処刑!メガレッドU 第1話
『キミの家にメガレッドがやって来る!』
よくあるプレゼント企画。メガレンジャーの絵柄がプリントされた子供用の下着を買い、それに付随している応募券を送ることで、抽選で当選するとそのプレゼントが与えられる。大好きなヒーローが家に来たなんて言ったら、純真無垢な子供だったら本当に大喜びだろう。よくある話、将来はヒーローになる、と目をキラキラ輝かせて言うものだった。
「…だけど、現実は…」
それも任務の一環だと言われれば、それまでかもしれない。だが、世界を邪電王国ネジレジアからこの世界を守るべく、命を懸けて戦っている電磁戦隊メガレンジャーのメガレッドがわざわざ家までやって来て、フレームに納まってくれるのだ。
「…そんな暇じゃないんだけどなぁ…」
1枚の紙切れをピラピラさせて、1人の学生服姿の男子高校生がブツブツと呟きながら歩いている。その背中には哀愁が漂っていた。
伊達健太、18歳。諸星学園高校3年生。何を隠そう、彼が正真正銘のメガレッドだったのだ。そして、クラスメイトのメガブラック・遠藤耕一郎、メガブルー・並木瞬、メガイエロー・城ヶ崎千里、メガピンク・今村みくと一緒に、ネジレジアの猛攻からこの世界を守っていたのだ。
「ちょちょちょ、久保田のおっさん!何でオレがそんなことをやらなきゃならねぇんだよッ!!」
世界科学連邦I.N.E.T.に所属する科学者・久保田衛吉に食ってかかった。
「第一、オレがいない間にネジレジアが襲って来たらどうすんだよッ!?」
本当は面倒で仕方がなかった。普段から勉強嫌いで、体を動かすことの方が大好きな健太には、わざわざメガレッドにインストールし、大喜びで寄って来る子供をあやし、一緒にフレームに納まるなんて面倒なことはしたくなかったのだ。だが、いざとなったら健太が来るまで持ち堪えると、耕一郎達に一蹴された。
「めんどくせ〜!」
そう言ったら久保田博士にこっぴどく怒られた。子供の夢を壊すな、と。
「はぁぁ…」
大きく溜め息を吐き、とぼとぼと歩く。
「…オレって、…不幸ぉ…」
ピラピラさせていた紙切れが今回の依頼先だった。
「…でも、ここって…」
どう見ても自分が通っている諸星学園高校の近くだった。
「…んま、どうでもいいっか…!」
仕方がない、と腹を括り、健太は左手のデジタイザーを取り出し、物陰に隠れた。
「インストール!」
右腕を前に突き出し、次の瞬間、左手首に付けられているデジタイザーのテンキーを押した。
「3、3、5、Enter!」
英語での音声が鳴り響いたその瞬間、健太の体を光が包み込んだ。そして、光が消えた時、健太の体を光沢のある鮮やかな赤色のスーツが覆っていたのである。
「メガレッド、なんて!」
胸と肩の部分に白いライン、そして白いグローブとブーツ。それ以外は健太の体に密着するように纏わり付いた赤色のスーツ。その密着度合いは、健太の体のラインをクッキリと浮かび上がらせていた。
高校生らしい、中途半端に伸びた腕と足。だがしっかり鍛えているのか、二の腕と太腿の筋肉の付き具合は見ている者に妙な感情を抱かせるような、どこか艶めかしさが漂っていた。それから、真っ赤な上半身に程よく付いた腹筋が見え隠れしていた。
そして。
健太の逞しい2本の足の付け根。ふっくらとした膨らみの中に静かに息づく健太の男子としての象徴・ペニス。それが今、静かに佇まいを見せ、健太の2本の足の中心でふくよかな膨らみを作り出していた。
「よし!」
バシッと両腕を組み合わせ、大きく咳払いをする。辿り着いたのはどこにでもある1軒の家。
「…緊張するぅ〜!」
小さくブルブルと震える指先で、ドアホンを押した。
ピンポーン!
どこにでもある呼び鈴が聞こえた次の瞬間、
バンッ!!
と言う音が聞こえそうなほど勢い良くその家の玄関ドアが開かれ、
ガンッ!!
と言う音を立ててそれが健太にぶつかった。
「痛ってええええッッッッ!!!!」
メガレッドのマスクにどのドアが勢いよくぶつかり、健太の首がゴキッと言う鈍い音を立てたような気がした。と、その時だった。
「…本当に…ッ!!…本当に来たああああッッッッ!!!!」
思わず蹲っていた健太がゆっくりと見上げる。するとそこには、顔を紅潮させて興奮したように大きく息を切らせている、自分と同じくらいの年齢の男が立っていた。
(…あれ?)
どこか見覚えがあるように思えた。だが、普段からそんなに周りの友人を気にしなかった健太の性格が災いしようとは、この時の健太は考えもしないでいた。
「…あ、…えっと…!」
目の前にいる男が誰だったかを思い出そうとしつつ、一応、自分の任務モードに戻る健太。ごほんと大きく咳払いをすると、
「…このたびは懸賞への応募、ありがとうございます。抽選の結果、当選となりましたのでお伺いさせて頂きました」
と、久保田博士に教えられた通りの台詞を一字一句、間違いないように言う。だがそんな健太の腕をその男は掴んだかと思うと、
「いいからいいからッ!早く入ってッ!!」
と強引に健太を、いや、メガレッドを家の中へと引っ張り込んだのである。
「なッ!?ちょッ、ちょッ、ちょっと…ッ!!」
だがあっと言う間に健太の姿は、その家の中へ消えたのだった。
「…あ、…あのぉ…」
家の応接室のようなところに通された健太。随分と広く、またアンティークと思われるような代物があちらこちらに置かれている。
(…相当のお金持ちか…?)
自分の実家の青果店とは大違いだ、そんな自分の置かれた環境にちょっと凹む健太。
「凄いッ!!凄いよッ!!メガレッドが本当に目の前にいるよッ!!」
どう見ても同い年くらいにしか見えないその男が、まるで少年のように目をキラキラと輝かせ、顔を赤らめている。
「…え、…えっと…」
さっさとこいつの弟さんか妹さんと会って、写真を撮らせて、さっさと退散しよう。健太はそう思っていた。
「弟さんか妹さんはどちらですか?オレ、…いや、僕と写真を撮ってもらうと言うことになっていると思うんですが…」
健太がそう言った時、その男が俄かに健太の左横に座った。
「…え?」
健太は戸惑った。その男の右太腿が、健太の左足にピッタリとくっ付いていた。そして、ニコニコと健太を見上げていたのだ。
(…何だ、…こいつ…!?)
何となくだが薄気味悪さを感じ、そっと左足を内側へ引っ込めてみる。するとそんな健太の足の動きに合わせるかのように、その男は右足を更にグイッと外へ広げ、健太の左足へ密着させたのだ。
「…あ、…あの、…弟…さん…は…?」
「別にいいじゃん!まだ時間あるんだろ?」
健太の言葉を遮るようにその男はそう言ったかと思うと、淫猥な光沢を放つ鮮やかな赤色のスーツに包まれた健太の左太腿の上へ右手を乗せた。
「…ッ!?」
その刺激に、ゾワゾワとした悪寒を感じる健太。
「…あ、…あ、…あの…」
その時、その男がニヤリと笑った。
「そんなに慌てなくてもいいじゃないか、伊達健太君…!」