スティンガーの憂鬱 第11話
翌日から、スパーダの様子がおかしくなり始めた。
「…う、…うぅぅ…!!」
顔を赤らめ、目を見開いてブルブルと震える。心なしか、体を腰からくの字に折り曲げて歩く。
「ど、どうしたんだよ、スパーダぁ?気分でも悪いのか?」
今回の大騒動の発端となるであろうラッキーが不審げにスパーダに尋ねる。するとスパーダは、
「…あ、…ああ…。…ちょ、…ちょっとね…!!」
とぎこちない笑みを浮かべる。するとラッキーは、
「ああ〜、分かったァ!!」
と明るい声を上げると、
「スパーダ!!もしかして、ぎっくり腰になったとか!?」
と言ったのだ。
「…な…ッ!?」
「はっはっはっは…!!」
その時、ショウ司令が歩いて来たかと思うと、
「そうかそうかぁ!スパーダも遂にオッサンの仲間入りしたかぁ!」
と嬉しそうに言い、スパーダの背中をバンバンと叩く。
「…ちょッ、…ちょっとッ、止めて下さいッ、司令ッ!!」
スパーダが声を上ずらせて叫ぶ。そして、顔を真っ赤にして、
「しッ、司令と一緒にしないで下さいッ!!」
と怒鳴ったのだ。
「グサッ!!…ス、…スパーダ…。…そ、…そんなふうに言わなくても…」
みるみるうちに司令の目に涙が溜まって行く。と、そこへ、
「スパーダ、大丈夫ぅ?」
と小太郎がやって来た。するとスパーダは、
「…小太郎…様…」
と言い放ったのだ。
「「「「「「「「小太郎様ああああッッッッ!!??」」」」」」」」
その途端、ラッキー、ガル、バランス、チャンプ、ナーガ、ハミィ、ラプター、そしてショウ司令の大声がコンボーブリッジに響き渡った。と同時に、
「うぎいいいいいいいいッッッッッッッッ!!!!!!!!」
とスパーダが素っ頓狂な声を上げたかと思うと、腰を更に折り曲げた。そんな目の前では、小太郎が驚いて目を見開いている。
「…あ…」
はっと我に返ると、スパーダは顔を真っ赤にし、ぎこちなく笑ったかと思うと、
「…ご、…ごめんごめん…!!…ちょ、…ちょっと、…トイレ…!!」
と言い、腰を深くくの字に折り曲げたまま、その場を出て行った。
「…な、…何だぁ、アイツ?変なものでも食べたのか?」
「フンッ!!料理人たるものがッ、つまみ食いして食あたりでも起こしたんだろう!!」
相変わらず不審顔のラッキーと、相変わらずつっけんどんなチャンプ。
(…ククク…!!)
俺は吹き出しそうになるのを必死に堪えながら、スパーダに仕込んだ毒、スパーダの性欲の衝動を高めると共に、小太郎を見た途端、その感情が最大限に達すると言う毒の効力を確信していた。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ…!!」
自分の部屋に駆け込んだスパーダははぁはぁと荒い呼吸を繰り返していた。
「…どッ、…どうしちゃったんだ、僕は…ッ!!」
顔から火が噴き出すように熱い。額は汗びっしょりになり、心臓がバクバクと高鳴っている。
「…あ、…朝からやけにムラムラして…」
そう言いながらスパーダは自身の2本の足の付け根部分に息づく、スパーダの男としての象徴であるペニスを見る。それは今、ズボンの中で大きくテントを張り、その先端がぐっしょりと濡れていたのだ。
「…そ、…それに…。…小太郎を見た途端、雷に打たれたような感覚がして、意識がぼぉっとなって…!!」
その時だった。
コンコン…。
部屋のドアをノックする小さな音。同時に、
「…スパーダ…。…スパーダ…!」
と言う少年の声。
「…こッ、…小太郎…ッ!?」
その時、スパーダは心臓が大きく高鳴ったのが分かった。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
その目がカッと見開かれ、体が痺れるように熱くなる。
「スパーダッ!!大丈夫ッ!?開けてよッ!!」
ドンドン、ドンドン…ッ!!
小太郎にとっては本気でスパーダのことを心配しているのだろう。だが、今のスパーダにとっては、小太郎は自分を狂わせるほどの存在になっている。
「…ど、…どうしよう…ッ!?」
「おい、スパーダッ!!小太郎がお前のことを本気で心配しているんだ!!無視はないんじゃないのか!?」
実は、俺は小太郎と一緒にスパーダの部屋の前にいたのだ。スパーダがコンボーブリッジを飛び出した時、
「オレッ、スパーダを見て来るよッ!!」
と言った小太郎が駆け出そうとした。そして、
「兄貴も、一緒に行ってくれる?」
と言ったからだった。
正直、ラッキーだと思った。さすがに小太郎に独りで行かせるのは憚られた。スパーダが小太郎のことを「様」付けで呼び、ただでさえ、他の面々に不審がられている。いや、不審がられているのは、腰をくの字に折り曲げて歩いている様子からも丸分かりではあったが。
(…予想斜め上の展開になっている…!)
小太郎に腕を引っ張られながら、俺はニヤリとしていた。
「スパーダッ!!スパーダぁッ!!」
小太郎はドンドンとスパーダの部屋の扉を叩き続ける。
その時だった。
シュンッ!!
スパーダの部屋の扉が勢い良く開いた。
「…わ…!!」
小太郎は驚き、スパーダを見上げる。
「…ス…、…パー…ダ…。…だいじょう…」
大丈夫と言いかけた小太郎の視線がスパーダの体の1点に行った時、
「…ッッッッ!!??」
と言葉を失い、顔を真っ赤にしたのだ。
「…小…太郎…様…!」
虚ろな目をしたスパーダ。その2本の足の付け根部分。そこが大きく突き出し、ぐっしょりと濡らしていたのだ。
「…スッ、…スパー…ダ…!?」
小太郎は言葉を失い、まじまじとスパーダを見上げている。すると、スパーダの両腕が動き、小太郎を優しく抱き締めた。
「…小太郎…様…。…僕を、…僕を…。…甚振って…下さい…!!」