Mr.MOONLIGHT 第17話
「…俺、…気が付いたらここにいたんだ…」
しかめっ面をし、何が起こっているのか分からないと言った表情を見せる初瀬亮二君。そんな初瀬君の口から出た言葉に、ワテクシ達は沈黙した。
「…お、…お前、ほんとに覚えてないのかよ!?」
城乃内が信じられないと言った表情で、メガネをクイクイと何度も上げ下げしてみせる。
「お前のせいで、俺らが酷でぇ目に遭ったこと、覚えてねえのかよッ!?」
「…俺のせいで…、…酷い目…?」
初瀬君は何のことかさっぱりと言った表情をしている。その時だった。
「おいッ、初瀬ッ!!」
ペコ君が物凄い勢いで初瀬君のもとへ駆け寄ったかと思うと、左手で初瀬君の胸倉を掴んだ。そして、右手で拳を握り、振り上げていた。
「ペコッ!?」
水瓶座の男の子・葛葉紘汰がペコ君の左腕を掴む。
「…お前の…!!…お前のせいで…ッ!!…ザックが…!!…ザックがああああッッッッ!!!!」
振り上げた右拳を初瀬君へ振り下ろそうとした時だった。
「止めてッ!!」
舞ちゃんが飛び込んで来て、ペコ君の右手を掴んだ。
「ねッ、ねえッ、初瀬君ッ!!覚えていることだけでもいいから話してッ!!」
「…覚えて…いること…?」
きょときょとと視線を動かす初瀬君。でもすぐに顔を真っ赤にし、
「…あ…あ…あ…あ…!!」
と震え始めた。
「…俺は…。…俺は…!!」
「初瀬ちゃんッ!?」
初瀬君の体を包むように、その肩を抱く城乃内。
「…俺は…、…力が欲しかったんだ…!!…紘汰や戒斗みたいに強くなりたい、ただ、それだけを願ってた!!…その時、…全身黒ずくめの男が目の前に現れて…、…力が欲しいのなら、試練を受けてみろ…って…。…それで…、…それで…ッ!!」
「…その黒ずくめの男・狗道供界に襲われた…。…痴漢行為を受けた、…と…?…そして、そこからは全く記憶がない、…と…?」
城乃内がそう言うと、
「な、何で知ってるんだよッ!?」
と初瀬が城乃内の胸倉を掴む。だが城乃内も、
「今ッ、ザックがその行為を受けて、操られてるからだろうがッ!!」
と負けじと声を上げた。
「待って下さいッ!!」
その時、大きな声が聞こえ、その場の空気が変わったのが分かった。
「…ラピス…?」
光実きゅんが驚いて見つめている先には、オーバーロードの生き残りであるラピス君が立っていた。
「その人の。初瀬さんの仰っていることは本当です。あいつは。狗道供界が持つ力は他人の意識を完全に奪い、その者を完全に操る能力なんです」
「…な、…なぁ、ラピスぅ。…あいつは一体何者なんだ?オーバーロードなのか?」
水瓶座の男の子が尋ねると、ラピス君はフルフルと首を振り、
「…怨霊です…!」
と言った。
「…怨霊だと…?」
その言葉にバナーヌこと駆紋戒斗がピクリと反応する。そして、
「はッ!そんな子供騙しが通用するとでも思っているのか?」
と言った。
「怨霊?戯言をぬかすな!化け物がこの世に存在するはずがないだろうが…!」
「それはどうかな?」
その時、嫌でも反応するのがこの男・戦極凌馬。
「インベスだって、言ってみれば化け物だ。しかも、異世界なんて言う、我々の想像を絶する世界のね。それに、そこにいる坊やだって、オーバーロードの生き残り。それだけで十分戯言じゃないことが証明出来るじゃないか!」
その言葉をただ静かに聞いている他の面々。
「そして、あいつは。狗道供界はもとは科学者。キミ達が持っている戦極ドライバーの制作にも関わり、ロックシードの起動実験でその暴走によって消滅した。つまり、ロックシードの精製の仕方も知っている。となれば、私の知らないロックシードを生み出していたっておかしくないと言うだけのことさ!」
「そんな理屈はどうでもいいッ!!どうやったらヤツを倒せるッ!?」
そして、予想通りにバナーヌが食ってかかったその時だった。
「僕がやります!」
ラピス君が声を上げた。
「…僕が…、…このオーバーロードとしての力を使って、まずはザックさんの意識を取り戻します!」
力強い眼差しでワテクシ達を見つめているラピス君。
「…ザックさんは、完全には操られていません。…ペコさんがザックさんに抱き付いて悲痛な叫びを上げた時、ザックさんの体が一瞬、硬直しました」
「…そ、…そうだ…。…あの時、ザックは僕の名前を呼んでくれた…!」
ペコ君が思い出したかのように言った。
「つまり、ザックさんは心の中で狗道供界と戦っているんです!…だったら、僕の力を使って、ザックさんを正気に戻すことが出来るはずです!」
「っしゃッ!!ザックが正気に戻りさえすれば、後はこっちのもんだなッ!!」
水瓶座の男の子が目をキラキラさせて言う。だがすぐに、
「そんな簡単に事が運ぶかな?」
とバナーヌが突っ込む。
「…か、…戒斗ぉ…!」
話の腰をへし折られたかのように、水瓶座の男の子はうんざり気味にバナーヌを見つめる。でもバナーヌは、
「いつも言っているだろう?そんなに事が易々と運ぶようには思えん。常に慎重に行け、ダメだったら仲間を見捨てるくらいの覚悟を持てとな!」
と言った。
「取り敢えず、やるしかないだろう!」
その時、部屋の一番奥からメロンの君が声を上げて来た。
ズッキュ――――ンンンンッッッッ!!!!
