どっちもどっち 第11話

 

 それから数日が過ぎた。

「はああああッッッッ!!!!

 いつものようにブルーマスクにオーラチェンジをして、鍛錬に励むアキラ。

「はああああッッッッ!!!!はいッ!!せいッ!!

 マスキートンファーや、剣タイプに変形させたレーザーマグナムをぶんぶんと振り回す。

「はああああッッッッ!!!!おりゃああああッッッッ!!!!

 ぴょんぴょんと軽快に飛び跳ねるたびに剣タイプのレーザーマグナムがキラキラと輝く。

「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 そんなアキラの集中ぶりを、レッドマスク・タケルやイエローマスク・ハルカ、ピンクマスク・モモコが唖然として見ていた。そのくらい、アキラは鍛錬に集中していたのだ。

 

 正直、数日前のことが頭から離れないでいた。

「お前が本気で好きなんだよッ、アキラああああッッッッ!!!!

 アキラの体を強く抱き締め、大声で叫びながらアキラの股間に顔を埋めたブラックマスク・ケンタ。

(…ったくぅッ!!冗談じゃないよッ!!

 アキラのイライラが更に募る。

(僕は男だぞッ!?同じ男に好きだって言われてもッ!!…そんな感情、持ったことないよッ!!

 確かに、ケンタに対しても、ましてや、タケルに対してもそんな感情を持ったことはなかった。

「…はぁぁ…」

 次第に鍛錬の熱も冷めて来て、ガックリと項垂れるようにその場をウロウロし始める。剣タイプのレーザーマグナムと、マスキートンファーがだらりと垂れ、地面を削った。

(…確かに、タケルは僕の憧れだよ?…スタイルもいいし、カッコいいし、何を着てもおしゃれで似合うし…。…でも…)

 その時、アキラははっと顔を上げる。

(…ケンタ…?)

 遠くにいるケンタを思わず見やるアキラ。

「…」

 アキラに全力で拒否されたことが相当堪えているのか、このところのケンタはあまり元気がない。鍛錬をしていても、どことなくボンヤリとしているようだ。

(…ここ数日、ケンタと話もしていないな…)

 その時だった。不意にケンタがアキラの方を見た。

「…ッ!?

 アキラは思わず顔を背けた。

(…だ、だって…!)

 アキラはブルーマスクのマスクの中で、顔が真っ赤になっているのが分かった。

(…今更、ケンタに何て言えばいいんだよッ!?「ケンタぁ〜♪」なんて手を振れるわけないだろうッ!?

 と、その時だった。

「危ないッ、ケンタああああッッッッ!!!!

 レッドマスクにオーラチェンジしているタケルの叫び声が、アキラを現実に戻した。そして、

 ドオオオオオオオオンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う激しい爆発音が辺り一帯に響いた。と同時に、

「ぐわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言うケンタのやや甲高い絶叫が響いた。

「…ッ!?

 物凄い爆風が当たり一面に広がり、それはアキラの体をも包み込む。

「ケンタッ!?

 イエローマスクにオーラチェンジしているハルカの声。と同時に、

「キャアアアアッッッッ!!!!

 と言うピンクマスクにオーラチェンジしているモモコの声が耳を劈いた。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 爆発が起こった場所で舞い上がっていた爆風と砂塵がゆっくりと晴れた時、アキラは信じられない光景を目にした。

「…」

 ブラックマスクにオーラチェンジしたケンタがその中から現れた。

 ケンタはその時、爆薬を仕込んだ鉄球が飛んで来るのをその強靭な体で弾き飛ばしていた。それが、アキラを見たせいでほんの一瞬の隙が出来た。気が付いた時には、1つの鉄球がケンタの目の前にあり、それが体にぶち当たり、爆発を起こしたのだった。

「…ケ…ンタ…!?

 仁王立ちになっているケンタ。やがて、ガクリと膝が動くと、ゆっくりと崩れるようにそのまま地面へ倒れ込んだ。

「ケンタアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!

 タケル、アキラ、ハルカ、モモコが弾かれたようにケンタのもとへ走る。

「…」

 マスクが外れ、中から血だらけのケンタの顔が現れる。

「ケンタッ!!しっかりしろッ!!ケンタああああッッッッ!!!!

 マスクを外したタケルがケンタを抱き起こし、必死に呼びかける。

「ケンタッ!!

「ケンタぁッ!!

 タケルやケンタと同じようにマスクを外したハルカとモモコがケンタの手を握り、必死に呼びかけている。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 3人の後ろで、これまた同じようにマスクを外したアキラがガタガタと体を震わせ、呆然とケンタを見つめていた。

「…あ…」

 ゆっくりとケンタの顔が動く。

「…ケ、…ンタ…!!

 いつの間にか、目からはポロポロと涙が伝っていた。

「…ア…キ…ラ…」

 小さく自分の名前を呼ぶケンタ。そして、小さく微笑んだかと思うと、目を閉じ、全身から力が抜けた。

 

「…一体、どうして…?」

 姿レーシングクラブの一室。そこは傷付いた戦士を治療する、一種の病室になっていた。そして今、そこには酸素マスクを付けたケンタが、全身に包帯やガーゼを取り付けられた状態で静かに横たわっていた。

 その姿を見て、ハルカが涙ぐむ。

「…ケンタ、…この頃、鍛錬に集中していなかったのよね…。…何か、ずっと悩んでいたみたい…」

 モモコが呟くように言う。

「…」

 アキラは呆然と椅子に座り込んだまま、一言も声を発せずにいた。

「…取り敢えず、2人とも休んで来いよ。…ここは、オレとアキラで見るから」

 タケルがそう言うと、ハルカとモモコは静かに頷き、その部屋から出て行った。

「…」

 呆然とケンタを見つめているアキラ。

「…アキラ…」

 タケルがアキラに声をかける。

「…話してくれないか、…ケンタとのこと…」

 

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