Mr.MOONLIGHT 第15話
「貴虎サマッ!!しっかりしてッ!!貴虎サマああああッッッッ!!!!」
柄にもなく取り乱していたワテクシ。地面にうつ伏せに倒れ込んだメロンの君の細マッチョな体をゆっさゆっさと揺する。
仮面ライダーセイヴァー・狗道供界に操られ、強烈なパンチを繰り出して来た仮面ライダーナックルに変身したザック。そんなワテクシを庇って、メロンの君・仮面ライダー斬月・真に変身した貴虎サマが大怪我を負った。
「…ワテクシは…!…ワテクシは何てことを…!!」
「鳳蓮さんッ!!」
その時、物陰から舞ちゃんが飛び出して来た。そして、
「落ち着いてッ!!呉島さんなら大丈夫…」
と言いかけた時だった。
「アンタみたいな女の子に何が分かるって言うのよッ!!…メロンの君は…ッ、…メロンの君はワテクシを庇って、…こんな…酷い怪我を…!!」
思わず怒鳴っていた。そんなワテクシを舞ちゃんは驚いたように見つめている。
「…鳳…蓮…さん…?」
「おい、おっさんッ!!舞に八つ当たってどうするんだよッ!?」
水瓶座の男の子・仮面ライダー鎧武・オレンジアームズに変身している葛葉紘汰がズカズカとやって来ると、ワテクシの仮面ライダーブラーボの刺々しい装甲をグッと掴んだ。
「…止めてよ…!!」
仮面ライダー黒影・真に変身しているペコがふらふらとザックに歩み寄る。その声が震えている。ああ、きっと泣いているんだわ…。
「…ねぇ、…ザックぅ…。…もう、…こんなことは止めようよ…!!…僕の、…僕の大好きな、いつものザックに戻ってよおおおおッッッッ!!!!」
そう言って駆け出して行き、ザックの体にしっかりと抱き付いていた。
その時だった。
「…ッ!!」
ザックの体がビクンと硬直したかと思うと、
「…ペ…、…コ…?」
と声を上げた。でもすぐに、
「…おお…!!…うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と唸り声を上げたかと思うと、大きな拳・ナックルボンバーを思い切り振り上げた。
「危ないッ!!ペコおおおおッッッッ!!!!」
水瓶座の男の子の叫び声が聞こえる。同時に、
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、ザックがナックルボンバーをペコへ向かって振り下ろそうとする。更に、
「ザックううううううううッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言うペコの叫び声と、
「バナナ・オーレッ!!」
と言うけたたましい音声。
「戒斗さんッ!!」
メロンの君の弟君・仮面ライダー龍玄に変身している光実きゅんが驚いて声を上げる。
バナーヌ・仮面ライダーバロンに変身した駆紋戒斗がバナスピアーに闘気を送り込んでいる。そして一言、
「…行くぞ…!!」
と低い声で言ったかと思うと、
「はぁぁぁぁああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う叫び声と一緒に、バナスピアーをザックに向かって一気に振り下ろした。
ズガアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンンンンンンンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
と言う激しい衝撃音と共に、
「うぐぅおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言うザックの咆哮。
「ここは一旦、引くぞッ!!」
バナーヌがそう言った時、
「なッ、何言ってるんですかッ、戒斗さんッ!?」
と、ペコが慌ててバナーヌを見上げた。
「ザックがッ!!ザックがまだ…」
「今の状況じゃ、ザックを元に戻すことなんて出来ないわ」
仮面ライダーマリカに変身している湊耀子が低い声で言う。その双眼のバイザーの奥に見える、耀子の厳しい眼差し。
「こんなに動揺を誘われて、私達が勝てる見込みなんてない。それこそ、狗道供界の思うツボ」
その時、水瓶座の男の子がバナーヌの元へ駆け寄って来た。そして、
「戒斗の言う通りだ。今は一旦、ここを引くしかなさそうだな!」
と言うと、
「…ほう…。…貴様と意見が合うとはな…」
と言い、仮面ライダーバロンのマスクの中でニヤリと笑った。すると水瓶座の男の子は、
「時と場合によらあッ!!みんなッ、ずらかるぞッ!!」
と言い、一目散に駆け出した。
「あ!!ちょ、ちょっと待ってッ!!」
何かを思い出したかのように、仮面ライダーグリドンに変身している城乃内が叫んだかと思うと、遠くで倒れて気を失っている仮面ライダー黒影・初瀬亮二を抱きかかえ、それから逃げ出した。
その時、ザックがピクリと動いた。だがすぐに、
「今は放っておけ」
と言う供界の声。
「…奴等はまた来る…」
仮面ライダーセイヴァーの変身を解除し、普段の黒ずくめの姿で現れた供界。
「…お前と言う人質がいる限り、…な…!!」
その口元が不気味に歪んだ。
ワテクシ達は、チーム鎧武の拠点であるガレージへと戻って来た。その奥の方のベッドに横たえられているメロンの君。変身を解除し、その細マッチョの体に巻き付けられた真っ白な包帯が痛々しい。
「一応、出来ることは全てしたわ」
湊がそう言った時、
「湊さんッ!!」
と、光実きゅんが湊を呼んだ。
「兄さんの手当てをしてくれて、ありがとうございます」
恭しく頭を下げる光実きゅん。でも、湊は厳しい目付きのまま、無言で手を洗いに行った。
「それにしてもこっぴどくやられたもんねぇ!いやぁ、死ななかっただけラッキーだったねぇ…!」
仮面ライダーデュークに変身する戦極凌馬がカラカラと笑う。
「…アンタ…!!」
ブルブルと拳が震える。その瞬間、ワテクシは物凄い勢いで椅子から立ち上がり、
「元はと言えばッ!!こんな騒動を起こしたきっかけの張本人はアンタでしょうがああああッッッッ!!!!」
と怒鳴り、凌馬に殴り掛かろうとした。
「わああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!おッ、凰蓮さああああんんんんッッッッ!!!!落ち着いてッ!!」
「お、お前も余計なこと言うなよおおおおッッッッ!!!!」
城乃内と水瓶座の男の子がワテクシを必死に抱き止め、水瓶座の男の子は戦極凌馬にめんどくさそうな視線を送る。すると戦極凌馬は、
「おお、怖い怖い。すぐにカッとなるおっさんは嫌だねぇ…!」
と言い、肩をすくめた。
「…ア、…アンタねええええッッッッ!!!!いい加減にしなさいよッッッッ!!!!」
ブルブルと震えても、目の前の凌馬の瞳の奥には勝ち誇ったような笑みが窺えた。
「…はぁぁ…」
一気に気が抜けたワテクシは大きく溜め息を吐くと、どっかりと椅子に腰掛け直した。
「…何もかも、…最悪だわ…!!」
今日の占い、そんなに良くなかったかしら…。ワテクシは顔を両手で覆った。