歪んだ友情W 第1話
漆黒の闇・宇宙。その、音も、空気も、何もない真っ暗闇の中に太陽の光を受けて青く光る星・地球。
その地球の光を時折、反射させながら、人工衛星達がキラキラと輝く。その中に、人工衛星以上の大きな真っ黒な物体がゴウウウン、ゴウウウンと言う音を立てながら、時折、きらきらと輝きながら動いていた。
ヅノーベース。武装頭脳集団ボルトの総本山。
コツン、コツン…。
その中の、大広間のようなところ。地球の光をまるで太陽の光のように取り込み、ぼんやりと薄暗いそこに、1人の男性が静かに佇んでいた。後ろ髪を少し束ね、黒いローブを身に纏っている。そして彼の左肩には大きな鎧のようなものがあり、その先端は鋭く尖っていた。風体からして40代くらいの中年男性だろうか。だが、彼の視線は鋭く光り、また横顔からは年齢を感じさせないほど、精気が漲っていた。
「…フ…ッ…!」
武装頭脳集団ボルトの首領・ビアス。その、真っ白な手袋で覆われた人差指の側面が唇を覆うようにする。彼の癖だ。
その時だった。
ブウウウン、と言う低い音がして扉が開き、コツコツと足音が響いた。
「お呼びでしょうか、大教授ビアス様?」
1人の若者が、ビアスと呼ばれたその男の後ろで恭しく跪いた。ドクター・オブラー・尾村豪。黒のタキシードを羽織り、首元にはその体のわりには大きすぎるほどの蝶ネクタイをしている。その後ろには、きらきらと光る、全身にぴったりと密着するように纏わり付いたスーツを身に付けた若者が4人、その若者と同じようにビアスの前で恭しく跪いた。
ビアスと呼ばれたその男は静かに振り向くと、
「…まさか、追い詰められたネズミが本当に本能を剥き出しにするとはな…!」
と言うと、豪の手を取り、静かに立ち上がらせた。そして、
「よくやった、ドクター・オブラー…!」
と言い、その頬を撫でた。すると豪は、キラキラとした眼差しをビアスへ向け、
「人間のことわざにありますよね?『窮鼠猫を噛む』って」
と言った。すると、今度はビアスはフッと静かに笑うと、
「お前はネズミではなく、虎かライオンのように思えるがな…」
と言った。
「いずれにせよ、お前は素晴らしい!最初はただの落ちこぼれの優等生だと思っていたお前が、本領を発揮し、この武装頭脳集団ボルトで最も優秀な逸材になるとはな…!」
「いえいえ。私一人の力ではどうにもなりませんでしたよ」
豪はそう言うと背後を見やり、
「私の部下が1人、また1人と増えて行ったお陰ですよ。私はこの4人をオブラー四天王と呼ぶことにしています」
と言った。ビアスはフッと笑い、
「…四天王…か。…もとは我らが憎っくき宿敵、ライブマンの5人のうちの3人と、そのうちの1人から作り出した頭脳獣とはな…」
と言うと、目を細めた。
光沢のある鮮やかな黄色のスーツを身に纏った青年。イエローライオン・大原丈。上半身は黄色をベースとし、両肩から臍へかけて真っ白なVラインが入っている。下半身は白色で、それらが彼の体中にピッタリと密着し、彼の体付きをクッキリと浮かび上がらせていた。髪を固めたその瞳はギラギラと輝き、ニタニタと笑みを浮かべている。
そして、そんな丈と全く同じ体型、同じ姿、同じ顔の持ち主。丈の遺伝子とも呼べる、丈の男としての象徴であるペニスから溢れ出る淫猥な液体で作り上げた頭脳獣・ジョウヅノー。彼もまた、丈と同じようにニタニタと勝ち誇った笑みを浮かべていた。
