機械の奴隷 第4話

 

 かくして、清史郎の家へやって来た昌平。

「…ご両親は?」

 家の中をきょろきょろと見回しながら、昌平は清史郎に尋ねる。すると清史郎は、

「うちは共働きだから」

 と言った。

「…ご兄弟は?」

「…弟が1人、妹が1人…」

「そっかぁ!清史郎君が一番上のお兄さんなんだ!」

 昌平がわざと明るい声を上げるも、清史郎は黙ったまま、ぽすんとベッドに腰掛け、じっと昌平を見上げている。その視線に気付き、

「…あー…」

 と昌平は声を上げるとぽりぽりと頬を掻いた。

「…な、…何か、照れるな…」

 そう言うと昌平は両手を腰に当て、

「で?オレはどうすればいいのかな?」

 と清史郎に尋ねた。そして、清史郎の横に同じように腰掛けると、

「オレが、清史郎君にエッチなことをしちゃえばいいのかな?」

 と尋ねた。すると清史郎は、

「そんなことをしたら、昌平さんが犯罪者になっちゃうだろう?オーレンジャーが犯罪者になっていいのかよ?」

 と、昌平を小馬鹿にするように笑った。すると昌平は苦笑して、

「…じゃあ、どうすればいいんだい?」

 と問い掛ける。すると清史郎は、

「鈍いなぁ、昌平さんは!」

 と言うと体を乗り出し、昌平の両肩に手を掛けた。

「…お?…お?」

 昌平の視界がぐりんと動く。そして、ドサッと言う音と共に清史郎が自分の体の上に伸し掛かっていた。

「…え?…ええッ!?

 体の上で清史郎がニヤニヤとしている。

「…ま…、…まさ…か…!?

「そうだよ!」

 清史郎が言う。

「…オレが、昌平さんを気持ち良くするんだよ!」

「ちょちょちょちょ…ッッッッ!!!!

 いつの間にか、昌平の顔が真っ赤になっていた。そして、

「…あ、…あの、…あのね、清史郎君…?」

 と、視線を忙しなく動かし、しどろもどろになった。

「…オ、…オレが、…清史郎君に…、…犯されちゃう…のかい…?」

「何だよォッ!!そうじゃなきゃ、昌平さんが犯罪者になっちゃうだろうッ!?

 ぷっと顔を膨らませて言う清史郎。

「オーレンジャーが未成年に猥褻なことをした、って大騒ぎになってもいいのかよッ!?

「…そッ、…それは…ッ!!

「イヤだろ?出来ないだろう?」

「そッ、そうだけどッ!!

「それに、女の子を喜ばせる方法をレクチャーしてくれるって言ったの、昌平さんだろう?」

 清史郎はその時、不意に悲しげな表情を浮かべた。その途端、

「…ぐ…ッ!!

 と、昌平は言葉に詰まった。すると清史郎は、

「大人なんだから、自分の言ったことに責任取れよな!」

 と言い放った。

「…ぐ…うう…ッ!!

 顔が真っ赤になっている昌平。確かに、自分が清史郎にレクチャーするとは言った。道を踏み外すことも覚悟の上だったはずだ。だが、いざとなってみるとなかなか踏み出せないでいる。

(…だけど…!)

 昌平の思いはただ一つ。清史郎を学校に行かせること。

「…ふぅぅぅぅ…」

 暫くすると、昌平が大きな溜め息を吐いた。そして、

「…分かった…」

 と言った。その言葉に、清史郎の顔がぴくりと動く。昌平は照れ臭そうに笑いながらも、

「…いいよ。…オレを煮るなり焼くなり、好きにしろよ…!」

 と言った。その途端、

「本当ッ!?

 と清史郎が目を輝かせる。昌平は、

「ああ。約束だもんな!」

 と言ったかと思うと、

「で、オレはどうすればいい?」

 と清史郎に尋ねた。すると、今度は清史郎が顔を赤らめた。

「…あ、…あのね…」

 今までのつっけんどんな態度はどこへやら、急にしおらしい態度を取る清史郎。そして、

「…昌平さん…。…オーグリーンに変身して欲しいんだけど…」

 と言った。

「え?」

 きょとんとする昌平。すると清史郎は、

「…だって、オーグリーンの昌平さん、…すっごく、エロいんだもん…」

 と言った。そして、昌平の体を下りると、

「昌平さんの、筋肉ムキムキな腕とか足とかにスーツがピッタリとしていてさ、クッキリと浮かんでてさ、それが物凄くエロいんだよ。スーツなんかキラキラしてるから、余計に立体感があるって言うか…」

 と言いながら、昌平の腕や足をグイグイと揉んだ。

「…いいよ…」

「え?」

 清史郎が驚いて見上げると、ニコニコとしている昌平と目が合った。

「今日のオレはお前の言いなりだからな!何でも言うことを聞いてやるよ!」

 そう言うと昌平はベッドから起き上がった。そして、足を肩幅よりもやや広めに広げた。

「行くぜッ!!

 昌平のそれまでのだらしない表情から一転、キリッとした顔付きをすると、

「超力変身ッ!!

 と叫び、両手に装着しているパワーブレスをぶつけ合った。その途端、両方のブレスのスイッチが起動し、昌平の体が眩しい光に包まれた。そして、その光が消えた時、

「…うわあ…!」

 と清史郎がほうと溜め息を吐いた。

「…昌平さん…。…やっぱり、カッコいい…!」

 オーグリーンに超力変身した昌平。光沢のある鮮やかな緑を基調としたスーツ。その胸元、首には古代文明を思わせる金色のデザインが施されていた。

「ねえ、昌平さん!マスクは外してよ!」

「OK!」

 昌平はそう言うと両手を頭へ持って行き、

「…よ…っと…!」

 と言いながら四角いバイザーを持つオーグリーンのマスクを外し、ゴトッと言う音を立ててデスクの上に置いた。

「どうだい?」

 ニコニコしながら昌平が言うと、

「昌平さあんッ!!

 と、清史郎が抱き付いて来た。

 

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