歪んだ友情W 第10話
シュウウウウ…。
光沢のある鮮やかな赤と白の生地であしらわれたレッドファルコンのスーツは、今では既にその機能と光沢を完全に失っていた。丈、ジョウヅノー、鉄也、純一によって繰り出されたテトラインパクトによって大きなダメージを受け、そのスーツのあちこちが爆発して焦げ、剥き出しになった回路からはしゅうしゅうと煙が立ち込めていた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
恐獣ケンプが目を見開き、あまりの光景に言葉を失う。そして、
「…ククク…」
と、ドクター・オブラーこと豪が低く笑ったかと思うと、
「…アヒャッ!!…ヒャーッハッハッハッハ…!!」
と狂ったように下衆な笑い声を上げた。
「…遂にッ!!…遂にライブマンを全員倒したぞッ!!…僕はッ!!…僕はッ、名実共にビアス様の後継者になったのだああああッッッッ!!!!アーッハッハッハッハ…!!」
「…ゆ…、…勇介…!!」
豪の超能力で身動きが取れないケンプが声を震わせる。
「…勇介…ッ!!…貴様ッ、…本当にやられてしまったのか…ッ!?…貴様ッ、…貴様はそんなに弱いやつではなかろうッ!!…立てッ!!立つんだッ、勇介ええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時だった。
「うるさいよッ、ケンプッ!!いや、落第生ッ!!」
そう言った豪が、突き出している右手のひらを更にギリギリと握り始めた。その瞬間、
「うぐわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、ケンプが体を仰け反らせて絶叫する。
「…ククク…!!」
ギラギラと瞳を光らせ、不気味に笑い続ける豪。
「…ケンプ…。…お前をこのまま握り潰してやるのもいいが…」
そう言った時、
「おい、ジョウヅノー!」
と豪がジョウヅノーを呼ぶ。ジョウヅノーの右手には、めぐみを球体に変えたあの剣が。
「この剣はビアス様から頂いたもの。最も優秀と認められたものに与えると仰っておられた」
そう言って、豪はニヤリとすると、
「残念だったな、ケンプ。この剣は、お前も手にすることが出来たのに…!」
と言い、自分よりも大きいのではないかと思われるほどのその剣の切っ先をケンプに突き付けた。
「…ッ!?」
その冷たく銀色に光る剣の切っ先に、ケンプは目を見開く。そして、
「…な、…何をする気だ…ッ!?」
と言った。
「フン!」
豪は鼻で笑うと、
「お前を切り裂くのも良し、めぐみと同じように球体に変化させても良し…。…どうしてやろうかな…」
と言った。
「だが、その前に…」
豪はそう言うと、
「丈ッ!!勇介を僕のラボへ連れて行ってくれ!」
と言った。
「…え?」
その言葉に、丈は一瞬、言葉を失う。だがすぐに、何かに気付いたかのようにニヤリとすると、
「…やれやれ…。…お前もなかなか欲張りだなぁ…!」
と苦笑した。
「フフッ!」
まるで恋人のような眼差しを向け、丈を見つめる豪。そして、
「…また、…いいことを思い付いたからさ…!」
と言うと、目を開けることのない勇介を侮蔑の眼差しで見下ろし、
「コイツの大事なところから溢れ出す淫猥な液体を使い、もう1体頭脳獣を作り出す。そして、丈とジョウヅノー、鉄也、純一と合わせてオブラー四天王からオブラー五将へ格上げするのさ!…そして、コイツは一生、僕達の奴隷として使うのもいいかも…!」
と言った。
「あいあい。一度言い出したら聞かないかわいい豪様のためだ!」
丈はそう言うと、ぐったりと倒れている勇介をひょいと担ぎ、
「じゃ、先に帰ってるぜ?」
と言うと、豪にキスをした。そして、ジョウヅノー、鉄也、純一と共に姿を消した。
「…う…、…ぐ…うう…ッ!!」
その時、ケンプがブルブルと体を震わせる。
「…オレは…ッ!!…オレはッ、今までいったい、何をやって来たと言うのだ…ッ!!」
「え?」
その言葉に、豪が声を上げる。
「…ビアス様を信じ、…ビアス様のために全てを投げ出し、付き従って来た。…なのに…ッ!!…なのにオレは今、そのビアス様に殺されようとしているッ!!…だったら…ッ!!」
その時だった。
「…なッ、…何ィッ!?」
ケンプが体をブルブルと震わせながら、豪の呪縛を解こうとし始めたのだ。
「…だったらッ、…オレが豪を倒しッ、…そしてッ、…ビアスも倒すッ!!」
「…ケッ、…ケンプッ!?」
みるみるうちに、豪の握られた右手が開かれて行く。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
豪の顔が恐怖に引き攣って行く。そして、
「…ビ、…ビアス様…!!」
とビアスの名を呼び始めた。
「…ビアス様…ッ!!…ビアス様ああああッッッッ!!!!」
その時だった。
ドガアアアアアアアア…ッッッッッッッッ!!!!!!!!
激しい雷鳴のような音が聞こえたかと思った次の瞬間、
「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言うケンプの絶叫が聞こえた。
激しい電撃の帯がケンプの体に絡み付き、その中でケンプが断末魔の悲鳴を上げているのが分かった。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
豪はぺたんと尻餅をつき、あまりの恐怖に言葉を失う。
「…ビッ、…ビアス…うううううううう…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ケンプが右手を懸命に空高く伸ばそうとする。
「…オレや、…ライブマンが倒れたとしても…ッ!!…いつか必ず、…お前に報いが来るッ!!…必ずだああああッッッッ!!!!…ククッ、…アハッ、アーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!」
ケンプの高笑いが辺り一面に響き渡ったその瞬間、
バリバリバリバリイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う激しい電撃が再びケンプの体に降り注いだ。
「ひぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ビィアァスウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ケンプの断末魔が聞こえたその瞬間、
ドオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンンンンンンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
と言う爆発音と共に、ケンプの体が爆散した。
「うわああああッッッッ!!!!」
その激しい爆風に、豪がゴロゴロと地面を転がる。
「…ビアス様…。…恐ろしいお方だ…!!」
辺りに静寂が戻った時、豪は呆然とその場に立ち尽くしていた。