それから、光沢のある鮮やかな黒色のスーツを身に纏った青年。ブラックバイソン・矢野鉄也。上半身は黒色をベースとし、両肩から臍へかけて真っ白なVラインが入っている。下半身は白色で、それらが彼の体中にピッタリと密着し、彼の体付きをクッキリと浮かび上がらせていた。その目も自信に満ち溢れるようにキラキラと輝き、満足気な笑みを浮かべていた。
そして。光沢のある鮮やかな緑色のスーツを身に纏った少年。グリーンサイ・相川純一。上半身は緑色をベースとし、両肩から臍へかけて真っ白なVラインが入っている。下半身は白色で、それらが彼の体中にピッタリと密着し、彼の体付きをクッキリと浮かび上がらせていた。だが、その目は丈やジョウヅノー、鉄也とは対象的に輝きを失い、虚ろな表情を浮かべていた。
「ところでドクター・オブラー」
不意にビアスが豪を呼んだ。
「残りの2人はどうするのだ?」
「…決まっているでしょう?」
何を言わせるのだと言うように、豪は鼻で笑うと、ギラリとした目をビアスへ向け、
「レッドファルコンとブルードルフィンはどう頑張っても私の命令には従わないでしょう。このイエローライオンが私の思惑通りに動いたことだけでも奇跡なのに」
と言い、
「レッドファルコンとブルードルフィンは始末します!」
と言い放った。その時、今度は豪が何かに気付いたように、
「…そう言えば、ドクター・ケンプ、ドクター・マゼンダ、ドクター・アシュラの姿が見当たりませんが…?」
とビアスへ尋ねた。すると、今度はビアスがフンと笑い、
「あいつらは落第だ。私の欲望を満たさぬものはここにいる資格はない。馬鹿な気を起こす前に…」
と言い、首元へ右手をやると、左から右へスッと横一文字に引いた。
「…ビ、…ビアス様…ッ!?」
豪が驚いて声を上げる。するとビアスはフッと笑い、
「心配するな。お前にはそのようなことはせぬ」
と言うと、豪の頬に再び手をやった。
「お前はこうしてライブマンを3人も手中に治めた。お前がいかに天才かを証明したのだ」
ビアスはそう言うと、
「ドクター・オブラー。お前の好きにするが良い。お前の手で、地球を征服するが良い…!」
と言い、
「後はお前に任せる」
と言って、その大広間を出て行った。
「…う…、…ああ…!!」
ビアスの姿が見えなくなった途端、豪は崩れるように前のめりになった。
「豪ッ!?」
「豪様ッ!?」
イエローライオン・大原丈と、丈と同じ姿をしたジョウヅノーが飛び出し、寸でのところで豪を受け止める。
「大丈夫かッ、豪ッ!?」
丈が豪をしっかりと抱き締め、声を上げる。豪の体が心なしか、ガタガタと震えている。
「…ビアス様…、…恐ろしい方だ…!」
と言ったのも束の間、
「…ククク…!!」
と低い声で笑い始めたかと思うと、
「…ッ、…ハ…ッ、…ヒャーッハッハッハッハ…!!」
と、甲高い声で笑い始めたのだ。
「…とうとう…!!…とうとう、僕はッ!!」
丈の胸に顔を埋めていた豪がゆっくりと顔を上げる。その瞳が野獣のようにギラギラと輝いている。
「…僕はッ!!…とうとう、ビアス様に認められたんだッ!!…誰が落ちこぼれだって…?…誰がお情けでボルトへ入れてもらったって…?」
その頃には、豪は丈の体を離れ、その大広間をフラフラと歩いている。
「…ドクター・ケンプ、…いや、月形剣史ッ!!…それにトクター・マゼンダ、…いや、仙田ルイッ!!…そして、ドクター・アシュラ、…いや、毒島嵐ッ!!…お前達が落ちこぼれだと蔑んでいた者は今、こうしてビアス様に認められ、今では片腕とまでなったんだ!!…どっちが落ちこぼれだ?…どっちがお情けだ?…ックッ、…アヒャッ…、…ヒャーッハッハッハッハ…!!!!」
豪の下衆な笑い声が、その大広間に響き渡った。