処刑!メガレッドU 第26話
ずっしりと重い、健太がメガレッドにインストールして持っていても重く感じられるドリルセイバーを、目の前にいる一般人の巧がヨロヨロとしながら持っている。
「…そッ、…そもそも、何でてめえがそんなもんを持ってんだよッ!?」
今更ながらに巧と言う人間の恐ろしさを改めて知った健太。その声が上ずったのは言うまでもない。すると巧は、
「…ああ、これぇ?」
と言ったかと思うと、今度は健太の右肩から左腹部にかけて、ドリルセイバーを一気に振り下ろした。
ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
激しい衝撃音と共に、健太のメガレッドのスーツがスパークする。そして、
「ぐわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う健太の悲鳴が、狭い空間に響き渡った。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
しゅうしゅうと煙が立ち、メガレッドのスーツに焦げ目が出来る。
「…ククク…!!」
巧が笑う。
「お前が気絶した時に、お前のそのデジタイザーを弄ってこいつらを取り出したんだよ」
巧が視線を動かしたその先には、先ほど、巧が撃ったメガスナイパーが転がっていた。
「さぁ、もう一度だ、健太!」
巧が再びドリルセイバーを振り上げる。
「…止めろ…!!」
本気で震えていた。このままだと、いくら衝撃に耐性のあるスーツとは言え、切り裂かれて弱体化し、健太自身の体が傷付かないとも言い切れない。
「…切り刻んでやる…!!」
はっとなって見上げた健太の視線に、ドリルセイバーの鋭い刃が煌めいた。そして、
ズバアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
ドガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う物凄い衝撃音と爆発音が耳の鼓膜を破るのではないかと言うほどに大きく、轟音となって響いた。
「ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「ひぎゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
それと同時に響く健太の絶叫。
「止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!もうッ、止めてくれええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
メガレッドのマスクを外されているため、爆発の火の粉が顔にも降りかかる。だが巧は、
「…ククク…!!…アーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!」
と狂ったように笑い続け、ドリルセイバーをいとも簡単に振り下ろす。その笑い声には相変わらず、巧の甲高い声と同時に低い声も入り混じっていた。
「がああああッッッッ!!!!」
「うおおおおッッッッ!!!!」
「お…ご…おおおお…!!!!」
やがて。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
しゅうしゅうと立ち上っていた焦げ臭い臭いを放つ煙が消えた時、健太は無残な姿になっていた。
メガレッドの光沢のある鮮やかな赤色のスーツはぼろぼろに切り刻まれ、あちこちからスーツの耐性を作り上げる回路が剥き出しになっていた。そして、スーツの生地が完全に破れたところからは健太の皮膚が見え隠れし、うっすらと血が滲んでいたのだった。
「…あ…あ…、…あぁぁ…!!」
激痛から解放されたものの、健太の目は虚ろになり、口もとから血が流れ、顔もうっ血していた。
「…まだまだだよ、健太…!!まだ終わったわけじゃない!!」
巧が狂ったように笑う。
「…や、…め…ろ…!!…もう、…止め…て…くれ…!!」
健太の目から涙がぽろぽろと零れた。そんな健太を無視するかのように、巧はドリルセイバーをポイッと投げ捨てると、2本のニクロム線を取り出した。
「…な、…んだ…?」
半分、朦朧とする意識の中で、健太は巧に尋ねる。すると巧は、
「…こうするのさ…!」
と言い、その2つのニクロム線の銅線が剥き出しになった先端部分を健太の足元の水溜り、健太が流した液体に浸けた。そして、もう一方の先端部分を手に持ち、ポケットからがさごそと何かを取り出した。それを見た健太が俄かに顔色を変え、ブルブルと首を左右に振り始めた。
「…や、…止めろ…!!」
巧の手に握られていたもの。直列に並べた数個の電池だった。
「…これが何を意味しているのか、分かっているようだね?」
ヒャッヒャと再び下衆な笑い方をする巧。そして、手に持っている方のニクロム線の銅線部分を、電池を挟むようにくっ付けたその瞬間、
「はうッ!?」
と、健太が素っ頓狂な声を上げたのだ。その瞬間、巧はそのニクロム線の片方を電池から離す。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
ブルブルと震える健太。
「…ククク…!!」
巧の目がギラリと光る。
「…もう一度だ…!!」
ニクロム線が再び電池と繋がる。
ビギギギギ…ッッッッ!!!!
何とも言えない音が聞こえ、
「ひがああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と健太が叫び、体を硬直させる。
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
健太は体をガクガクと痙攣させ、目を大きく見開き、叫び続ける。
パシッ!!パシュッ!!パパパパ…ッッッッ!!!!
その時、健太のメガレッドのスーツに剥き出しになった回路がスパークするのが見えた。
「がああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
健太が絶叫し続ける。
「…ククク…!!」
その時、巧の目が再びギラリと光った。そして、手に持っていた2つのニクロム線をそのまま壁際のコンセントプラグへ近付けて行く。
「…止めろ…!!」
その瞬間、健太の顔が恐怖に歪んだ。
「…さぁ、…もっと味わってくれよ…!!」
巧の目。狂ったような瞳、そしてその口元からは涎がぽたぽたと零れている。
「…止めろ…!!…止めろ止めろ…!!」
健太は懇願するように巧に言う。だが、それは無理な話だと言うことも、頭のどこかで分かっていた。
「…じゃあね…!」
巧はそう言うと、そのニクロム線をコンセントプラグの中へぐっと突っ込んだ。
ビギギギギギギギギッッッッッッッッ!!!!!!!!
何とも言えない音が再び聞こえ、
「ふぐぐぐぐぐぐぐぐッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う健太の悲鳴とも似つかない声が響く。そして、
パシパシッッッッ!!!!ババババッッッッ!!!!
と言う、健太のメガレッドのスーツがあちこちでスパークし始めた。
「うぅがああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして、健太が絶叫した瞬間、
ガガガガッッッッ!!!!ドゴオオオオオオオオンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う轟音と共に、健太のメガレッドのスーツが大爆発を起こしたのだった。