逆転有罪 第10話
「…ど…ッ、…どう言う…、…ことだ…ッ!?」
自分の身に起こっていることが信じられないと言うように、ヤンマが声を上ずらせて叫んだ。
「何でッ、王鎧武装なんか…!?」
トンボオージャーの全身を覆う光沢のある鮮やかな青いスーツ。顔はトンボをあしらったマスクが装着され、その両方の翅から大きく見開かれた目を覗かせていた。
「…あなたが飲んだお酒。その中に、スコピーの毒を混ぜておいたのよ…!!」
ヒメノがあっけらかんとして言う。その目がギラギラと不気味に輝いている。
「…んまッ、まさか…ッ!?」
トンボオージャーのマスクの中でヤンマが目を大きく見開いたその時だった。
『はーっはっはっはっは…ッッッッ!!!!』
何度も聞いた忌まわしい笑い声が聞こえ、目の前のモニターに忌まわしい人物の姿が映し出された。
『楽しんでくれているかね、ンコソパ国王?』
「…ラ…クレス…うううう…ッッッッ!!!!」
憎々しげにラクレスを睨み付ける。するとラクレスは、
『君が私に素直に靡くとは考えられなかったからね。申し訳ないとは思ったのだが、この方法を取らせてもらったよ』
と言った。
「…て…んめ…え…ッッッッ!!!!」
『そうだ。他の3ヶ国の王に協力してもらい、君を宴へとご招待した。そして、酒にゴッドスコーピオの毒を混ぜ、君に飲ませたのさ』
その時だった。
突然、ラクレスの体が輝き、きらきらと輝く銀色のスーツを身に纏っていた。オオクワガタオージャー。ラクレスが王鎧武装した姿だ。
『私はバグナラクと手を結んだ…!!』
「…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
分かってはいたが、いざ、本当に言われるとやはり愕然とする。
『始まりの国であるこのシュゴッダムこそ、この世界を支配するに値するのだ。だが、一筋縄では行かない王達ばかりだからな。お前以外の国王には申し訳なかったが、ゴッドスコーピオの毒を浴びてもらった。いや、仕方がなかったのだよ。私を頂点とする世界を作り上げるためには、こうする他なかったんだ』
「…ふ…っざける…なああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ヤンマが声の限り叫ぶ。
「…て…め…え…ッ!!…バグナラクと手を結んだところで、てめえがこの世界の頂点に立った途端、この世界が終わるってこと、分かってねえのかよッ!?バグナラクがそんなに簡単に信用出来る存在かッ!?あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッッ!!!?」
『黙れッ!!』
オオクワガタオージャーのマスクの中で、ラクレスが大きく目を見開いて怒鳴っていた。
『私はッ!!自らの欲望のためなら悪魔にでも魂を売るッ!!それが、その後、私を裏切るかもしれない相手だとしても、だッ!!』
だが、ラクレスはすぐにフッと笑うと、
『…問題ない。…私が頂点に立った時、貴様も私に跪いているのだから』
と言った。
「…意味…、…分かんねえなァ…」
今度はヤンマがニヤリと笑った。
「てめえが頂点に立った時、オレもてめえに跪いている?んなわけねぇだろうがッ!!」
『…フッ!!』
ラクレスは笑うと、
『私が頂点に立つ頃には、お前達はゴッドスコーピオの毒に操られ、私の操り人形になっているからさ!!』
と言った。その時だった。
「…プッ!!…あはははははははは…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
突然、ヤンマが大声を上げて笑い始める。
『何がおかしい?』
ラクレスのムッとした声が聞こえて来る。
「…お…ッ、…おかしいさ…!!…てめえを頂点とする世界…?…オレ達が、てめえの操り人形?…出来るわけがねえッ!!」
トンボオージャーのマスク越しに、ヤンマはラクレスを睨み付けている。
「デズナラクはそんなに弱っちい相手か!?てめえがキングオージャーZEROで戦ったところで、逆にコテンパンにされるだけなんじゃねぇのかッ!?」
『…何…ッ!?』
ラクレスの声が低くなる。
「てめえにゃあ、無理だ。…ギラじゃなきゃ…、ギラじゃなきゃ、ぜってーに勝てねええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
『…ほう…』
その時だった。
「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!貴様ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
今度はリタが立ち上がったかと思うと奇声を上げ、ズカズカとヤンマのもとへ歩み寄り、オージャカリバーを突き立てようとした。
「おおっと、リタ殿ッ!!殿中でござるぞッ!?」
そんなリタを、カグラギが止める。
『…見せしめだ…』
ラクレスの声が聞こえて来る。
『…ンコソパ国王・ヤンマ・ガスト!!…貴様には最も屈辱的な方法で、私に跪いてもらうとしよう…!!』
「…何をさせる気だ、ゴラアアアアッッッッ!!!?」
その時だった。
「…えッ!?」
不意にヤンマの体がガクリとなり、体が硬直した。と同時に、右手がゆっくりと動き始めた。そして、それはヤンマの2本の足の付け根部分、そこにあるふくよかな膨らみに辿り着くと、それをギュッと握ったのだ。
「んあッ!?」
「…うほ…ッ!!」
その光景に、リタが目を輝かせ、素っ頓狂な声を上げる。
「…な…、…んだ…ッ!?」
突然のことが俄かには信じられない。
「…何で…、…手が…、…勝手に…!?」
ヤンマの右手。トンボオージャーの鮮やかな青色のグローブで包まれた右手が、2本の足の付け根部分に息づくヤンマの男としての象徴を揉みしだいていたのだ。
「…ん…ッ、…んあ…ッ!?」
ビクッ、ビクッ、とヤンマの体が跳ねる。
「…汚らわしい…ッ!!」
ヒメノが軽蔑するように言うと、
「おおうおうおうおうッッッッ!!!!ヤンマ殿は、日頃、ご自身で処理をなされていなかったのでしょうかあッ!?突然、このような狼藉をお働きになられておりまするううううッッッッ!!!!」
と、カグラギが馬鹿にするかのように大声を上げた。
「…や…、…めろ…ッ!!」
『あーっはっはっはっは…ッッッッ!!!!』
モニター越しにそれを見ていたラクレスの大きな笑い声が耳を劈く。
『無様だなァ、ンコソパ国王ッ!!自ら、そのような場所で自慰行為に耽るとは…!!』
「…ふ…ッ、…耽ってねえよ…ッ!!」
そう言う間にも、ヤンマの右手はそこをやわやわと揉みしだいたり、ゆるゆると上下左右に動かしたりを繰り返している。
「…ふ…ッ!!…ん…ッ!!…んふ…ッ!!」
ビクッ、ビクッ、と体が痙攣し、ヤンマの口から吐息が漏れる。
「…止めろ…ッ!!」
ヤンマが声を上げ、右手を離そうとしたその時だった。
「…あ?」
右手首に何やら白く細いものが巻き付いているのに気付いた。
「おおっとぉッ!!やっと気付いてくれたのかい?」