処刑!メガレッドU 第3話
巧の存在は、健太の頭の中からすっかり消え去っていた。クラスの中で全く目立たない巧。
(…確か、クラスの中で座席は後ろの方で窓際じゃなかったっけ…?)
ふと、そんなことを考えてみる。
休み時間、みんながワイワイと騒いでいても独りで席に座り、本を読んでいるか寝ているか、何かに向かってブツブツと呟きながら不気味に笑っているか。それから、授業中も何かブツブツと呟きながら不気味に笑っている。そして、何故か、体育の授業には一切、顔を出さない。
そして、不思議だったのは、そんな根暗なやつだといじめのターゲットにされるはずなのだが、巧だけは不思議とその対象にはならなかった。巧の父親は自分達が住んでいる街の大きな病院の院長で、学校にも何かと影響力を持っていた。そして、巧はその跡取り息子。エリート街道まっしぐらってやつだ。だから、いじめっ子達も、巧をいじめるととんでもないことになると分かっていたのかもしれない。だが、それが巧をつけ上がらせる結果になったと言ってもよかった。
「…た…。…健太ッ!!」
はっと我に返った途端、健太は言葉を失った。
メガレッドにインストールしている健太。光沢のある鮮やかな赤色のスーツにぴったりと密着するように巧が抱き付いている。
「どうしたんだよ、健太ぁ!さっきから名前を呼んでいるのに、全く反応しないじゃないか!」
ぶぅっと膨れっ面をして健太を見上げている。
「さあ!僕のことを『巧様』って呼ぶんだ!」
「…はぁ?」
思わず、顔をしかめた。
「なんでお前のことをそんなふうに呼ばなきゃならねえんだよッ!?」
正直、巧には腹が立っていた。すると健太は、いきなり巧の体をドンと突き放した。そして、
「病院の跡取り息子か何だか知らねえけどなッ、それを理由に調子に乗ってんじゃねえよッ!!てめえは病院の跡取り息子である前に、一人の人間だろうがッ!!てめえの今の地位はてめえ自身で勝ち取ったもんじゃねえってこと、忘れんじゃねえよッ!!」
と、一気にまくし立てた。最初は呆然としていた巧だったが、急にフッと笑ったかと思うと、
「…八百屋の息子のくせに、…随分なことを言ってくれるね…!」
と言い出したのだ。そして、
「別にいいけど?お前だけじゃなく、遠藤耕一郎、並木瞬、城ヶ崎千里、今村みくの5人がメガレンジャーですって大々的にバラしても?そしたら、お前達と戦う悪の組織、…ネジレジア、だっけ?そいつらにお前らの身元がバレて大変なことになっちゃうなぁ!」
と言った。更に、指をパチンと鳴らしながら、
「あ、そうそう!メディアにこの映像を流しちゃおうか!そしたら、お前達5人は毎日メディアに追いかけられ、学校どころじゃなくなっちゃうよね!それはそれで好都合だけど?成績が万年1位の並木と、3位の城ヶ崎、4位の遠藤の3人が消えれば、俺はあっと言う間に1位だよなあ!」
と言った。
「…て…め…え…!!」
握られた両拳がブルブルと震え、メガレッドの白いグローブがギリギリと音を立てる。
「…さぁ、…どうする、健太?僕のことを『巧様』って呼んでくれるかい?…それとも…」
その時、巧は既に勝利を確信していた。健太にとってみれば、健太達がメガレンジャーに変身する映像を撮られ、健太達の素性がばれ、更にそれによって仲間である耕一郎や瞬、千里までが犠牲になる。3つも人質を取られたような格好になっていた。(…これ以上足掻いても、無駄なような気がする…)
そう考えた健太は、
「…はぁ…ッ!!」
と再び大きく溜め息を吐いた。そして、
「…悪い…、…巧…様…」
と言った。ところが巧は、
「聞こえない!」
と一言だけ言い放ったのである。
「それに『悪い』って何?あやまるんだったら、丁寧にあやまるんだね!」
「…って、聞こえてんじゃ…!!」
言いかけて口を閉じた。健太は静かに目を閉じ、気持ちを落ち着かせると、
「…申し訳ございませんでした、…巧…様…」
とさっきよりは大きな声で言ったのである。だが巧は、
「気持ちがこもってないよ!もっとはっきりと、心をこめて!」
と言い放つ。
「申し訳ございませんでしたッ、巧様ッ!!」
やけくそで大声で言う。気分はまさに体育会系の様相だった。すると巧は勝ち誇った笑みをし、
「じゃあ、その呼び方、忘れないでね!」
と言うと、再び健太に抱き付いた。
「君は僕の言うことを何でも聞かなければならない。…いいね?」
巧の、健太を見上げる目がギラリと光った。
「…く…ッ!!」
本来なら今すぐこの場でぶん殴って帰るところだった。だが、そうは出来ないと言うことは、頭の悪い健太でも分かった。
「…分かり…ました…」
また大きく溜め息を吐く健太。すると巧は、
「よろしい!」
と言って、再び健太に抱き付いた。
「…ッ!!」
同じ男に抱き付かれ、ぞわぞわと悪寒が走る。メガレッドのスーツの中で、健太の体中に鳥肌が立った。
「…じゃあ、次はぁ…!」
巧がニヤニヤと見上げている。と、その時だった。
「んあッ!?」
突然、健太が体をくの字に折り曲げ、素っ頓狂な声を上げた。
「…んなッ!?…んな…ッ!?」
顔を真っ赤にして巧を見つめる健太。
「…フフ…!!」
巧の右手が真っ直ぐに伸び、健太の2本の足の付け根に伸びていた。そこには、静かに息づく、健太の男としての象徴・ペニスがあった。それを巧がいきなり握ったものだから、健太が素っ頓狂な声を上げたのである。
「…たッ、…巧ィィィィッッッッ!!!!」
「フフッ!健太のこれって、随分大きいんだね!」
そう言うと、巧は握っている健太の股間全体をクニュクニュと揉み始めた。
「…あッ!!…んん…ッ!!…んあ…ッ!!」
その刺激に甘い吐息を漏らす健太。
「アハハハハ…!!ヒーローがチンポをモミモミされて感じてんだぁ!だっせぇ!」
「…ッ!!」
いかにも健太を小馬鹿にしたように笑う巧。その巧に健太は激しい怒りを覚えていた。だが、ここで理性を失ってしまってはそれで全てが終わりになる。そう思った健太はとにかくグッと堪えた。
「…おッ、…お止め…下さい…ッ!!…巧様…ッ!!」
何とか、言い切った。プライドも何もかもを捨て去って、今は仲間と家族を守ることに必死だった。すると巧は、
「しょうがないなぁ」
と言い、健太のそこからようやく手を離した。
「…ッ!?…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
突然の刺激に体中から力が抜け、健太はその場へ思わず座り込んだ。
「でも、まだまだ終わったわけじゃないよ?」
巧がニヤリと笑う。
「これからが、始まり、なんだ…!!」