アカニンジャー消滅! 第4話
「僕が大勢の人間の命を吸い取ったからさ!」
ギリギリと腕を締め付けられる痛みの中、アカニンジャーにシュリケン変化している天晴は聞き間違いをしたのかと思った。
「…え?」
思わず、そんな声を上げていた。すると、天晴の腕を締め付けている闇博士マーブロはムッとした表情を浮かべて、
「やれやれ。ボクの言ったことも理解出来ないおバカさんなのかい、キミはッ!?」
と言うと、更に強い勢いでギリギリと天晴の右腕を締め付け始めた。その瞬間、
「うぐわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言う天晴の掠れる絶叫が響いた。
「…やッ、…止めろオオオオッッッッ!!!!…痛てええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!ぐわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
体をビクビクと跳ねらせ、何とかしてこの締め付けから逃れようと必死にもがく天晴。ぽっちゃりとした体格。ただそれだけの、どこにでもいるようなやつのどこにこんな力があるのだろうと、痛みで意識が薄れそうになる中で天晴は思っていた。するとマーブロは、
「フフフ!イイネイイネイイネエエエエッッッッ!!!!その絶叫、ますますそそるよぉぉぉぉッッッッ!!!!」
と言ったかと思うと天晴の右腕の締め付けを解き、おもむろに立ち上がったかと思うと、今度は天晴の右腕を引っ張り上げたのだ。
「…なッ!?」
勢いに任せて天晴が立ち上がる。すると、マーブロは天晴を背にしたかと思うと、その右腕をグイッとマーブロの前方へ引っ張ったのである。
「…あ…」
天晴の体がマーブロの背に乗った。ふわっと足が地面を離れた次の瞬間、物凄い勢いで体が前方へ投げ出される感覚がした。
「うわああああッッッッ!!!!」
悲鳴を上げた次の瞬間、
ドオオオオンンンンッッッッ!!!!
と言う地響きと共に、天晴の体に激痛が走った。
「…ぐ…あ…!!」
一瞬、息が止まった。そして、目の前が真っ白になった。だが気が付いてみれば、マーブロが天晴の頭上にいた。そして、
「…ククク…!!」
と不気味に笑っていた。
「どうだい?人間の命を吸い取ったボクのこのパワーは?」
と聞いて来た。
「…な、…ん…だ…と…ぉ…ッ!?」
信じられない思いでそれを聞くと、天晴は忍者一番刀を杖にするようにして立ち上がった。だがすぐに、
「うぐッ!?」
と言って右肩を押さえた。その途端、
「おッ!!イイネイイネイイネエエエエッッッッ!!!!」
とマーブロが歓声を上げる。
「確実にボクの締め技が効いてるってことだね!いやぁ、運動だけしか能がない筋肉バカ共の命を吸い取ってあげて良かったよ!」
「…ど、…どう言うことだッ!?」
少しずつ体が熱くなって行く。怒りがふつふつと込み上げ、握られた拳がギリギリと音を立てた。マーブロはフフンと笑うと、
「さっきも言っただろ?ボクはボクの手下としての最強のニンジャが欲しいんだよ!だけど、ニンジャなんて簡単に見つかるもんじゃない。今時、黒装束で鎖帷子を着てウロウロするニンジャなんてどこにもいないからね!」
と言い、ニマァッと不気味な笑みを浮かべた。
「だからボクは考えた!いろんなスポーツをやっている、強靭な肉体を持つ男達だったら、完璧なボクの手下に出来ないかなって…!」
「…ッ!?」
天晴はただ、呆然とマーブロの話を聞いている。その時、マーブロが不意に悲しげな表情を浮かべたかと思うと、
「でもダメだった。野球選手、サッカー選手、ラグビー選手、柔道選手、レスリング選手…。いろんなスポーツをやっている選手を集めたんだけど、みぃんなクズ!そもそも、ヤツらの強靭なエネルギーを集める一番の方法って何だか知ってるかい、アカニンジャー?」
と聞いて来た。
「…し、…知らねぇ…」
天晴はご丁寧にもマーブロの質問に答えていた。するとマーブロはにやりとすると、
「スポーツ選手が試合前に長期間にわたって禁欲するのは何故なんだい?」
と聞いて来た。
「…ま、…まさ…か…!!」
アカニンジャーのマスクの中で天晴の顔が真っ赤になる。するとマーブロは、苦笑すると、
「ようやくその答えが分かったようだねぇ、アカニンジャー?」
と言った。
「スポーツ選手が大事な試合前に禁欲するのは、それをすることによって体力の消耗だけではなく、大事なエネルギーまで放出してしまうからなんだよ。つまり、そこから出されるいやらしい液体にこそ、強靭なエネルギーが宿っているはずなんだよね!」
「…お、…お前…!!…まさか…ッ!?」
天晴が声を絞り出すように言うと、
「ピンポ〜ン!まさにその通りぃッ!!」
とマーブロが素っ頓狂な声を上げた。
「だからボクは様々なスポーツ選手を誘拐し、彼らの体を徹底的に調査したんだ。1人でもボクの理想の手下になるヤツがいないかなってね!」
それだけ言うとマーブロは再び悲しげな、いや、呆れたような表情を見せた。
「だけど、ヤツらはみぃんな不合格だった。いい光景だったよ。嫌がり、必死に逃げようとするヤツらを全員磔にしてさ、男のシンボルをたぁっぷりと愛撫してやったのさ。手とか口とか、足とか使ってね!その時のヤツらのよがり声ったら最高だったな!泣き叫んで必死に許しを得ようとして。そしてそこから溢れ出る蜜を取り出してあげた瞬間、物凄いいい声で鳴いたんだよ!そのうちヤツら、コロッと堕ちちゃってねぇ…。しまいにゃ、あまりの快楽に狂っちゃって…。…最後には…」
「…死…?」
天晴は信じられない思いでマーブロを見つめている。するとマーブルはふるふると首を左右に振ると、
「いやいや、さすがのボクもそこまではしていないよ。でもねぇ、実質、死んだようなものかなぁ?だってヤツらの男としての機能を作り出す2つのボールはいい音を立てて潰れちゃったんだもの!」
と言った。
その時、天晴の中で何かが切れた。
「…お…、…お前…ええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
次の瞬間、天晴の姿がマーブロの視界から消えた。
「…ッ!?」
呆気に取られるマーブロの目の前に天晴が突然、姿を現した。
「ひいいいいっっっっ!!!!!!??」
マーブロが悲鳴を上げた。その瞬間、
ズバアアアアンンンンッッッッ!!!!
と言う衝撃音が上がり、マーブロの体から火花が飛び散った。
「ぐはああああッッッッ!!!!」
マーブロが背後へ吹き飛ぶ。
「…お前、…ぜってぇ、許さねええええッッッッ!!!!」
怒りに体がブルブルと震える天晴。その手に握られた忍者一番刀の柄がギリギリと音を立てた。
「お前を倒して、お前に誘拐されたみんなを助けるだけだああああッッッッ!!!!」
「…ク…ッ!!」
その時、マーブロがヨロヨロと立ち上がる。そして、
「…ンフフフ…!!」
と不気味に笑い始めた。
「…やはり、…ボクの理想とする手下はキミしかいないようだねぇ、アカニンジャー…!」
「…ッ!?」
その時、天晴は背筋が凍り付くような思いがした。マーブロの瞳が妖しくギラリと光ったのだ。
「…キミのエネルギー、…全て貰い受けるとしよう…!」