歪んだ友情W 第8話
「…クックック…!!」
右手を不自然な形に折り曲げ、ポタポタと真っ赤な血を滴らせる豪。だが、その目は不気味に光り、低い笑い声を上げている。
「…そうだった…。…僕は、…僕は、大教授ビアス様の片腕となったんだ。…そして、…ボルトの次期大教授になったのだああああッッッッ!!!!」
そう言うと豪は、目の前にいる勇介達を睨み付けるようにし、
「…こんな、…こんな虫けらにやられる僕じゃない!!」
と言った。
「その腕で、お前は何が出来ると言うんだッ!?」
レッドファルコンに変身している勇介が怒鳴る。すると豪は、不自然に折れ曲がった右手を見つめ、
「…出来るさ…!」
とニヤリと笑った。そして、
「…んんんん…ッッッッ!!!!」
と唸り声を上げ始めた。その途端、
ゴキュッ!!ゴキュゴキュッッッッ!!!!
と言う不気味な音が辺りに響き渡る。
「…なッ、…何だとオオオオッッッッ!!??」
その光景を見ていた恐獣ケンプが目を大きく見開き、信じられないと言う表情で声を上げた。
「…クックック…!!」
豪の右手。不自然に折れ曲がっていたそれが、何事もなかったかのように元通りになっていたのだ。
「僕をいつまでもバカにするなよ…?」
その目が更に不気味に光ったその時だった。
ゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
激しい轟音と共に、辺りに強烈な風が吹き始めた。
「…うう…ッ!!」
勇介はその風を懸命にかわそうと試みる。だが、どんなに踏ん張っても少しずつ体が後ずさって行っているのが分かった。
「めぐみィッ!!」
めぐみが吹き飛ばされそうになっているのを見つけた勇介は、ゴロゴロと転がっているめぐみを抱きかかえると、めぐみを庇うようにしてその風を避け始めた。
「…ゆ、…勇…介…」
ブルードルフィンのマスクの中で、めぐみの目が恐怖に怯えているのが分かった。
「…こいつは、…豪の邪悪な意思だ…!」
ごうごうと蠢く空気の流れの奥で、豪の目だけがギラギラと輝いて見える。
「…あいつは…。…豪は本当に悪魔になったんだ…!!」
「認めんッ!!認めんぞオオオオッッッッ!!!!」
突然、耳を劈くような怒鳴り声が聞えたかと思うと、ケンプが激しい衝撃波の中でもがき始めた。
「…あんな…ッ、…ボルトにお情けで入れてもらったようなあんなクズに…ッ!!…オレが負けるわけはないのだああああッッッッ!!!!」
「…クズ…だと…?」
豪の顔がピクリと動く。そして、
「いつまでも僕をクズ扱いするなッ!!お前の方がクズのくせにッ!!」
と言うと、
「僕の恐ろしさを、思い知らせてやるッ!!」
と言い、右手をグンと突き出した。その瞬間、
「うぐ…ッ!?」
とケンプが呻いたかと思うと、体をビクンと硬直させた。
「ケンプッ!?」
勇介が驚いて声を上げる。
「…ク…ッ!!」
激しい風の中で、巨体な紺色の野獣が蠢く。
「…み…ッ、…身動きが…ッ、…取れん…ッ!!」
「…クックック…!!」
すると豪は、突き出している右手のひらをゆっくりと握り始めた。その瞬間、
「うぐッ!?」
とケンプが呻いたかと思うと、
「…あ…ああ…ッ!!…ぁぁぁぁああああッッッッ!!!!」
と悲鳴を上げ始めたのだ。
「…かッ、…体が…ッ!!…締め付けられるッ!!…くッ、…苦しいッ!!」
「止めろオオオオッッッッ、豪オオオオッッッッ!!!!」
勇介が駆け出す。だが、その瞬間、
「豪様の邪魔はさせねえぜッ!!」
と、イエローライオンに変身している丈が飛び出して来た。
「だありゃああああッッッッ!!!!」
宙を舞い、勇介に襲い掛かろうとする豪。その時、勇介は、
「すまんッ、丈ッ!!」
と言ったかと思うと、ライブラスターを取り出し、その照準を丈へ向けた。そして、
「ライブラスターッ!!」
と、その引き金を引いた。
ズガアアアアンンンンッッッッ!!!!
衝撃音がして、丈のイエローライオンのスーツがスパークし、
「うわああああッッッッ!!!!」
と、丈がバランスを崩して地面に崩れ落ちる。
「おのれッ!!」
今度はグリーンサイに変身している純一が飛び出し、
「サイカッターッ!!」
とV字型のブーメランを飛ばして来た。
「それもお見通しだッ!!」
緑色に眩く光る2つのブーメランに向かって勇介が突っ込んで来る。
「うおおおおッッッッ!!!!」
「なッ、何ィッ!?」
純一の目の前に勇介が迫った。その瞬間、
「はああああッッッッ!!!!」
と勇介が上空へ飛び上がった。
「…んな…ッ!?」
純一の目の前には、自身が放ったサイカッターが。そしてそれは、驚いて目を見開いている純一にまともにぶち当たった。
ズガアアアアンンンンッッッッ!!!!ドガアアアアンンンンッッッッ!!!!
激しい衝撃音がして、
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、純一が悲鳴を上げて吹き飛ぶ。
「…おのれえッ!!」
ブラックバイソンに変身している鉄也がバイソンロッドを構え、
「うおおおおッッッッ!!!!」
と叫び声を上げて突っ込んで来る。
「お前の技も見切ってるぞッ!!」
勇介はそう叫ぶと、ファルコンセイバーを取り出した。
「でやああああッッッッ!!!!」
鉄也がバイソンロッドを振り回す。
「ふんッ!!」
勇介がファルコンセイバーでそれを受け止めると、
ギイイイインンンンッッッッ!!!!
と言う鋭い金属音が辺りに響いた。
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
次の瞬間、勇介が雄叫びを上げ、鉄也のバイソンロッドを振り払う。
「…あ…」
鉄也がよろめく。その目の前には、真っ赤に光るファルコンセイバーが。
「ファルコンブレークッ!!」
真っ赤な光が真っ直ぐに振り下ろされる。
ズバアアアアンンンンッッッッ!!!!
その真っ赤な閃光は鉄也を真っ二つに切り裂かんばかりに振り下ろされ、鉄也のブラックバイソンのスーツが爆発を起こした。
「ぐぅわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
激しい火花の中で、鉄也がもがく。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
かつては仲間だった戦友と刀を交えなければならない、そんな虚しさを感じていたその時だった。
「そこまでだッ、レッドファルコンッ!!」
丈の声が聞こえたような気がした。
「…ッ!?…めッ、めぐみィッ!?」
めぐみの背後にイエローライオンに変身した丈が立っていた。いや、正確にはジョウヅノーが立ち、冷たく光る巨大な剣の切っ先を、めぐみの首に宛がっていたのだった。