうッ!?」
と声を荒げた。だが、座敷わらしはニコニコと笑っているだけだ。
「…なッ、…何だよッ!?」
何も言わず、ただニコニコと笑っている座敷わらしを不審に思い、思わず問い掛けていた。
「…本当にそう思ってる…?」
「あん?」
「あの時、オレが本当に、お前のオチンチンに魔法をかけたと思ってる?」
「どう言う意味だよッ!?」
すると、座敷わらしは大きく溜め息を吐いたかと思うとサスケに近寄って来た。そして、右手をさっと伸ばしたのである。その瞬間、
「んぎゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、サスケが悲鳴を上げていた。
「…て…、…て…ん…め…え…ッ!!」
サスケは顔を真っ赤にして座敷わらしを睨み付ける。座敷わらしの右手は、サスケのジーパンに包まれた2本の足の付け根部分に息づく、サスケの男としての象徴であるペニスとその下に息づく2つの球体を思い切り握り締めていたのだ。その時、座敷わらしはサスケをバカにしたような表情を見せると、
「鈍いねぇ、お前も…!」
と言ったのだ。
「…なッ、…何が…ッ!!」
サスケは顔を真っ赤にし、目尻に涙を浮かべている。すると座敷わらしは、
「…オレは、そんな魔法なんかかけていないよ…!」
と言ったのだ。すると、真っ赤になっていたサスケの顔がきょとんとした表情になり、
「…え?」
と聞き返した。
「だぁかぁらぁ!」
座敷わらしはそう言いながら、サスケの股間から手を離すと、
「んん…ッ!!」
と、サスケがモゾモゾと腰を動かしながら、そこに息づく自身のペニスを撫でるようにした。
「オレは、お前が感じてしまうような魔法はかけていないって言ったんだよ!」
「…じゃ、…じゃあ、オレは何であの時、勃ったんだよッ!?しかもッ、ニンジャレッドのスーツを突き破ったんだぜッ!?」
サスケが尋ねると、座敷わらしはフフンと笑って、
「オレが何もしていないとしたら、後はお前がそのくらい興奮していたってことだろう?」
と言うと、
「…本当は、サイゾウに犯されたかったんじゃねえの?」
と悪戯っぽく言ったのだ。その言葉にサスケの顔が瞬時に真っ赤になり、
「…だッ、…だからッ、そんなんじゃねえって!」
と再び声を荒げ、座敷わらしを小突くような真似をする。
「んま!いずれにしてもだ!」
ひょいとサスケをかわした座敷わらしはニッコリと微笑み、
「…サスケ。…自分の気持ちに素直になってみろよ」
と言って、スゥッと姿を消したのだった。