処刑!メガレッド 第1話

 

 21世紀に入ったばかりの日本は何者かの侵略によって大混乱に陥っていた。

 平和だった大都市に突如現れた魔物の群れ。

 人々の目の前で魔物達は建物を破壊、略奪、そして抵抗する者の殺害と残忍極まりない行為を繰り返していた。時の政府は自衛隊にその防衛を依頼したが如何せん、戦争のための自衛隊ではない。そのために自衛隊の攻撃も魔物によってはくすぐったいものでしかなく、逆に壊滅状態に追い込まれてしまった。

 

「…なッ、…何だよッ、あいつらあッ!?

 そんな光景を、一人の学生が信じられないと言った表情で見つめている。精悍な顔付き、後ろへまとめられた髪。やや細身ながらも、その腕の筋肉はしっかりと付いており、その目は明らかに目の前の魔物をしっかりと睨み付けていた。

「…ギャ…?」

 その時、1匹の魔物がその学生に気付いた。そして、

「ギシャアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う不気味な声を上げ、ニタニタと不気味な笑みを浮かべて襲い掛かって来たのだ。

「…オレを…!!

 するとその学生は声を震わせ、右拳をしっかりと握った。

「…オレを…!!…なめるなよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 その瞬間、

 ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う物凄い音と共に、その男の右拳が魔物の腹部へ減り込んでいた。

「グボオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!??

 その魔物が不気味な悲鳴を上げ、体をくの字に折り曲げて後ずさる。だがすぐに、

「ギシャアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と、怒りに狂ったかのようにその男に再び飛び掛かって来た。するとその男はニヤリとして、

「へんッ!!何度やったって同じさッ!!

 と言うと、今度は両手をしっかりと握り締め、ファイティングポーズを取った。次の瞬間、その男が視界から消えた。

「…ッ!?

 その異変に、その魔物が辺りをキョロキョロと見回す。

「ここだここだああああッッッッ!!!!

 その声が上から聞こえたその瞬間、

「スクリュードリルセイバーッッッッ!!!!

 と言う叫び声と共に、キュイイイインンンン、と言う機械が回転する音が聞こえた。そして、

 ズガアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う物凄い音と共に、

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う断末魔の悲鳴を上げて、その魔物が爆散していた。

「フンッ!!

 爆風と激しい炎の向こうから見えて来た学生の姿。

 キラキラと輝く光沢のある鮮やかな赤を基調としたスーツのようなものに身を包んでいた。両手には真っ白なグローブ、両足には真っ白なブーツ。その真っ赤なスーツの胸元には真横に白い線が伸び、右から黒、黄色、赤、ピンク、青の四角のデザインが施されていた。

 伊達健太。今はごく普通の大学生。彼には人並み外れた正義感があり、残忍さを増す魔物達を放っておけずにいた。彼は何を隠そう、電磁戦隊メガレンジャーの一員、メガレッドとして過去に邪電王国ネジレジアと壮絶な戦いを繰り広げたのだった。今、健太の体を覆っているスーツは、健太がメガレッドにインストールした姿だった。

 その力はまだまだ健在だった。いや、正確には健太が左手に装着しているブレスレット型の変身アイテムであるデジタイザーを操作することで、健太の体をどんな激しい衝撃からも耐えられるスーツが包み込み、並外れたパワーを発揮することが出来たのだ。

 そのスーツは彼の体にピッタリと密着している。それはつまり、彼の体付きをクッキリと現わしていた。腕や胸、太腿の筋肉の付き方を隆々と浮かび上がらせていた。

 そして、健太のがっしりとした2本の足の付け根部分。

 ふくよかな膨らみを形成する健太の男としての象徴・ペニス。それは上向きに収納され、ふくよかな膨らみをうっすらと浮かび上がらせていたのだった。

「…許せねェッ!!

 魔物によって街を滅茶苦茶に破壊され、逃げ惑う人々を見るたびに、健太は怒りに体を震わせ、拳を強く握り締めた。

「…やるっきゃ、…ねえ…ッ!!

