どっちもどっち 第24話

 

 翌日の夜――。

 コンコン…。

 のんびりと寛いでいたブラックマスク・ケンタ。上から下まで黒のジャージに身を包み、ベッドの上でその大きな体を横たえてゆっくりと雑誌を読んでいた。そろそろ寝ようかと思っていたその時、部屋のドアをノックする音が聞こえたのだ。

「…?…開いてるよぉ…?」

 気だるそうに顔を上げ、声を上げる。だが、誰も入って来る気配がない。

「…部屋の鍵ッ、開いてるってばッ!!

 ちょっと苛立って、ケンタが大声を上げる。だが、一向に誰も入って来る気配がない。

「…ああああッッッッ、…もうッッッッ!!!!

 苛立ってケンタはそう叫ぶと雑誌を投げ飛ばし、頭をガシガシと掻きながらめんどくさそうに立ち上がると部屋の入口に向かい、ドアを開けた。

「…ッ!?

 その瞬間、ケンタはその場に立ち尽くした。

「…あ、…あの…!」

 目の前にいたのはブルーマスク・アキラ。しかも何と、パジャマ姿だったのだ。

「…こ、…こんな遅い時間に、…ごめん。…で、…でも…ッ!!

 もじもじとしながら、顔を真っ赤にして言うアキラ。周りに気を遣っているのか、小声で言う。

「…な、…何だか、…ケンタと、…一緒に…いたかった…から…。…って、ケンタああああッッッッ!!??

 アキラを見下ろしたまま、微動だにしないケンタを見て、さすがに不審に思ったのか、アキラが声をかけた。

「…どッ、どうしたのッ!?…ちょっとッ、…ケンタってばッ!!

 その時だった。

 アキラの頬に、冷たい雫が落ちて来たのだ。

「…ッ!?

 思わずそれを拭ったアキラは、それを見た途端、目を大きく見開いた。そして、

「ケッ、ケンタああああッッッッ!!!!鼻血が出てるよオオオオッッッッ!!!!

 と叫んだ。するとケンタは、

「…う〜んんんん…ッッッッ!!!!

 と声にならない声を上げ、フラフラと後ずさったかと思うと、ベッドの上に大の字にひっくり返ったのだった。

 

「…あ゛あ゛あ゛あ゛…ッッッッ!!!!

 暫くして、ベッドの上に起き上がったケンタは、首の後ろをトントンと叩きながら言った。鼻の中に入れたティッシュの紙縒りが何ともみっともない。

「…はぁぁ…、…死ぬかと思ったぁぁぁぁ…ッッッッ!!!!

「…だ、大丈夫?」

 ケンタの横に座り、心配そうに見上げているアキラ。するとケンタは、

「大丈夫なわけないだろうがああああッッッッ!!!!

 と、顔を真っ赤にして怒鳴った。

「だいたい、その格好は何なんだよッ、アキラぁッ!?

「…え?」

 アキラは自分の姿をグルリと見回し、

「…パジャマ…、…だけど…?」

 と返答をする。

「んなこたぁ、分かってるよオオオオッッッッ!!!!

 すかさずケンタがアキラを抱え込むようにする。

「んなッ!?なッ、何だよぉッ、ケンタああああッッッッ!!??

 ガッシリとしたケンタの腕が、アキラを抱え込んで離さない。そんなケンタの拘束から逃れようと、アキラは必死に体をバタバタと動かす。

「そのッ、殺人的なかわいさは何なんだよって聞いてんだよおおおおッッッッ!!!!

「…え?」

 その瞬間、アキラはきょとんとした表情になり、まじまじとケンタを見上げた。ケンタは相変わらず顔を真っ赤にしている。

「…かわいい?」

「…お、…おう…ッ!!…殺人的に…な…ッ!!てか、襟の開いたパジャマは反則だぞ、アキラぁッ!!

 ケンタはそう言うと自ら布団の中に潜り込み、アキラを強引に引き摺り込んだ。

「わああああッッッッ!!!!

 アキラは何も抵抗出来ないまま、気が付けば、ケンタにしっかりと抱き締められていたのである。

「…ケ、…ケン…タ…?」

 ケンタの腕の間からそっと顔を覗かせるアキラ。その時だった。

 チュッ!!

 くすぐったい音と同時に、ケンタはアキラにキスをしていた。

「…かわいいアキラの肌が見えるのは、…オレにとっては殺人行為なんだぜ?…ムラムラしちまう…!!

 その言葉に、俄かに顔を真っ赤にするアキラ。そして、そっと右手を動かした時、何か固いものにぶつかったのが分かった。その途端、

「んぐッ!?

 と言う声と同時に、ケンタがビクリと体を跳ねらせたのである。

「…ケンタ、…勃ってる…!?

 アキラの右手に当たったもの。それは、黒いジャージの中で大きく勃起し、ゴムの部分を大きく押し開けようとしていたケンタの股間のそれだったのである。

「…アキラが、あまりにかわいいものだから、ガマンしたくてもガマン出来なかったのさ…!!

 ケンタは体を動かし、ベッドの上に仰向けに寝転がった。そんなケンタの股間を、アキラが静かに撫で続ける。

「…んッ!!…んく…ッ!!…くあ…ッ!!

 アキラの手が優しくケンタの股間の上で這い回る。快感の電流が流れ、ケンタがピクピクと体を反応させている。

「…な、…なぁ…、…アキラ…」

 自分の右側にいるアキラを右腕で抱き締めるようにし、その頭を優しく撫でながらケンタが声を上げた。

「うん?」

 ケンタの股間を撫で続けながら、アキラがケンタを見つめる。

「…寝る時は、…いつもパジャマなのか?」

 するとアキラは伏し目がちになり、

「…おかしいかな、こんなの?」

 と言った。その自信のなさそうな声に、ケンタは思わずアキラをギュッと抱き締める。そして、

「…アキラはアキラらしく、って前にも言ったろ?」

 と言った。その顔はニコニコと優しく微笑んでいる。

「…オレにとってはかなり拷問級な状況だけど、…アキラがそれがいいって言うのなら、それでいいんじゃないか?」

「…ケンタぁ…ッ!!

 ニッコリとしたアキラがケンタの胸に再び顔を埋める。そんなアキラの頭を、ケンタは静かに撫で続けていた。

「…ねぇ、…ケンタぁ…」

 暫くの沈黙があった後、アキラがケンタを呼んだ。

「ん?」

 その瞬間、ケンタの心臓がドキッと高鳴った。

「…ケンタの、…オチンチン、…食べたい…!!

「…いいぜ…?…食べて…くれよ…!!

 ケンタがそう言った瞬間、ケンタの体が光り、ブラックマスクにオーラマスクしていた。

 

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