処刑!メガレッドⅡ 第9話
巧が歩く数十メートル後ろを、健太がゆっくりと追いかける。
「…な、…何なんだよ、…これ…?」
自分がやっていることにどんどん嫌悪感を覚える。巧が交差点の信号待ちで立ち止まれば、健太はすぐ近くのコンビニやお店に寄り、何を買うと言うわけでもなく、その場をやり過ごす。巧に近付き過ぎて、声をかけようものなら、同じ通学路を歩いているクラスメイトや、巧を知っている者に変な目で見られそうだからだ。
大病院の跡取り息子。それだけで、巧は諸星学園高校中から疎まれ、距離を置かれていたのだった。
「…親父が親父なら、子供も子供か…!」
そんなことを呟いてみる。
巧の親父が経営する病院は、巷では悪い評判ばかりだった。腕は確かなのだが、診察料がべらぼうに高く、それでいて更に診療報酬を得ると言う暴利を貪っていた。そして、様々な手を使って近隣の個人開業医を悉く潰して行ったのである。街の人達に言わせれば、金に欲が眩んだ亡者と言われていた。それゆえ、そんな巧の親父が経営する病院に嫌気が差し、わざわざ車や電車で時間のかかる隣町の病院まで出かけていたのである。
そうこうしているうちに、健太は巧の家に辿り着いた。
「さぁって、今日は何をされるのやら…」
学生服を腕まくりし、ドアホンを押す。
ピンポーン!
と言う高らかな音がして、暫くの沈黙の後、
「入れよ」
と言う静かな低い声が聞こえた。
「…失礼します、…巧様…」
そう言う健太の拳はブルブルと震えていた。
「…ククク…!」
この間、初めて巧に淫猥なことをされたリビングに通された健太。そんな健太の目の前には、不気味にニタニタと笑う巧がいた。健太と同じように学生服姿のままだ。
「…お待たせしました、…巧…様…」
同級生で、しかもこんな性格の悪いやつに“様”を付けて呼ぶことなど、未だに耐えがたい屈辱だった。とは言え、健太は大事なクラスメイトを人質に取られている。
(…オレが、…耐えればいいだけだ…!…こんな奴、…すぐに飽きるはずだ…!)
そう願って…。
「今日もメガレッドにインストールすればよろしいですか?」
健太から切り出してみせた。すると巧は、ちょっと驚いたような顔をしたが、すぐにニヤリと笑い、
「そうだな。そうしてもらおうかな」
と言い、健太がデジタイザーに手を掛けたところを見計らって、
「と思ったけどお!」
と大声を上げたのである。
「んなッ、何だよッ!?」
あまりに突然の大声に驚く健太。すると巧はニヤニヤと笑いながら、
「今日はそれよりもイイモノを見つけちゃったんだよねぇ!」
と言うと、ゆっくりと健太のもとへ歩み寄り、静かに両腕を健太の背中へ回した。
「…巧…様…?」
すると巧は健太の背中へ回していた両腕のうち、右腕をゆっくりと下ろして来ると、健太の2本の足の付け根、健太の男としての象徴であるペニスが息づいている場所に手を伸ばし、そこに形成されているふくよかな膨らみを優しく包み込んだのである。
「…ッ!!」
その刺激にピクンと体を反応させる健太。
「…た、…たく…み…様…ッ!!」
まるで痴漢されるかのようにじっくりと触られ、健太は顔を赤らめる。いくら仲間を守るためとは言え、同性の、しかも陰湿な性格の巧にこのようなことをされることは、いくら耐えると言ってもやすやすと受け入れられるようなものではなかった。
「…ねぇ、…健太ぁ…」
「…んな…ッ、…んん…ッ!!…何…でしょう…ック…ッ!!…か…?」
その時、巧はニヤリとすると、
「健太のここ、どうしてこんなに滑りやすいの?」
と言った。その瞬間、健太の顔が一気に真っ青になり、
「…ま、…まさか…ッ!?」
と叫んだかと思うと、巧を引き離そうとした。その途端、
「動くんじゃねえよッ!!」
と言う巧の怒鳴り声に、健太は思わずビクリと立ち竦む。
「お前の大切な仲間がどうなってもいいのかよ?お前らがネジレジアと戦っているメガレンジャーってことが世間にバレたら、お前らはこの学校には、いや、この日本にはいられなくなるんだぜ?」
「…く…ッ!!」
歯軋りをし、拳を握り締めたところで巧に敵うわけはない。
「…て…めぇ…ッ!!」
憎々しげに巧を見下ろすも、巧はただニヤニヤと健太を見上げているだけだ。そして、
「さぁ、分かったのなら制服を脱げよ。上も下も!」
と言うと、少しだけ健太から離れたのだ。
「…うう…ッ!!」
顔を真っ赤にして巧を憎々しげに見つめる健太。すると巧は急に冷めた表情を浮かべると、
「あっそ。出来ないなら…」
と言いかけた。その瞬間、
「頼むからッ、それだけは止めてくれッ!!」
と健太が悲痛な声を上げたかと思うと、制服のズボンのベルトのバックルを外し始めたのだ。カチャカチャと言う乾いた金属音が辺りに響く。そして、中央のホックを外し、ファスナーを下ろし始めたその瞬間、光沢のある赤い生地が中から見え隠れし始めた。
「…やっぱりね…!」
やがて、健太がズボンをバサッと下まで下ろした時、巧がニヤニヤとし、顔を少しだけ赤らめてそう言った。
「君のアソコを触った時、やけにズボンに摩擦力がないなぁと思ったんだ。かと言って、君のアソコの形がクッキリ分かるほどではなかった。つまり、ノーパンではないってことだ。となれば、摩擦力のない生地の下着を穿いているとしか考えられない。…それに」
巧はそう言うとゆっくりと健太に近付いて来る。
「…止めろ…!」
顔を真っ赤にし、ブルブルと震える健太。
「僕は見たんだ。君がトイレに入って来た時、ズボンの中からキラキラ光る生地に包まれた、君のいやらしい形のお尻をね!」
「…お、…お前、…あの時から…!?」
健太は目を大きく見開いて巧を信じられない思いで見ていた。
「そうさ。あの時に君に手を出しても良かったんだけどね、さすがに学校の、しかもトイレの個室の中じゃ、僕達の仲をみんなに怪しまれちゃうからね…!だからこうやって君を呼び出したんだよ」
そう言いながらも、巧は健太の学生服を脱がせて行く。その空気の流れに乗るかのように、健太の体の臭いが巧の鼻をふわっと掠めて行く。
「君を僕の家に呼んで、すぐにメガレッドに変身させてもいいんだけどさ、その前に君のこのいやらしい姿で楽しみたくてね!」
巧の前にいる健太の姿。真っ白なTシャツ、光沢のある真っ赤なスパッツ、そして土に汚れた白い靴下。
「…フフフ…。…さぁ、メガレッドに変身する前のもう1つの楽しみと行こうじゃないか…!」
そう言った巧は、再び健太に抱き付くと、顔をゆっくりと健太の胸に埋めたのだった。