機械の奴隷 第3話

 

「…オレ、…今、好きな女の子がいるんだよ…!」

 顔を真っ赤にして言う清史郎。

「でも、いざ、付き合うとなったら、オレ、そんな経験ないから…」

「…そんな…経験…?」

「だからッ!!

 清史郎は顔を真っ赤にして、

「…いざ、…彼女と、…エッチすることになったらってことだよッ!!

 と言った。

「…あー…」

 ぽりぽりと頭を掻く昌平。その時だった。

「…そうだ…」

 不意に清史郎が言った。そして、昌平を見上げ、

「昌平さん!練習させてくれない?」

 と言い放ったのだ。

「…え?」

 昌平は目をぱちくりさせる。

「だからさ、昌平さんの体で、僕にエッチなことを教えてよッ!!

 だが、昌平は相変わらず、きょとんとしたままだ。

「ちょっとッ、昌平さんッ!!聞いてるのッ!?

 清史郎は思わず声を荒げる。

「…え、…あ…、…いや…」

 昌平は清史郎の言っていることを理解しようとしているようだが、いまいち、思考回路がついて行かないようで、

「…オレの体で、…エッチな…こと…?」

 とぶつぶつと言っている。

「だぁかぁらぁッ!!

 痺れを切らしたかのように、清史郎はズカズカと昌平のもとへ歩み寄ったかと思うと、その右手を素早く伸ばした。その途端、

「ふぎゃッ!?

 と言う昌平の素っ頓狂な声が響き渡ったのだ。そして同時に、

「うおッ、でっけえッ!!

 と言う清史郎の歓声も聞こえた。

「昌平さんのここ、でかいんだねぇ!」

 清史郎が右手を伸ばした先には、こんもりとした膨らみがあった。

 水色の制服に包まれた昌平の2本の足の付け根。そこに息づく、昌平の男としての象徴であるペニスとその下に息づく2つの球体。それを清史郎に握られていたのである。

「…お…お…、…おぉぉ…!!

 昌平は顔を真っ赤にし、目を大きく見開いて腰をくの字に折り曲げている。

「ねぇ、昌平さん。昌平さんのここで、僕にエッチなことを教えてよ」

 静かに、囁き掛けるように言うと、清史郎は昌平のそこをやわやわと揉みしだき始めた。

「…あッ!!…あッ!!

 その刺激に、昌平が思わず身悶える。そして、

「…やッ、…止めろよッ!!

 と体を大きく捻らせ、清史郎の手を振り解いた。

「何だよぉ、昌平さぁん!」

 清史郎がぷうっと顔を膨らませる。

「オーレンジャーなんだから、地球を守ることも、僕達のようないたいけな子供を守るのも仕事だろうッ!?

「どこがいたいけな子供だッ!!

 思わず突っ込んでいた。

「…あ、…あのね、清史郎君…」

 苦笑しながら昌平は清史郎を見つめる。

(とんでもないものに引っ掛かってしまった…)

 昌平は内心、そう思っていた。

「…き、…君はまだ中学生だろう?…た、…確かに、エッチなことについての興味はあると思うけど、…さ、…さすがにそれを教えるってのは、…ちょっと…なぁ…」

「何でだよッ!?

「…い、…いや、…だから…」

 作り笑いで何とかその場を凌ごうとする。だが、清史郎は鼻息荒く昌平に詰め寄って来る。

「…い、…いつかは、…いつかは、分かる時が来る…から…さ…!」

「もういいよッ!!

 突然、清史郎がそう言ったかと思うと、

 ゲシッ!!

 と言う音が聞こえ、

「うおあッ!?

 と昌平が素っ頓狂な声を上げ、右足を抱えた。清史郎が昌平の右足脛を思い切り蹴飛ばしたのだった。

「昌平さんのバカッ!!

 清史郎はそう言うと踵を返し、駆け出して行った。

「…そ、…そんなぁ…」

 泣きそうな表情で、昌平はそんな清史郎を見送った。

 

 昌平の視界から消えると、清史郎は立ち止まった。

「…フフフ…!」

 そして、俄かに不気味な笑みを浮かべたのである。

「…掴みは上々だ…!…これでアイツは、ボクのことが気になって仕方がなくなるはずだ…!」

 

「…う〜ん…」

 その言葉通り、オーレンジャー基地に戻ってからも、昌平はうんうんと悩み続けていた。

(…オレが断ったばかりに、…清史郎は毎日のように学校に行かずに公園でぽつんとしてる…)

 あの日以来、パトロールのたびに何度かグリーンジェッターであの公園へ行ってみた。そのたびに、昌平は清史郎の姿を目撃していたのである。

(…だけど…)

 正直に言えば、未成年に淫猥なことを教えるのは子供の教育上、良くないことだと分かっている。

(…だけど、…このままじゃ清史郎君は…)

 清史郎は学校へ通うことすらせず、それはそれで問題である。昌平のせいで、清史郎が学校へ通わなかったと言われたら、それはそれで別の問題になってしまう。かと言って、そんなことを他のメンバーに相談することも出来るはずがなかった。

(…どうしよう…)

 頭を抱えたくなるほど悩んでしまう。

 昌平としては、清史郎をちゃんと学校に通わせたかった。そもそも、好きな子がいると言うだけで学校に通えなくなると言うのも大袈裟すぎるだろうとも思ったのだが、それだけ、清史郎の心が純粋なのかもしれないとも思った。

(…しょうがない…ッ!!

 道を踏み外すことには心が痛んだが、背に腹は代えられない思いで、昌平はグリーンジェッターに跨った。

 

 ブオオオオンンンンッッッッ!!!!

 その日も、清史郎は公園にぽつんといた。

「おーい、清史郎君ーッ!!

 バイクのまま公園の敷地内に入り、ブランコに近付くと、昌平はヘルメットを取った。そんな昌平の顔を見た途端、清史郎はムッとした表情を浮かべ、

「…何だよ…?」

 とぶっきらぼうに言った。

「そんな怖い顔するなよ」

 ニコニコと笑う昌平。そして、

「この間は悪かったな」

 と言った。

「…この間…?」

 清史郎の顔がぴくりと動く。すると昌平はニッコリとして、

「教えてやるよ」

 と言った。その瞬間、清史郎の表情が俄かに明るくなり、

「…まッ、…まさか…ッ!?

 と声を上げた。

「おうッ!清史郎にレクチャーしてやるよ!女の子を喜ばせる方法をな!」

 そう言うと昌平は清史郎のもとへ歩み寄り、

「ただぁしッ!!

 と大声で言ったかと思うと、清史郎の両肩を掴んだ。

「1つだけ、ちゃんと約束して欲しいことがあるんだ」

「…約束?」

 清史郎が聞き返すと、

「…オレが清史郎にあんなことやこんなことを教えたら、清史郎はちゃんと学校に行くこと!…な!」

 と昌平は悪戯っぽくウィンクして見せた。すると清史郎は嬉しそうに、

「うん!ありがとうッ、昌平さんッ!!

 と、昌平の大きな体に抱き付いたのだった。

 

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