 健太は建物の陰に隠れると両手を振り翳した。

「行くぜッ!!インストールッ!!

 健太は腕に付けたブレスレッドを操作しながら叫ぶ。すると、健太の体は眩しい光に包まれた。と同時に、健太のブレスレットの中から特殊強化スーツが飛び出し、健太の体を覆った。

「行くぞオオオオッッッッ!!!!

「ギシャアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!??

 キラキラと光る鮮やかな赤色のスーツを身に纏った健太が魔物の群れの中へ飛び込んで行く。

「はああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ドガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 眩い閃光となり、次々にその魔物を薙ぎ倒し、消滅させて行く。やがて、大きな爆音と共に、

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う不気味な断末魔の悲鳴を上げて魔物達が消滅した。

「いよっしゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 笑みを浮かべて、思わずガッツポーズをする健太。その顔には玉粒の汗が浮かんでいた。

 ネジレジアと戦っていた頃の健太と、今の健太では違いがあった。

 まず、健太の体を覆うスーツ。ネジレジアと戦っていた頃には健太の頭部を守るべく、マスクがあった。だが今はそれが完全に取り除かれていた。視界を良くするため、健太が開発者に無理矢理依頼をしたためだ。その分、健太のスーツが防御力を増し、何かあった時にはバリアで健太の頭部を守るようになっていた。

 そしてもう1つ。

 そのスーツ自体が、ネジレジアと戦っていた頃に比べて、より体にピッタリ密着していると言うことだ。

「…ちゃんと、…体を鍛えてるんだけどなぁ…。…それだけ、筋肉が付いたってことか…!!

 普通の学生らしく、同級生や先輩達と酒を酌み交わすこともある。だが、暴飲暴食は避け、適度にたしなんでいた。そして、その分、スポーツジムへ通い、ストイックなほどに体作りを繰り返した。

 そのせいか、健太のメガレッドのスーツのその密着度は健太の逞しい肉体の腹筋の割れ目や腕、脚の筋肉をもくっきりと浮かび上がらせるのだった。何よりも一番目立つのは彼の腹筋の下、2本の脚の付け根の部分に密かに息づいている、健太の男としての象徴、ペニス。その形までもが密着によって今まで以上にクッキリと浮かび上がり、見ている者に妙な感情を抱かせたのは言うまでもなかった。ましてやそのスーツはかなり光沢のある素材で、人や動物を興奮させると言う赤色だった。そんなスーツを着て、健太は何匹と言う魔物を打ちのめして行ったのだ。

 普段はごく普通の大学生としてキャンパスライフを満喫している健太が、インストールしてメガレッドに変身するとその性格が大きく変わる。鮮やかな赤色のスーツに身を包み、大空を跳び、魔物を一刀両断に斬り捨てる。彼は名声よりも正義感によってのみ動いていると言っても良かった。

 

 だが健太にとって暗黒の日は訪れた。

 どんなに滅ぼして行っても魔物は次から次へと容赦なく健太の前に姿を現す。まるで何かに増産されているかのように。そして、ネジレジアと戦っていた時には、健太には仲間がいた。高校のクラスメイトである遠藤耕一郎、並木瞬、城ヶ崎千里、今村みく、そして、早川裕作と共に、どんなに辛く、苦しい戦いも乗り切った。耕一郎はメガブラック、瞬はメガブルー、千里はメガイエロー、みくはメガピンク、そして、裕作はメガシルバーとして、一緒にネジレジアを壊滅に追い込んだ。

 だが、今はその仲間もバラバラになり、消息さえ掴めない。

 このことが、健太をよりストイックに体作りに追い込む理由でもあった。

「はあッ!!でやああああッッッッ!!!!

 来る日も来る日も、健太は一人戦った。

 だが、健太は次第に追い込まれて行った。連日の過酷な戦いが彼の肉体、精神を蝕んだ。そして、ある日、彼はほんの僅かな隙を突かれて、遂に囚われの身になってしまうのだった。

 

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