逆転有罪 第17話
「はああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!????」
ギラが目を大きく見開き、その体から出る最大量の声で叫んでいた。
「バッ、バッカッ!!声がでけえよッ!!」
顔を真っ赤にしたヤンマはギラの背後へ回ると、物凄い勢いでギラの口を塞いでいた。
「…もが…ッ!!」
「誰かに聞かれたらどうすんだよッ、このタコメンチッ!!」
ギラとヤンマが体を擦り付け合うようにもがく。そして、ぶはっと言う音を立ててギラがヤンマの腕を振り解くと、
「…きッ、…貴様…ッ!!…ささささ、さっき、何て言ったッ!?」
と、顔を真っ赤にしてヤンマに尋ねた。その言葉にヤンマは、
「…あ゛あ゛ッ!?」
と声を上げると、
「にッ、二度も同じことを言わせんなッ!!」
と言いつつも、頭をガリガリと掻き、
「…オレは…、…ギラのことが好きなんだよ…!!」
と言った。
「…え…、…えっと…ぉ…」
きょときょとと忙しなく瞳が動く。
「…そ、…その…、…好き…って言うのは、オレ様のことを仲間と思っての好き、なのか、…そ、…それとも…」
「…好きっつったら、そう言うことだろうがッ、このスカポンタヌキイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
バシッ!!
「あ痛ッ!!」
再びヤンマに引っ叩かれ、ギラは素っ頓狂な声を上げて頭を押さえる。
「…なッ、…何だよぉッ、ヤンマああああッッッッ!!!!」
「しょうがねぇだろうッ!?お前に惚れちまったんだからよぉッ!!」
そう言うと、ヤンマは再びギラを抱き締めた。
「…ヤ…、…ンマ…」
その時には、ギラの体からはすっかり力が抜けていた。
「…オレが…、…お前のことを守るッ!!…だから、お前も無理に邪悪の王を演じなくてもいいッ!!」
「…ヤンマ…」
じっとギラを見つめるヤンマ。その瞳に吸い込まれそうになる。
「…ラクレスが…、…お前の兄貴があんなんじゃ、本当に辛いよな?…けど、お前がラクレスを追い出し、お前がシュゴッダムの国王になればいいッ!!そうすれば、この世界は争いのない、平和な世界になるはずだ。5国同盟を復活させて、オレ達が手を取り合い、国境を飛び越えて仲良くするんだ。そうすれば、民の心も付いて来るはずだ…!!」
「…ヤンマ…。…何か、気持ち悪いぞ?」
「あ゛あ゛ッ!?」
ギラの顔が引き攣っている。それに対し、ヤンマは顔を真っ赤にして声を上げた。
「…お前の口から、国境を飛び越えて仲良くとか、そんな言葉が出るなんて…」
「…な…ッ、…何言ってやがるッ!?オレだって一国の王だ。そう言うことを考える時だってあるんだよッ!!…それから…」
不意に真顔になったヤンマがギラをじっと見つめる。
「…な…、…何…?」
ギラは思わず怯えた声を上げた。ころころと表情を変えるヤンマに付いて行くのに精一杯だ。
「…オレが不在にしていた理由だ」
「…え?」
その、何か大きな決意を持っているような表情に、ギラは聞き返す。
「…いいか、タコメンチ?これから言うことは、絶対に誰にも内緒だ」
「…あ?…あ、…ああ…」
すると、ヤンマは大きく深呼吸をし、
「ラクレスを追い落とすッ!!」
と言った。
「オレが不在にしていたのは、トウフへ行っていたんだ。そこでカグラギ、ヒメノ、裁判長と会って来た。シュゴッダム以外の4ヶ国が協力し合い、シュゴッダムに制裁を加えて行き、国民の不満をラクレスへ向ける」
「…ど、…どうやって…?」
ギラが尋ねると、
「まず、トウフからの食物の輸出をストップさせる。イシャバーナからは医療を、そして、ンコソパからは通信手段だ」
と言った。
「そッ、そんなことをしたらッ、シュゴッダムの国民も巻き添えになるんじゃ…」
ギラが慌ててそう言った時、ヤンマはニヤリと笑い、頭をコツコツと叩いた。
「そこは、頭を使うんだよッ!!」
その目がキラキラと輝いている。
「それぞれの国からの制限をすると言うデマを流すのさ」
「…デマ?」
「ああ。そこはカグラギの二枚舌が何とかすることになっている」
「…カグラギの?」
「そ。アイツの二枚舌で騒ぎを大きくさせながらも、底面で密かに食料や薬などを提供し続ける。通信手段を遮断されていれば、ラクレスだって正確には把握出来ないはずだ。それに、国民の通信手段は正常なままだ。そこに、ヒメノや裁判長がひたすらシュゴッダムの国民に向けて演説を繰り返す。…そして、シュゴッダムの国民の中での反乱分子が動き出す!!」
そう言った時、ヤンマはギラを見つめた。
「…ギラ…。…お前だ…!!」
ヤンマがそう言った時、ギラは目を大きく見開いて、
「…オッ、オレッ!?」
と声を上げた。
「…オレが動き出すって…。…い、…一体、どうやって…!?」
「キングオージャーの発動さ!!」
ヤンマの目が余程自信に満ちているのか、キラキラと輝いて見える。
「オレだけじゃねえ。ヒメノも裁判長も、そして、カグラギも、お前の味方ってこった!!」
その時だった。
ザッ、と言う音と共に、ヤンマがギラの目の前で跪いていた。
「…ヤンマ…?」
「…オレにッ、忠誠を誓わせてくれッ!!」
「…え…、…ええええッッッッ!!!?」
跪くヤンマ。その姿だけでも呆気に取られるのに、忠誠を誓わせてくれなんて…。
「…オレはッ!!…お前を守りたいッ!!お前を守ると言うことは、シュゴッダムを守ると言うことだッ!!そのためだったら、手段を選ばねえッ!!」
そう言ったかと思うと、突然、ヤンマの体が光を帯びた。
「…え…、…ええええええええッッッッッッッッ!!!!!!??」
ギラが更に大声を上げる。
「Tone boy!!オージャーッ!!」
光沢のある鮮やかな青色のスーツ。
「…ヤッ、ヤンマッ!?」
ヤンマがトンボオージャーに王鎧武装していた。その頭部を覆うマスクは外したままで。
「…ギラ…」
「…な、…何…?」
コツコツと足音を響かせながら、ヤンマが近付いて来る。ギラは思わず後退りをする。そして、いつの間にか、壁際へ追い込まれていた。
ドンッ!!
ギラの左側にヤンマの右手が伸びている。
「…お前が…、…好きだ…!!」
そう言った時、
「…ん…ッ!?」
と言うギラの短い声が聞こえた。