処刑!メガレッドU 第23話
白髪混じりの毛髪に、ところどころを紫色に染め、側面を大きく立たせている。その体には中世貴族のような服を纏い、左手には杖を突いている男が巧の目の前に静かに立っている。
「…まさか、お前の同級生が、にっくき我が同級生である久保田衛吉のスカウトした、これまたにっくきメガレンジャーだったとはな…!」
初老のわりに、視線が鋭いその男・Dr.ヒネラー。すると巧はフッと笑うと、
「大丈夫だよ、伯父貴。こいつらはオレがあなたの甥であると言うことは知らないから…!」
と言った。
「…それより…」
巧はそう言うと、健太の淫猥な液体がなみなみと入っている試験管をヒネラーに差し出した。
「これでいいんだよな、伯父貴?」
するとヒネラーはニヤリと笑って、
「これだけあれば十分だ。ありがとう、我が甥よ」
と言い、巧の肩をぽんと叩いた。そして、
「…こいつはどうする?」
と、床に伸びている健太を蔑むように見下ろした。すると巧はニヤリと笑い、
「まだまだ使えるからね。もっと楽しませてもらうよ。…その代わり!」
と言ったかと思うと、真顔でヒネラーに詰め寄った。
「…オレとの約束、…忘れるなよ…?」
その睨み付ける眼差しが気に入ったのか、ヒネラーはニッコリと笑い、
「分かっている。かわいい甥の頼みだ。叶えてやろう」
と言い、
「それにしてもお前達親子は私のために良く働いてくれる。お前の父親、つまり、私の弟は我々ネジレジアの武器開発のための資金を、診察料の暴利で提供してくれる。そしてお前は我々ネジレジアの敵であるメガレンジャーの正体を見破り、彼らを根底から崩そうとしてくれる。これほどありがたいものはない」
と言うと、
「楽しみにしておれ、我が甥よ。お前に素敵なプレゼントをしてやろう」
と言ってスゥッと消えそうになる。
「ちょっと待てよ、伯父貴!」
巧が慌てて声をかける。
「こいつ、きれいにしてくれない?」
指を差したところには、光沢をすっかり失い、異臭を放つ淫猥な液体をこびり付かせ、股間からはペニスを突き出したままの健太がいた。
「…やれやれ。…かわいい甥の願いを叶えないわけには行くまい…」
ヒネラーは苦笑すると、指先から妖しい光を放った。それが健太の体を包み込んだその瞬間、健太のメガレッドのスーツは元通りの光沢を放っていた。そして、健太の剥き出しになったペニスはその中に収められていたのであった。更に、頭部にはマスクがかぶせられていた。
「…では、…また…!」
ヒネラーはそう言ってスゥッと消えた。
「良かったなぁ、健太あ!!」
その時の巧の表情には、悪意に満ちた眼差しはどこにもなく、純粋な少年そのままの笑顔になっていた。そして、綺麗になった健太のがっしりとした体に抱き付くと、
「…キミはもっともっと、僕のものになるんだ。…キミは永遠に僕に従うことになるよ…!」
と言うと、メガレッドのマスクの口の部分にそっとキスをした。
「…ん…」
どのくらい時間が経っただろう。健太はゆっくりと目を覚ました。
「…オレ、…立たされている…?」
視界に飛び込んで来たのが天井ではないと分かった時、健太はぼそぼそと呟いてみた。
「…オレ、…先生に怒られたんだっけ…?」
寝ぼけてそんなことを言う健太。だが次の瞬間、はっと目を覚ましたかと思うと、
「んなッ!?何だッ、これッ!?」
と自分が置かれている状況を理解した。
周りは一面のブロック塀だらけ。しかも両腕は肩の位置で真っ直ぐに上げられ、手首を重い金属で固定されている。そして、足も肩幅程度に広げられ、足首のところで同じように重い金属で固定されていた。
「…オレ、…メガレッドにインストールしている…!?」
狭い視界。マスクの中に籠る空気。それはつまり、自分がメガレッドにインストールしていると言うことを理解させた。
「…あ…あ…あ…!!」
その時、健太の頭におぞましい記憶が蘇る。
「…ま…さ…か…!?」
「お、ようやく目が覚めたかい、健太ぁ?」
コツコツと言う足音を響かせて、目の前に忌まわしい存在である巧が姿を現した。
「…巧…ッ!」
メガレッドのマスクの中から巧を睨み付ける。すると巧はフン、と鼻で笑うと、
「もう、キミがいくら僕のことを睨んだとしても全く怖くも何ともないよ!」
と言い、
「あんな醜態を僕の目の前で晒しておいてさ!」
と嘲るように笑った。
「…て…んめえ…ッ!!」
健太は手首と足首に取り付けられた重い金属をガチャガチャと揺らしながら、
「おいッ、巧ィッ!!こいつを解けよッ!!てめえッ、ぶっ飛ばしてやるぜッ!!」
と叫んだその瞬間、
「…た…、…たく…み…?」
と目の前の光景に顔を青ざめさせた。
目の前に立っている巧が手にしていたもの。健太達メガレンジャーがネジレジアと戦う際に使用する武器・メガスナイパーだった。それを、まるでテレビドラマのワンシーンのように顔の前で構え、片目を閉じている巧。そして、
「バンッ!」
と言ったその瞬間、健太は思わず目を閉じていた。
「…た…くみ…ぃ…ッ!!」
唸るように言うと、巧はフッと笑って、
「…キミの置かれている状況が分かっていないようだね…!」
と言うが早いか、メガスナイパーの引き金を引いたのだ。その瞬間、
バアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う衝撃音と共に、
「ぐわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う健太の悲鳴がその部屋に響き渡った。
「…ぐ、…うおおおお…ッッッッ!!!!」
激痛が健太の体を襲う。メガレッドのスーツを着ていたとは言え、痛さも衝撃も完璧に撥ね除けるものではない。光沢のある鮮やかな赤色のスーツの左腹部辺りからしゅうしゅうと煙が立ち上っていた。
「…や、…めろ…、…たく…み…ッ!!」
目の前でニヤニヤと笑っている巧。その目は明らかに悪意に満ちていた。
「今日はキミのそのスーツがどれだけのダメージに耐えられるか、耐久テストを行ってみるとしよう」
そう言った巧が、再びメガスナイパーの引き金を引いた。
バアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
衝撃音と共に、
「ぐわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う健太の悲鳴。そして、今度は左太腿から火花は飛び散ったのだった。