Mr.MOONLIGHT 第16話
元傭兵なのに、想いを寄せているメロンの君・呉島貴虎サマがワテクシを庇って大怪我を負ってしまった。柄にもなく動揺し、そのことを舞ちゃんに八つ当たりするなんて…。
「…最悪だわ…」
ポツリと呟いてみる。
「鳳蓮さん、元気出して!」
気が付くと、ワテクシの横に舞ちゃんがちょこんと座っていた。その微笑み。まるで、聖母のよう…。
「…舞ちゃん…。…ごめんなさい…。…ワテクシ…」
「いいのよ!全っ然気にしてないからッ!!」
本当に心からの明るい声を出す舞ちゃん。
「人間だもの。好きな人が傷付いて、動揺しない人なんていないわ。実際、アタシが転んだりするだけで動揺する人がここには3人もいるんだから!!」
悪戯っぽく笑った途端、全員の視線が一斉に注がれる。
「…な…ッ!!」
真っ先に顔を真っ赤にしたのは水瓶座の男の子。
「…ぼッ、…僕は…ッ!!」
次にメロンの君の弟君・光実きゅん。
「…お、…女の子がそうなったら、…だッ、…誰でも動揺する…ッ!!」
不器用なのがバナーヌ。すると、
「あ〜ら。じゃあ、私が転んだら、あなたは舞ちゃんの時と同じように動揺してくれるのかしら…?」
と、耀子が意地悪い笑みを浮かべてバナーヌに言う。するとバナーヌは更に顔を真っ赤にし、
「…フンッ!!」
と言い、
「舞は舞。お前はお前だ!」
と言った。その言葉に目を見開いて絶句している耀子。
「フフッ!!」
そんな三者三様の反応を楽しむかのように、舞ちゃんは笑った。
その時だった。
「…ん…」
その声に即座に反応したワテクシ。
「メロンの君イイイイッッッッ!!!!」
周りの誰もが驚くほど物凄いスピードで、ワテクシは貴虎サマが横たわっているベッドへ駆け寄った。
「…ここ…は…?」
目を開け、辺りをキョロキョロと見回している貴虎サマ。
「ここはアタシ達、チーム鎧武が拠点にしているガレージです」
舞ちゃんがニコニコしながら言った。
「ああ…。気が付かれたんですのね。…良かったぁ…!」
目の前の光景が滲んでいる。ああ、ワテクシ、泣いているんですわ…。
「兄さんッ!!」
ワテクシの隣りに、貴虎サマの弟君であらせられる光実きゅんが駆け寄って来た。すると貴虎サマは、
「…光…実…」
と言うと、ニコッと微笑んだ。
(ああッ、メロンの君イイイイッッッッ♥♥♥♥ワテクシにも微笑んでええええッッッッ♥♥♥♥)
と言いたいのを必死に堪え、
「…あ、…あの…。…メロンの…君…。…ごめんなさい…。…ワテクシのせいで…、…こんな…大怪我を…」
と謝罪した。するとメロンの君は、
「気にするな、鳳蓮」
と、あの優しい頬笑みをワテクシに向けて下さった。
ズキューーーーンンンンッッッッ!!!!
その瞬間、ワテクシのハートはメロンの君に撃ち抜かれていたわ。
「仲間じゃないか」
ズッキューーーーーーーーンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
次にメロンの君が放った言葉が、ワテクシのハートを撃ち抜くどころか、大きく抉ったように思えた。
「…な…、…なか…ま…」
するとメロンの君は、
「それ以外に何かあるのか?」
と聞いて来た。
「にッ、兄さんッ!!」
空気を察したのか、光実きゅんが慌ててメロンの君と顔を突き合わせるようにする。でもメロンの君は、
「な、何だッ、光実ッ!?」
と驚いて普段から大きな目を更に大きくさせた。
「…あ、…い、…いいえッ、何でもないんですのよッ!!」
ここはワテクシが責任を持って収めなければならない、そう思い、ワテクシはわざと大きな声を出した。
その時だった。
「…う…!!」
と呻きながら、メロンの君がベッドの上にゆっくりと起き上がろうとした。
「ああッ!!だ、ダメですわッ、まだ寝ていないとッ!!」
ワテクシはそう言いながらメロンの君の体に触れる。
(ああッ♥何て素敵なカ・ラ・ダ♥)
包帯姿は痛々しいけれど、その肉付きとその温もりにウットリしてしまいそうだった。
「…鳳蓮…?…どうした?さっきから様子がおかしいようだが…」
ズッキューーーーーーーーンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
またまたハートを抉られるようなお言葉。
「…あ、…え…、…えっと…。…な、何でもなくてよ!」
顔を引き攣らせながら、ワテクシは精一杯の笑みを浮かべた。
その時だった。
「…う…ん…」
「初瀬ッ!!」
「初瀬ちゃんッ!!」
ワテクシと少し離れたベッドに寝かされていた初瀬亮二君が気が付いたようで、水瓶座の男の子と城乃内が声を上げた。
「大丈夫、初瀬ちゃん?」
城乃内が心配そうに尋ねるも、初瀬は暫くぼんやりとし、
「…あれ?…俺、…どうしたんだっけ…?」
と頭を押さえて言った。
その時だった。
ズカズカとバナーヌが初瀬君の元へ歩み寄ったかと思うと、物凄い形相で初瀬君の胸倉を掴んで持ち上げ、立ち上がらせた。
「おッ、おいッ、戒斗ッ!?」
水瓶座の男の子が慌ててバナーヌの腕を掴む。初瀬君はと言うと、
「…なッ、…何だよッ、…戒斗おッ!!…く、…苦…しい…ッ!!」
と困惑した様子だった。
「…貴様…。…貴様のせいでザックが大変なことになっていることが分からんのかッ!!」
「…い、…いや、…初瀬ちゃんは操られていたから、分かる訳はないと…」
城乃内がそう言った時、バナーヌは物凄い形相で城乃内を睨み付けた。
「ひ、ひいッ!!」
そのあまりの形相に城乃内は目を大きく見開き、物凄い勢いでバナーヌと初瀬君と距離を置いた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
心なしか、初瀬君の体が震えている。するとバナーヌは、
「フンッ!!」
と言ったかと思うと、乱暴に初瀬君を突き離した。そのあまりの衝撃に体をふら付かせ、ドスンと言う音を立ててベッドに座り込んでいた。
そして、ここで人の上げ足を平気で取るのがコイツ。
「おお、怖い怖い。そんなんじゃ、女性にモテないよぉ、駆紋戒斗君?」
戦極凌馬がフンとバナーヌを小馬鹿にしながら言う。その途端、バナーヌの眉間がピクリと動き、
「…何だと…?」
と言うと、その鋭い眼差しを戦極凌馬へと向けた。
「…初瀬だけではなく、ああなった原因を作った一端は貴様にもあると思うのだがな…。…何なら、…貴様の命で決着を付けるか…?」
そう言うバナーヌの手には戦極ドライバーが。
「ああッ、もうッ!!止めろってッ!!」
水瓶座の男の子がめんどくさそうに声を上げた。
「ねぇ、初瀬ちゃん」
そんなバナーヌや戦極凌馬をよそに、城乃内が初瀬君に尋ねる。
「一体、何があったのさ?」
すると初瀬君は、
「…俺、…気が付いたらここにいたんだ…」
と言った。