歪んだ友情W 第23話
「…あ…!!…あぁぁ…!!」
ビクンッ、ビクンッ、と体を小刻みに跳ねらせる勇介。
レッドファルコンの光沢のある鮮やかな赤と白を基調としたスーツは既にぐっしょりと濡れ、薄茶色に汚れ切っていた。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
真っ赤になった顔、汗と涙と涎まみれの顔の瞳は輝きを失い、虚ろになっていた。
そんな勇介の2本の足の付け根部分。勇介の男としての象徴・ペニス。レッドファルコンのスーツを切り裂かれ、そこから真っ直ぐに飛び出していたそれも今は完全に萎んでいた。そして、その周りを淫猥な液体が覆い、強烈な異臭を放っていた。
「…ウフフフフ…!!」
そんな勇介のペニスの先端に取り付けられた吸引器。その黒いゴム状のチューブの反対側の先に取り付けられた試験管には、勇介が吐き出した淫猥な液体が大量に入っている。そんなそれを、豪が目をギラギラさせ、口元には不気味な笑みを浮かべてしげしげと眺めていた。だが次の瞬間、
「…プッ!!…あひゃッ!!ヒャーッハッハッハッハ…!!」
と、火が付いたように笑い出し、体をバタバタさせて付近を狂ったように歩き回った。
「…つッ、…遂にッ!!…遂にやったぞッ!!…僕は、勇介からも淫猥な液体を大量に搾り取ることに成功したんだああああッッッッ!!!!」
「…う…う…う…う…!!」
ブルブルと震える体を何とか起こそうと勇介が動く。だが、
「おうッ!?」
と言ったかと思うと、再び台の上にぐったりと伸びた。
何度も何度も射精させられ、体が鉛のように重くなってしまっている。それは体力的な問題だけではなく、全ての仲間を、かつての仲間だった豪と言う人間に奪い取られ、今まさに、自身のプライドをもへし折ったと言う絶望に似た感覚が勇介を包み込んでいたのだ。
「…さぁ、…豪様…」
その時だった。
イエローライオン・丈と同じ姿をしたジョウヅノーが言ったかと思うと、
ジュボッ!!
と言う音を立てて、勇介のペニスの先端に付いていた黒いゴム状のキャップを取り外した。そして、それを豪が持っている試験管から外し、近くにあったデスクの上に置くと、代わりに脳を象った物体・頭脳獣を作り出すそれを手に取った。
「…さぁ、…豪様…。…勇介から搾り取ったこの液体を使って、オレのように頭脳獣を作り出して下さい…!!」
「…ああ…。…分かってる…」
「…止めろ…!!」
そう言っても無駄なことは、勇介自身も分かっていた。もう、体も心も動かない。今、勇介自身に出来ることは、目の前で自分のコピー体である頭脳獣が作り出されるのを見つめることだけだった。
「…ククク…!!」
豪は低く笑いながら、ジョウヅノーが差し出した頭脳獣の元となる脳に勇介の淫猥な液体を掛ける。
「…止めろ…ッ!!…止めろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
叫び声を上げる勇介。だが豪は、
「カオスファントムエネルギー、照射ッ!!」
と言ったかと思うと、その指に填められていた指輪のようなものを突き出した。その瞬間、眩しい光が飛び出し、脳を象った物体を包み込んだ。そして、そこから人間のような姿のものが現れた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
勇介は目を大きく見開き、その光景を眺めている。
「…頭脳獣・ファルコンヅノー…!!」
自分と同じ声。光沢のある鮮やかな赤と白を基調としたスーツに身を包んでいる。背格好も顔も全く同じ姿の人間がそこにはいた。
「…オ、…オレが…、…2人…ッ!?」
勇介が言う。
「…これで…。…これでオブラー四天王がオブラー五将へ格上げとなる…」
すると豪は、クルリとジョウヅノーや丈、鉄也、純一の方を振り向き、
「お前達、ご苦労だったな。その首輪を外していいよ」
と言った。すると4人はそれぞれの首元へ両手を伸ばすと、首に巻かれた、豪曰く爆弾だと言っていたそれを取り外し、無造作に床の上に投げ捨てたのだ。
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
勇介は思わず目を閉じ、体を強張らせる。
「…え?」
爆弾なら、ちょっとした衝撃を与えただけで爆発するのに、何も起こらない。
「…な…ん…だ…?」
豪が作り方を誤るとも思えない。
「…まさか…!!」
最悪の予感が勇介の頭の中を過ぎった時、
「ヒャーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!」
と言う、豪の下衆な笑い声が耳を劈いた。
「…い、…今頃、気付いたのかいッ、勇介ッ!?」
豪はそう言うと、丈にしっかりと抱き付き、
「僕がこんなに大好きな丈に爆弾を付けさせるわけないじゃないかッ!!」
と言った。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
騙されていたことに気付いても、最早、時既に遅し。
「あ〜あ〜、勇介も人が好すぎるからなぁ…」
丈が苦笑して言う。
「オレらに爆弾が取り付けられているって聞いて、まともに戦えなかったんじゃねえの?そうじゃなきゃ、そこまでボロボロにやられねえよなぁ…!」
丈はそう言いながら、ゆっくりと勇介に近付いて行く。
「…な、…何だよ…!?」
心なしか、勇介の声が震えている。そんな勇介にお構いなしに、丈はゆっくりと勇介の体に伸し掛かる。
「…止めろ…!!」
最早、勇介の頭の中には恐怖とパニックしかなかった。そして、丈の顔を見た瞬間、ぎょっとなった。
「…じょ…、…丈…ッ!?」
「…勇介…」
丈はそう言うと、勇介の唇に自身の唇を押し当てた。
「…ッッッッ!!!!!!??」
あまりに突然のことに、勇介は目を見開いたまま、固まる。
「…フッ!!」
そんな勇介を見て、丈は笑うと、
「お〜い、豪。ファルコンヅノーを連れて、ビアス様に挨拶して来いよ!」
と言い、
「…オレは、…勇介と愛し合うからよ…!!」
と言ったのだ。
「…ったく…、…しょうがないなぁ…!!」
豪は苦笑すると、
「丈ッ!!浮気はダメだからねッ!!」
と言うと、
「行くぞ、ファルコンヅノー!!ジョウヅノー!!鉄也ッ!!純一ッ!!」
と言い、その部屋を後にした。
「…さぁ…って…!!」
丈は目をギラギラさせて勇介を見つめている。
「…止めろ…!!…頼むから…、…もう、…止めてくれ…!!」
丈のその野獣のような目に、勇介は完全に怯えていた。すると丈は、
「…やっと、2人きりになれたな、勇介…!!」
と言いながら、勇介の体の上に伸し掛かり始めた。
「…な…ッ!?」
何かを叫ぼうとしたその瞬間、勇介の唇は丈の唇によって再び塞がれていた。