座敷わらしの悪戯 第16話

 

 誰もいなくなり、しんと静まり返った部屋の中で、サスケは立ち尽くしていた。

「自分の気持ちに素直になってみろよ」

 そう言ってニッコリと微笑んでいた座敷わらしの言葉が何度も頭の中をリフレインする。

「(…オレの、…気持ちに素直になる…?)…はッ!」

 自虐的に笑い、さっきまで座っていたソファにどっかりと腰を埋めた。

「…オレが、…サイゾウに犯されたいだって…?…何をバカな…!」

 そう言いながらも、サスケの視線はきょときょとと床の上を行ったり来たりしていた。

「…アイツは、…サイゾウは男だぞッ!?…確かに、他の連中に比べたら一番付き合いも長いし、弟分に見えることだってある。…けど、そこまでだ!それ以上の感情もない。それに、アイツに犯されたいなんて願望も全くない!」

 そう言うと、サスケは頭をブンブンと左右に振った。

(…だけど…)

 その時、サスケはまた1つ、座敷わらしの言葉を思い出した。

「そのわりには、サイゾウに犯されてた時、ビンビンにおっ勃たせてたじゃねぇかよ…!」

 そうなのだ。サイゾウに自分のプライドとも言えるべき、男としての象徴であるペニスを刺激され、身悶えしていた時、サスケは確かに勃起していたのだ。いや、勃起していただけじゃない。ニンジャレッドの光沢のある鮮やかな赤色のスーツをその勃起力で突き破り、体と垂直に勃たせていたのだ。

「…でッ、…でも、それは座敷わらしの悪戯じゃなかったのかよッ!?

 顔が熱い。自分でも真っ赤になっているのが分かるほどだった。座敷わらしはそれを「魔法」と言ったが、「魔法」なんてきれいな言葉では片付けたくなかった。それゆえに、サスケは「悪戯」と言う言葉を選んだ。

 信じられないと言う表情をしていた時、座敷わらしはニコニコとしながら言った。

「オレは、そんな魔法なんかかけていないよ…!」

 そう言った時の座敷わらしの顔が、やけに純粋に見えた。それまでの悪戯っぽい笑みはその顔からは消えていた。本当に優しい、まるで仏様のような穏やかな笑みをしていたことを思い出した。

「…じゃあ、…アイツは…」

 …ドクン…、…ドクン…。

 心臓がドキドキと高鳴って来る。真っ赤になった顔から冷や汗のような、脂汗のような、嫌な汗が流れ始めた。

「…アイツが、…座敷わらしが何もしていないのなら…」

 ドクン、ドクン…。

「…オ、…オレは…。…オレは…!」

 ドクンッ!

「…あ…ッ!?

 その時、サスケの視線は信じられない光景を捉えていた。

「…ウソ…だろ…!?

 声が震える。

「…オ、…オレ…、…勃起…してる…!?

 そうなのだ。

 サスケのジーパンに包まれた2本の足の付け根部分に息づく、サスケの男としての象徴であるペニスが大きく勃ち上がり、巨大なテントを張っていたのだ。

「…そ、…そ…ん…な…!?

 それをそっと右手で包み込んでみる。そして、目を静かに閉じてみた。

 

 ジュボジュボジュボジュボッッッッ!!!!ジュボジュボジュボジュボッッッッ!!!!

 ニンジャブルーにドロンチェンジしたサイゾウの顔が自分のそれに近付き、一気に口の中に頬張った。そして、淫猥な音を立てながら一心不乱に頭を上下に動かし続け、口の中に含まれたサスケのペニスを刺激し続けたのを思い返してみる。

 あの時。

「…止めろ…オオオオッッッッ!!!!…サイゾウううううッッッッ!!!!

 気持ちはサイゾウに懸命に抗っているつもりだった。

「…たッ、…頼む…から…ッ!!…くああ…ッッッッ!!!!

 だが、自分の気持ちとは裏腹に、体は床に伸びたまま、バタバタと暴れることもなく、指一本動かすことすらしなかった。

「…そ…ッ、…そんなに…ッ、…されたら…、…ああああ…ッッッッ!!!!

 いや、それだけじゃない。

 自分の大きく勃起し、熱く、硬くなっているペニスにねっとりと絡み付くサイゾウの舌が、口が絶妙なタッチでそれに快感を与えて来るのも分かっていた。

「…く…ふ…うう…ッッッッ!!!!

 そして、体の奥底からはじんじんとした疼きと一緒に、何か熱いものが込み上げて来るのも分かっていた。

「…ぁぁぁぁ…ッッッッ!!!!

 その時、目が熱くなり、涙が零れたのが分かった。いや、それだけではなく、心の奥底に、ある感情が湧き上がっていたのも分かっていた。

(…き、…気持ち…いい…!)

 だからこそ、

「…だ、…ダメ…だ…ッ!!

 と言いながら、腰を無意識にガクガクと上下に小刻みに振っていた。

「…ぁぁぁぁああああッッッッ!!!!…イッ、…イッ…ち…まう…!!

 体の奥底から込み上げて来るものが自分のペニスを伝って上って来るのが分かった。

「…ぁぁぁぁああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 サスケの腰がビクビクと上下に動き始め、目をギュッと閉じた。

「…イクッ!!イクッ!!イクイクイクイクッッッッ!!!!…ち…き…しょおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 

「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 はっと我に返った時、自分の醜態に思わず悲鳴を上げていた。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 サスケのがっしりとした2本の足は今、薄汚れたジーパンに包まれてはいなかった。いや、それだけではない。体も、普段着ているシャツではなかった。光沢のある、鮮やかな赤色の、体にいつも以上にぴったりと密着するようにしているスーツ。そして、がっしりとした2本の足の中心部分に息づく、サスケの男としての象徴であるペニスはその存在感を表すかのように大きく、太く、真っ直ぐに臍へ向かって大きく勃起し、ベルトを窮屈そうに押し上げていたのである。

 サスケは今、無意識の中でニンジャレッドにドロンチェンジしていたのだった。もちろん、彼の顔を覆うマスクはしてはいない。

 その時だった。

「…ただい…ま…」

 いつもに比べてすっかり元気を失っているサイゾウが、しょんぼりとしながら帰って来た。そして、目の前で繰り広げられている光景を見た瞬間、言葉を失った。いや、言葉を失っただけではない。顔までも真っ赤にし始めたのだ。

「…サ、…サスケぇ…ッ!?

「…サイゾウ…」

 ポツリと言うサスケ。

「…オレを、…犯せよ…!」

「…は?」

 当然のことながら、サイゾウは聞き返す。するとサスケは、

「…いいよ。…お前になら…」

 と、部屋の真ん中で、両足を肩幅よりやや広めに広げて立っていたのだった。

「…オレ、…自分の気持ちを確かめてみたいんだ…!」

 

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