歪んだ友情W 第9話
「…ククク…!!」
ブルードルフィン・岬めぐみの背後に立ち、勝ち誇ったようにニヤニヤとその不気味な笑みを浮かべるイエローライオン・大原丈の遺伝子から作られた頭脳獣・ジョウヅノー。
「無駄な抵抗は止めて、豪様に跪けッ、レッドファルコンッ!!」
ジョウヅノーの右手には巨大な剣が握られ、それをめぐみの首筋に宛がっていた。
「めッ、めぐみィッ!?」
自分がイエローライオン・大原丈やブラックバイソン・矢野鉄也、グリーンサイ・相川純一に気を取られている間に、めぐみを人質に取られてしまった格好になってしまった。
「…ばッ、…バカかッ、貴様はああああッッッッ!!!!」
豪の能力のせいで身動きが取れなくなっている恐獣ケンプがその巨体をくねらせ、大声で怒鳴った。
「目の前の敵に精一杯で、めぐみが置かれた状況に気付かんかったのかああああッッッッ!!!!」
「…う…、…うう…ッ!!」
勇介は思わず唇を噛んでいた。ケンプが言ったこと、まさにその通りだったからだ。そんな勇介の態度に更に苛立ったのか、ケンプは更に目を大きく見開くと、ワナワナと体を震わせ、
「…やはり、…貴様はただのバカだ…!!…オレのライバルにもならない、…ただの大馬鹿者だったのだああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と絶叫した。
その時だった。
「止めてええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
めぐみの甲高い叫び声が辺りに響き渡った。
「…お願い…。…こんな状況になっても、…ケンカなんか…、…しないで…!!」
いつの間にか、イルカをあしらったブルードルフィンのマスクが外れ、めぐみの素顔が見えていた。その大きな瞳からはポロポロと涙が溢れ続けている。
「…ヒャーッハッハッハッハ…!!」
豪の狂ったような笑い声が耳を劈いた。
「…どッ、…どうだああああッッッッ、虫けらどもおおおおッッッッ!!!!」
その時、豪の目がギラリと光り、それまでの狂った表情が一変、怒りの形相に変わった。
「…よくも…ッ、…よくもッ、この僕を今まで散々バカにしてくれたなああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そう言った瞬間、豪の邪悪なオーラが物凄い音を立てて爆発し、衝撃波となって勇介に向かって行った。
「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その爆風に、勇介は吹き飛ばされる。
「ジョウヅノーッ、やれッ!!」
「…ッ!!!!!!??」
勇介が我に返り、物凄い勢いでめぐみの方を振り向いた時だった。
眩しい閃光が煌いたと思ったその瞬間、
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言うめぐみの絶叫が耳を劈いた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
大きく見開いた勇介の視界に、めぐみがクルクルともんどりを打っている姿が飛び込んで来た。
「…め…、…めぐみイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ジョウヅノーが持っていた大きな剣が下から上へと煌き、めぐみの胸を切り裂いた、ように見えた。
「…ゆ…す…け…」
めぐみの目から涙が零れ落ちる。その時、めぐみの体が青白く光ったかと思うと、その姿が徐々に小さくなって行き、
…カンッ!!…カラン…、…カラン…!
と言う乾いた音を立て、地面に1つの青い球体が転がった。
「…めぐみ…。…めぐみイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その青い球体に勇介が近寄ろうとした瞬間、
ドガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う物凄い衝撃を受けた。そして、
「うぐぅわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う悲鳴を上げて、勇介の体が背後に吹き飛ぶ。
「…じょ、…ジョウ…ヅノー…おおおお…ッッッッ!!!!」
目の前に、大きな剣を持ったジョウヅノーがニヤニヤしながら立っている。その手には、めぐみが姿を変えた小さな青い球体が握られていた。
「心配すんなよ、勇介。めぐみは死んじゃいねえんだからさ!」
「…何…?」
一瞬、ジョウヅノーの言葉の意味が分からなかった。すると、そこへ本物の丈がやって来て、
「そうそう。めぐみには悪リィけど、姿をちょっと変えてもらったってわけ!」
と言うと、
「耳元でぎゃあぎゃあ喚かれて、いつまでもうるせぇだろ?」
と首をすくめた。
「つまり、めぐみさんは大事な人質ってわけですよ!」
鉄也もジョウヅノーと丈の横へやって来る。
「そう。勇介さん、あなたを倒すためのね!」
鉄也の横へ純一までもが揃った。その瞬間、4人がライオンバズーカ、バイソンロッド、サイカッターを構えていた。
「…ッ!!!!!!??」
勇介が立ち上がったその瞬間だった。
「「「「テトラインパクトオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」」」」
4人の叫び声と同時に、超巨大なエネルギー弾が勇介に向かって飛んで来た。そして、それが勇介にぶち当たった次の瞬間、
ドゴオオオオオオオオンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!ドガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う物凄い爆発が起き、
「うぐぅわああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言う勇介の絶叫が業火の中で響き渡った。
「ゆッ、勇介ええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ケンプが絶叫し、
「ヒャーッハッハッハッハ…!!」
と、豪が狂ったように笑う。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
やがて、業火の煙が消え、視界が晴れ渡った時、その中から勇介が姿を現した。
「…う…、…あ…、…あぁぁ…!!」
剥き出しになった顔には煤が付き、黒ずみ、爆発の衝撃を窺わせる。そして、光沢のある鮮やかな赤と白であしらわれたレッドファルコンのスーツのあちこちが裂け、そこから回路が剥き出しになり、しゅうしゅうと煙を上げていたのだ。
…ガンッ!!…ガラン…ッ!!
勇介の右手からファルコンセイバーが離れ、地面に落ち、乾いた音を立てて転がった。
そして。
「…う…、…うう…ッ!!」
勇介が呻いたかと思うと、その体がぐらりと前のめりになり、ゆっくりと崩れ落ちて行ったのだった。