歪んだ友情W 第5話
傷付いた恐獣ケンプとマシンマゼンダを庇うように、2人の前に立ちはだかったレッドファルコン・勇介とブルードルフィン・めぐみ。その光沢のある鮮やかな白と赤、青を基調としたスーツが太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
「…ククク…!!」
その光景を見ながら、豪が低く笑った。
「…さぁ、…次は誰がやられてくれるのかな…?」
「…やられはしないさ…!」
勇介が拳を握り締めながら言う。
「俺達は、お前を倒し、丈や鉄也、純一を取り戻す!!ただ、それだけだッ!!」
「…フン…!!」
だが、豪は余裕の笑みを浮かべたまま、微動だにしない。そして、
「じゃあ、次はぁ…。純一、行っておく?」
と言った。すると、グリーンサイ・純一が、
「…はい…」
と言ったかと思うと、勇介をキッと睨み付けた。そして、
「サイカッタアアアアッッッッ!!!!」
と、V字のブーメランを2本投げ付けた。
「ファルコンセイバーッ!!」
対するかのように勇介は剣型の武器を取り出す。そして、
「ふんッ!!はあッ!!」
と、サイカッターを叩き落とした。だが次の瞬間、
「…な…ッ!?」
と、目の前の光景に絶句した。
なんと、至近距離に純一が迫っていたのだ。そして、
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と雄叫びを上げたかと思うと、勇介の体にがっしりと組み付いたのだ。
「…じゅ、…純一イイイイッッッッ!!!!!!??」
その時になって思い出した。普段は気の優しい純一だが、実は高校のラグビー部の所属だったと言うことを。まるでタックルを仕掛けるようにがっしりと勇介の体に組み付いた純一。そんな純一が勇介の体を持ち上げたかと思うと、
「はああああッッッッ!!!!」
と投げ飛ばした。
「ふんッ!!」
だが勇介は冷静に、上空でひらりと体を翻すと、スタッと華麗に着地した。だがその時、純一の目が不気味に光り、口元がニヤリと歪んだのを、勇介は見逃さなかった。と、次の瞬間、
ズバアアアアンンンンッッッッ!!!!ズガアアアアンンンンッッッッ!!!!
と言う激しい衝撃音と共に勇介のレッドファルコンのスーツがスパークした。
「ぐわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
勇介が悲鳴を上げて転がる。
「…ただ投げ飛ばしただけじゃない。…僕のサイカッターが、お前を追いかけていたんだッ!!」
純一が言った。
「…な、…何をやってるんだッ、バカッ!!」
ケンプが怒鳴る。
「やはり貴様はただのバカだったのかッ!!」
「るっせえッ!!ちょっと油断しただけだッ!!」
勇介が気を逸らしたその時だった。
ドガアアアアンンンンッッッッ!!!!ズガアアアアンンンンッッッッ!!!!
突然、辺り一面に激しい爆発が起き、その烈火と爆発に勇介は巻き込まれた。
「ぐわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その爆煙の中から勇介の悲鳴が響き渡る。
「ゆッ、勇介ええええッッッッ!!!!」
めぐみが悲鳴を上げる。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
その爆煙が消えると、そこにはワシの精悍な顔付きを象ったレッドファルコンのマスクを失った、顔中血だらけの勇介が立っていた。そして、
「…う…!!」
と呻いたかと思うと、ファルコンセイバーを杖にして、その場に跪いた。
「勇介ッ!!」
めぐみが駆け出す。
「…あ〜、…生き残ったかぁ…!!」
そう声を上げたのはイエローライオン・丈だった。その手にはライオンバズーカが握られている。
「連続で放ったんだけどなぁ…」
「丈もみんなも、もう止めてええええッッッッ!!」
イルカの優しい顔付きを象ったブルードルフィンのマスクの中で、めぐみが涙を流す。だが丈達は相変わらずニヤニヤとめぐみ達を見つめているだけだ。
その時だった。
「さぁ、オブラー四天王ッ!!お前達の究極の技を見せてやるのだッ!!」
突然、豪が叫んだ。
「…オブラー…四天王…!?…究極の、…技…だと…!?」
勇介が呆然とする。そんな勇介の目の前で、丈、ジョウヅノー、鉄也、純一がそれぞれの武器を1つに合わせるかのように照準を定めた。
「…食らえ…!!」
丈がニヤリとしたその瞬間、
「「「「テトラインパクトオオオオッッッッ!!!!!!!!」」」」
と4人が叫んだ。その瞬間、丈とジョウヅノーのライオンバズーカからの砲撃と、ブラックバイソン・鉄也のバイソンロッドの稲妻、そして純一のサイカッターが1つに合体し、巨大な砲弾となって勇介に襲い掛かった。
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!ズバアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
激しい爆音と地響きが辺りに響き渡り、大爆発が起こった。
「ぐぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「きゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
勇介、めぐみ、ケンプ、マゼンダはその砲撃と爆発に巻き込まれ、あちこちに吹き飛ばされる。
「…ああ…ッ、…うお…ッ!!」
「…あ…あぁぁ…!!」
「…がは…ッ!!」
「…ううう…!!」
相当のダメージを負ったのか、全員が立ち上がることが出来ない。
「ヒャーッハッハッハッハ…!!」
豪が再び下衆な笑い声を上げ始める。
「…どッ、…どうだああああッッッッ!!!!…お前達が落ちこぼれと見下していたこの僕がッ、…お前達の力を遥かに凌ぐ力を手に入れたんだあッ!!…もう、誰にも僕のことをバカにさせないッ!!落ちこぼれだと言わせないッ!!」
興奮状態で顔を赤らめ、ゲタゲタと笑う豪。その顔は狂気に満ち、ギラギラと野獣のように光る目は明らかに勝ち誇っていた。
「…さぁて…!」
一頻り笑った後、豪はゆっくりと溜め息を吐いたかと思うと、
「じゃあ、今度は僕の力を味わってもらおうかな…!」
と言うと、その右手をグンと前方、つまり、勇介達が倒れている方向へ突き出した。その時だった。
「…なッ、…何だッ、あれはッ!?」
ケンプが驚いて声を上げる。
勇介達の背後には、真っ黒に渦巻くひずみのようなものがあった。
「…君達には、…ここで消えてもらうよ…!!」
豪の目がギラリと光った途端、ゴオオオオッッッッ、と言う物凄い音と共に、勇介達はそこへ引き込まれそうになった。
「…そうは…、…させるかああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時、マゼンダが渾身の力で立ち上がり、洋服の胸の部分を引き裂いたかと思うと、そこに内蔵されていたスイッチを押した。その途端、ピッ、ピッ、と言う音が聞こえ、
「…うう…ッ!!」
とマゼンダが苦しそうに呻き始める。
「…マッ、…マゼ…ン…ダ…!?」
みるみる姿を変えて行くマゼンダを呆然と見つめるケンプ、勇介、めぐみ。
その時には、それまでの美貌を持ち合わせていた彼女の面影はどこにもなく、冷たい機械や回路が剥き出しになった、ロボマゼンダの姿がそこにはあった。