その精悍な顔付きに、ワテクシはまたまたハートが貫かれた。そんなワテクシを無視するかのように、メロンの君はゆっくりとベッドの上に起き上がろうとする。でもすぐに、
「…う…ッ、…ぐ…ッ!!」
と、傷が痛むのか、呻き声を上げた。
「ああああッッッッ!!!!だッ、ダメですわッ、まだ寝ていないとッ!!」
思わず駆け寄るワテクシ。そして、メロンの君のその細マッチョな体を支えた。メロンの君はワテクシの顔を見ると、
「心配ない。私も責任に一環を担っているんだ。ロックシードなどと言う愚かなものを作り上げた、その主任としての」
と言い、ニッコリと微笑んだ。
「…分かりましたわ。…その代わり、…今度はワテクシがメロンの君をお守り致しますわッ!!」
ワテクシがそう言うと、メロンの君はニッコリと微笑んでくれた。
「よしッ!!みんなッ、行くぞおおおおッッッッ!!!!」
水瓶座の男の子の大声がきっかけになり、ワテクシ達は再び街へ飛び出した。
「…来たか…!」
程遠くない場所で、ワテクシ達は狗道供界とザックに遭遇した。
「…」
ザックは相変わらず、無言のままで供界の横に立っている。
「…ザックを返してもらうッ!!」
バナーヌがそう言いながら、手にしているバナナロックシードをクルクルと回した。
「みんなああああッッッッ!!!!行くぞおおおおッッッッ!!!!」
その横にいた水瓶座の男の子がオレンジロックシードを取り出すと、ほぼ同時に光実きゅんがブドウロックシードを、ペコ君がマツボックリエナジーロックシードを、城乃内がドングリロックシードを、初瀬君がマツボックリロックシードを、メロンの君がメロンエナジーロックシードを、戦極凌馬がレモンエナジーロックシードを、ワテクシはドリアンロックシードを、ラピスが銀のリンゴロックシードを、そして湊がピーチエナジーロックシードを取り出した。
「「「「「「「「「「「変身ッッッッッッッッ!!!!!!!!」」」」」」」」」」」
全員が一斉にそう叫んだ時、ガチャガチャとロックシードの錠前が外れる音が響き、
「オレンジ!花道・オンステージ!」
と、水瓶座の男の子・葛葉紘汰は仮面ライダー鎧武に、
「バナナ!ナイト・オブ・スピアー!」
と、バナーヌ・駆紋戒斗は仮面ライダーバロンに、
「ブドウ!龍・砲・ハッハッハッ!」
と、光実きゅんは仮面ライダー龍玄に、
「マツボックリエナジー!」
と、ペコは仮面ライダー黒影・真に、
「ドングリ!ネバーギブアップ!」
と、城乃内は仮面ライダーグリドンに、
「マツボックリ!一撃インザシャドウ!」
と、初瀬は仮面ライダー黒影に、
「メロンエナジー!」
と、メロンの君は仮面ライダー斬月・真に、
「レモンエナジー!」
と、戦極凌馬は仮面ライダーデュークに、
「ドリアン!ミスターデンジャラス!」
と、ワテクシは仮面ライダーブラーボに、
「シルバー!白銀・ニューステージ!」
と、ラピスは仮面ライダー冠に、
「ピーチエナジー!」
と、耀子は仮面ライダーマリカにそれぞれ変身していた。