処刑!メガレッドU 第25話
シャアアアアアアアア…!!!!
何か水のようなものが流れるような音が聞こえた時、メガレッド・健太は自分の足が生温かいものに濡れて行くのを感じていた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
狂ったようにメガスナイパーを撃ちまくる巧。その光の弾丸にメガレッドのスーツが貫かれ、あちこちで爆発した。あまりの激痛で意識が薄れかけた時、とどめを刺すように1つの弾丸が健太の2本の足の付け根、健太の男としての象徴であるペニスとその下に息づく2つの球体にぶち当たった。その瞬間、そこの感覚がなくなり、液体が溢れ出したと言うわけだった。
「…うう…ッ!!」
よりによって、最低な奴の目の前で醜態を晒すなんて…!
メガレッドのマスクの中で、健太は顔を真っ赤にし、歯をギリギリと噛みしめた。
「…ウソッ!?」
メガスナイパーの弾丸の爆発で起こったしゅうしゅうと言う煙が晴れた時、巧が素っ頓狂な声を上げ、健太の醜態を見た途端、火が点いたように笑い始めた。
「…ダッ、…ダッセエエエエエッッッッ!!!!…せ、…正義のヒーローが、…あまりの恐怖にビビって、…ちびってやがるううううッッッッ!!!!」
顔を真っ赤にし、目からぽろぽろと涙を零しながら笑い続ける巧。
「…ビ、ビビってなんかいねえッ!!」
健太が怒鳴り返すが、大笑いをしている巧に聞こえているかは分からなかった。
「…く…っそ…おおおお…ッッッッ!!!!」
地団駄を踏みたくても踏めない。股間を隠したくても隠せない。今の健太に出来ることは、ただ、その醜態を巧に晒すことだけだった。
「…あ、…そうだ!」
一頻り笑った後、巧はクルリと健太に背を向けると少し離れたところにあるデスクへ向かい、カメラを取り出した。そして、健太の方へ振り返り、
「キミの情けない姿を収めておこう!」
と言った。
カシャッ!!カシャッ!!
シャッターを押すたびに、ヒャッヒャと不気味な笑い声を上げる巧。
(…な、…何なんだよ、…こいつ…!)
その姿に唖然とする健太。と同時に、やはり巧と言う人間に対しての恐怖心も芽生えつつあった。
「フフッ!」
一頻り撮り終えると、巧は満足気に笑った。だがふと真顔に戻ると、
「…う〜ん…」
と言って首を捻った。
「…な、…何…だよ…!?」
全く体の自由が利かない健太。そんな健太に向かって、巧が残酷なことを告げる。
「これじゃあ、キミがメガレッドだって言う証拠にならないじゃないか…!」
「…何…だと…ッ!?」
全身から血の気が引いて行く。そんな健太の目の前に、ゆっくりと巧が近付いて来る。そして、メガレッドのマスクに手を掛けた。
「…や、…止めろ…!!」
声が震える。いや、声だけではなかった。健太の体も小刻みに震えていたのだ。
「そんなに怖がるなよぉ、健太ぁ!どうせ、キミは僕なしでは生きて行けなくなるんだからさ!」
嬉しそうにそう言いながら、巧がメガレッドのマスクをゴリゴリと動かす。
「…痛てッ!!…ちょッ、…やッ、止めろオオオオッッッッ!!!!巧イイイイッッッッ!!!!」
ドスッ!!
その時だった。
「…あ…が…!!」
何度も何度も味わわされたあの鈍痛が再び襲って来た。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
光沢を失った健太のスーツ。その部分が不自然に盛り上がり、その下には巧の学生ズボンが減り込んでいる。
「…いい加減に諦めたらどうなんだよ…!」
じっと健太を睨み付けている巧。その目が血走っている。まるで、飢えた野獣のように…。
「さぁ、メガレッドの正体を世間に晒す時間だぁ!」
巧の手が健太のマスクをゆっくりと動かして行く。
…ゴト…ッ!
鈍い音がして、その中からゆっくりと健太の顔が現れた。
「…く…ッ…!!」
顔を真っ赤にし、玉のような汗を流している。その目には涙が伝った痕が窺えた。
「…ククク…!!」
不気味に笑う巧。そして、さっきと同じように健太の醜態をカメラに収めた。
「これで完全に逃げ場がなくなったよね、健太?」
勝ち誇ったように言うと、巧は、
「もう一度聞くよ」
と言った。
「…僕の、…恋人になってよ…!」
「…だから…ッ!!」
「ああ、違う違う!」
健太の言葉を遮るように、巧が手をひらひらと振る。
「僕の恋人って言う意味は、普通の男女のようにいちゃいちゃしたり愛し合ったりって言う意味じゃないんだ」
その時、巧の目がギラリと光ったのを、健太は見逃さなかった。
「僕の恋人は、僕のされるがままになるってことだよ。僕が命令したらその体を差し出し、キミの大事なところを執拗に弄られ、毎回毎回一滴残らず、キミの大事なエネルギーを搾り取られるってことさ!」
「…断るッ!!」
はっきりと言い切った。
「…誰がてめえみてえなクズな人間の恋人に、…いや、言う通りになるかッ!!…てめえみてえに人の弱みに付け込み、狡猾な罠を仕組んでそいつを陥れ、まるで自分よりも小さな弱い動物を甚振るような、そんな残酷なやつなんかの言うことなんか聞くかよッ!!」
健太の目がキッと巧を睨み付けている。その言葉に圧倒され、呆然とする巧。
「…てめえがしていることはなぁッ、ネジレジアと一緒なんだよッ!!…自分だけがこの世の頂点のように思ってるやつなんざ、いつまで経っても友達も出来なきゃ、誰もてめえに付いて行こうとだってしねえんだよッ!!」
その時だった。
「…ひぎぃぃぃぃ…ッッッッ!!!!」
ブルブルと体を震わせていた巧が、まるでひき付けを起こしたかのように変な声を上げ、白目を剥き始めた。
「…んなッ、…何だ…ッ!?」
ヒステリックの頂点にでも達したのだろうかと健太は思っていた。だが次の瞬間、信じられないことが起こった。
「…許さん…ッ!!」
その声に凍り付く健太。
「…た、…巧…?」
巧の声が聞こえたはずだった。いや、確かに巧の声だったはずだ。だがそこに、巧とは違う、とても低い声が混ざっていたようにも思えた。
「…オレを、…このオレを侮辱するやつは、…誰であろうと許さんッ!!」
その瞬間、巧の体から物凄いオーラが溢れ出し、それが暴発したのだ。
「んんんんッッッッ!!!!くうううう…ッッッッ!!!!」
その爆風を懸命にかわそうとする健太。だが、手も足も拘束されているため、顔を背けることしか出来ない。
と、その時だった。
ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
凄まじい衝撃音がして、健太の体に激痛が走った。
「…ッ!?」
何が起こったのか分からなかった。だが、メガレッドのスーツが左肩から右腹部にかけて斜めに斬り込みが入っていた。
「…何だとオオオオッッッッ!!!!!!??」
健太が声を上げるのも無理はない。
「…ドッ、…ドリルセイバーッ!?」