オーマの影 第22話

 

「…おはよぉ…」

 ぼんやりとしながらオレが食堂へ入って行くと、

「ちょッ、ちょっとッ、どうしたのよッ、ソウゴ君ッ!?

 と、ツクヨミが目を大きく見開いて物凄い勢いで駆け寄って来た。

「わッ!!ちょッ、ツッ、ツクヨミッ!?

 ツクヨミが至近距離までやって来て目を大きく見開いている。オレは反射的に両手をツクヨミの顔の下へ差し出してしまっていた。するとツクヨミは、

「…何?」

 と訝しげな表情を見せた。

「え!?…あ、…い、…いや…」

 ツクヨミの目が飛び出るんじゃないかと思って、なんて言う冗談を言うのは止めておこうと思ったその時だった。

「何よ、ソウゴ君ッ!?あなたまで目の下にクマを作って…!!…ゲイツも同じように目の下にクマを作ってるし…!!

「…え?」

 その時、オレはツクヨミの向こうで椅子に腰かけ、ぼんやりとしているゲイツを見た。

「…」

 その視線は虚ろで、どこを見ているのかも分からない。いつものゲイツじゃないみたいだった。

「…ゲイ…ツ…?」

 オレが声をかけると、ゲイツはちらりとオレを見上げ、

「…お、…おう…」

 と言うと、再び視線をテーブルへ戻した。だがすぐに、

「…ッッッッ!!!?

 と呻くような声を上げて目をカッと見開くと顔を真っ赤にし、目の前にあった朝食を物凄い勢いで口の中に放り込み、

「…ごッ、…ごっそおさんッッッッ!!!!

 と、口をモグモグさせながらオレとツクヨミの横を通り過ぎて行ったのだった。

「ちょっとッ、ゲイツううううッッッッ!!!!

「…あ…、…あはははは…」

 半ば地団駄を踏むツクヨミ。

 …ま、…まぁ、腐女子のツクヨミだったら、何があったのか、聞きたいよね。

「いただきます」

 オレは席に腰掛けると、力なくそう言った。その時だった。

「ちょっとッ、ソウゴ君ッ!!

「んえッ!?

 バンッ、と言う物凄い音を立ててツクヨミがテーブルを叩いた。その音にびっくりしてオレは思わず素っ頓狂な声を上げる。

「一体、ゲイツとあなたと何があったのよッ!?こんなんじゃ、アナザーライダーが現れたら、戦えないでしょうッ!?

「…い…、…いや…」

 それはそれ、これはこれだと思うんだけど…。

「…だ、…大丈夫なんじゃないかな、きっと…」

「どうしてそうやって言えるのよッ!?あなたもゲイツも、目の下にクマが出来てるのよッ!?明らかに寝不足ってことでしょうッ!?つまり、何か悩み事でもあるんでしょうッ!?

 そう来るか、ツクヨミ…。

「ねぇッ、ソウゴ君ッ!!一体、何があったのよッ!?私にも話しなさいよッ!!

 いや、無理です、ツクヨミくん…。

 まるでウォズのように呟こうとして、やっぱり、止めた。

「と、取り敢えず、学校に遅れるから。ね?」

 オレはそう言うと、ゲイツと同じようにテーブルの上に出されていた朝食を一気に口の中に放り込んだ。そして、

「…いッ、…行って来まふううううううううううううううううッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と、物凄い勢いで家を飛び出したのだった。

「…ぐぬぬぬぬ…!!

 怒りの形相のツクヨミ。そのサラサラの髪の毛も逆立っているようにさえ見えた。

 

「はああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 でも、ひとたびアナザーライダーが現れると、オレとゲイツは抜群のコンビネーションを発揮した。

「でやああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

「はぁぁぁぁああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 自分でも自画自賛してしまうほど、物凄くいいコンビだ。

「…これはこれは…」

 それは仮面ライダーウォズに変身して戦っているウォズもが驚くほどだった。

「…さすが我が魔王。ゲイツをも手懐けてしまうとは…!!

「手懐けられてなんかいねええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ウォズの声が聞こえたのか、ゲイツが怒鳴り声を上げた。

「ゲイツッ、危ないッ!!

 その時、アナザーライダーがゲイツに剣を振り上げたのが分かった。

「はああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 オレは咄嗟にゲイツとアナザーライダーの間に入り込み、その剣をジカンギレードで受け止める。

 ギイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 鋭い金属の音が聞こえ、

「ゲイツッ、お願いッ!!

 と言った時だった。

「おうッ!!

 …え?…おう…?

 いつものゲイツなら絶対に上げないような声を、ゲイツが上げていた。そして、

「はぁぁぁぁああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と気合いを入れ、ジカンザックスを振り上げた。

「よしッ!!

 オレがその場からスルリと抜け出すと、

「食らえええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う叫び声と共に、そのアナザーライダーをゲイツのジカンザックスが真っ二つに斬ったのだった。

 

「…あ…、…ありがとう、…ゲイツ…!!

 仮面ライダージオウの変身を解除し、オレはニッコリとゲイツを見上げた。すると、オレと同じように仮面ライダーゲイツの変身を解除したゲイツは俄かに顔を真っ赤にし、

「…お…、…おう…」

 とだけ言うと、スタスタと歩き始めた。

「あッ!!まッ、待ってよッ、ゲイツううううッッッッ!!!!

 オレが後を追い掛ける。だが、ゲイツはオレの方を振り向きもせず、歩く速度を速めて更に歩いて行く。

「…これはこれは…」

 そんなオレ達の光景を、ウォズが半ば苦笑しながら見つめていた。

「…なかなか、面白い方向へベクトルが向き始めたようだ…」

「ねぇねぇッ、ウォズうッ!!

 その時、ウォズの横にひょっこりと顔を出した男の子。ウールだ。

「…もしかしたら…」

 その顔がニヤニヤとし、悪戯っぽい瞳が光っている。

「…ゲイツが、ジオウのアナザーライダーになっちゃったりして…?」

「だとしたら、お前が生み出そうとしたジオウのアナザーライダー、魔王のご同級生とやらはどうなる?」

 ウォズが呆れた表情をしながらウールに尋ねると、

「そんなの、簡単だよ!!

 と、ウールは言った。

「ゲイツもアナザーライダーも、2人共がオーマジオウのアナザーライダーになるってことさ!!

「…フッ!!

 自信満々な表情のウールに対して、ウォズは笑う。

「…それはないな…」

「何でだよッ!?何でそうやって言い切れるんだよッ!!

 ぷぅっと顔を膨らませるウール。表情をコロコロと変えて忙しいヤツだな。するとウォズは、

「分かるさ」

 と言うと、オレとゲイツが半ば駆け出しているその後ろ姿を見ながら言った。

「…我が魔王とゲイツは…。…既にお互いの気持ちに気付き始めている…!!

 

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