歪んだ友情U 第5話
空間がぐにゃりと歪んだように思えた。
(…な…に…!?)
次の瞬間、鉄也の目の前には大量の埃を積もらせた床があった。
「…な、…ん…だ…?」
床の上にうつ伏せに倒れている鉄也。光沢のある鮮やかな黒と白のブラックバイソンのスーツは、埃で薄汚れていた。
腕に思うように力が入らない。しかも、体がじんわりと熱く、呼吸が少しずつ荒くなっているのが分かった。
「…ま、…さ…か…!?」
その時だった。
「ヒャーッハハハハ…!!」
豪が再び狂ったように笑い始めた。そして、
「単細胞のくせに、今日は意外と頭が働くみたいだねぇ!」
と言った。
「…クッ…!!」
鉄也が辛うじて膝をつくまでに起き上がる。すると、豪はそんな鉄也の目の前へ歩み寄り、ゆっくりと腰を落とした。そして、
「体がじわじわと熱くなってるだろ?」
と言い、真っ赤な舌を出して口の周りを舐めた。
「さっき、君が丈から手渡された水。あれにちょっとした細工がしてあったのさ!」
「…や、…っぱり…!!」
「フフッ!」
豪は、鉄也を小馬鹿にしたように笑うと立ち上がり、丈のもとへ戻った。そんな豪を、丈が背後から静かに抱き締める。
「丈が差し出した水。あれは近くの公園の水道水なんかじゃない。もともと、僕が用意していた水さ!その中に、君の体中の力を奪う薬と、ちょっとした興奮剤も入れておいたんだよ!」
「…う、…あぁぁ…ッ!!」
鉄也が思わず呻き声を上げる。ドクンドクンと心臓が高鳴り、
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ…!!」
と呼吸も荒くなって行く。
「フフッ!確実に薬が効き始めているみたいだねぇ!!」
豪はそう言うと、
「おい、ジョウヅノーッ!!」
と、部屋の入口で腕を組んでいた丈に声を掛けた。すると、ジョウヅノーは、
「かしこまりました、豪様」
と言い、ゆっくりと鉄也のもとへ歩み寄る。見た目は全く変わらない。イエローライオンの黄色と白であしらわれたスーツ姿の丈だ。ジョウヅノーと言われても、本当かどうか分からない。
「…あ…、…あぁぁ…!!」
ブルブルと震える体を、何とか起き上がらせようとする鉄也。
「どうした、鉄也?立ち上がれねぇのか?」
両手の全ての指を、まるで何かを揉み込むように淫猥に動かしながらジョウヅノーはそう言うと、
「立てねぇのなら、オレが手伝ってやらぁ!」
と言い、鉄也の両脇の下に腕を通し、羽交い絞めするかのように鉄也を立ち上がらせた。
「んああああッッッッ!!!!」
その瞬間、鉄也が顔を真っ赤にして大声を上げたのだ。
「な、何だよ、鉄也ぁ?たったこれだけで感じちまってるのかよ!?」
ニヤニヤしながら言うジョウヅノー。
「まだまだ、感じるには早すぎるぜぇ!?」
そう言うとジョウヅノーは、両手の人差し指を鉄也の胸へ這わせ、程よく付いた胸の筋肉の中心部分の突起をクリクリと刺激したのである。
「ああッ!!ああッ!!」
鉄也がビクビクと体を反応させ、羽交い絞めのようにされている体を捩じらせる。
「…やッ、…止めろオオオオッッッッ!!!!」
顔を真っ赤にし、懸命にもがく。だが、体に思うように力が入らずにいる。
「ほいッ、丈様ッ!!」
するとジョウヅノーは、鉄也に絡ませていた腕を振り解いたかと思うと、鉄也の背中をぽんと押した。
「うあああッッッ!!!!」
その反動で、鉄也がふらふらとよろめいたかと思うと、ぽすんと丈の胸へ崩れ落ちたのである。
「大丈夫かよ、鉄也ぁ?」
イエローライオンの黄色と白であしらわれたスーツ姿。いつも見慣れた姿と、いつも見慣れた体付き。
「…丈…さん…!!」
渾身の力を振り絞り、何とかして丈の両肩に手を掛ける。豪に処方された薬のせいで、意識が半分朦朧としている。目は半分閉じ、口を半開きにした表情は見ている者を妙な気分にさせるのではないかと言うほどだった。
当然、丈もそれを感じたようで、
「何だよ、キスでもして欲しいのか?」
と言ったかと思うと、鉄也の後頭部を押さえ付け、鉄也の唇を激しく貪り始めたのだ。
「…ん…ッ!!…んん…ッ!!…んんんーーーッッッ!!!!」
鉄也の苦しそうな呻き声が聞こえる。その両手は丈の体を引き離そうとするが、思うように力が入らず、逆に丈に押さえ付けられてしまった。そうこうしているうちに、
…クチュッ!!…クチュクチュ…ッ!!…ジュッ!!
と言う淫猥な音まで響き始めた。
「…あ…!!…はぁ…ッ!!」
鉄也の艶めかしい喘ぎ声が聞こえ始める。
「ヒャーッハハハハ…!!」
豪が大声で笑う。そして、
「いいザマだな、ブラックバイソン!!お前はここで2人の丈の性の虜になるんだ!!」
と言った。
「…ぷは…ッ!!」
すると丈が唇を離し、
「豪様。鉄也の唇、すんげぇ、美味しかったです」
と言い、ニヤリと笑ってみせた。すると豪は、
「あんまり調子に乗らないでよ!丈には僕がいるんだから!」
と言い、
「おい、ブラックバイソン!もしかして、今のはお前のファーストキスだったとか?」
と言い、下品な笑い声を上げた。
「な…ッ!?」
豪の言葉に顔が熱くなる。
「おやおや、図星だったのかな?」
豪がそう言うと、
「…だッ、…黙れえええッッッ!!!!」
と鉄也が叫び、豪に殴り掛かろうとした。
「おおっと!」
だが、鉄也の背後にいたジョウヅノーが鉄也を再び羽交い絞めにしたのだ。
「…クッ…!!…放せええええッッッッ!!!!」
鉄也が懸命にもがく。
「おいおい。そんなんでは豪様と丈様にお前のシンボルを見せてあげられないだろう?」
不意にジョウヅノーがそう言ったかと思うと、鉄也を羽交い絞めにしている腕を少しずつ頭の方へ向かって上げ始めたのだ。
「…あ…ッ!?…ああ…ッ!!」
少しずつ鉄也の体が宙に浮いて行く。
「…おやおや…」
豪がフンと鼻で笑い、蔑んだ目で鉄也を見る。
「…何だかんだ言いながら、…それでも、丈のキスに感じてしまっていたみたいだな…」
ブラックバイソンの、光沢のある鮮やかな白いズボン。その2本の足の付け根、鉄也の男子としての象徴。それがクッキリと形を現わし、ズボンの中で臍へ向かって窮屈そうにしていたのだった。