機械の奴隷 第22話

 

「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!

 その日を境に、昌平は人が変わったようになっていた。

「…う、…うううう…ッッッッ!!!!

 暇さえあれば顔を赤らめ、大粒の汗を顔から噴き出させる。それだけではなかった。

「…ぐ…、…おおおお…ッッッッ!!!!

 何かを隠すようにデスクに深く腰掛けている。そして、立ち上がると不自然なくらいに腰を屈め、ひょこひょこと歩く。そんなだから、他のメンバーが訝しげに昌平を見ていた。

「もうッ、昌平さんったら、イッちゃった後にまた寝ちゃうんだもん!」

 あの日。清史郎の家でオーグリーンに超力変身し、再び清史郎と淫猥なことをした日――。

 昌平は、自身の男としての象徴であるペニスとその下に息づく2つの球体が壊れるのではないかと言うほどに刺激をされ、大量の淫猥な液体を放出した。

「フフッ!」

 その時、清史郎は意地悪い笑みを浮かべ、昌平を見ていた。

「だからさ、昌平さんが寝てしまっても、オレは昌平さんのチンポをずっと刺激してたんだ。そしたらさ、昌平さん、何度も何度もイキまくったんだよ!!

 その記憶があるようでないような、そんな不思議な感覚を味わっていた。それはそうだろう。昌平が大量に淫猥な液体を放出したのは、清史郎、いや、ブルドントが作り出した悪夢の中なのだから!

 だが、昌平はこの頃になると、まともな思考能力を持ち合わせることは出来ないようになっていた。

(…もっと…!!

 バラノイアが出現した時にはオーグリーンとして戦い、余計な雑念は振り払った。それゆえ、体に密着するようなオーグリーンのスーツに包まれても、自身の男としての象徴であるペニスは平常時の大きさを保つことが出来た。

 だが、暇になれば、清史郎とのことばかり考えてしまう。

(…もっと…ッ、…あの刺激を味わいたい…ッ!!…清史郎に…、…犯されたい…ッ!!

 いても立っても居られなくなり、昌平はグリーンジェッターのエンジンを思い切りふかすと、物凄い勢いで清史郎の通う学校へと向かっていた。

(…少しでも…、…早く清史郎に会いたい…!!

 まるで恋する乙女のように、今の昌平の心の中ではおぞましい思いがぐるぐると渦巻いていた。

 

「…え?…そんな子は、…いない…?」

 待てど暮らせど、清史郎が学校の校門から出て来る気配がなく、校門から出て来る学生の数が減って行き、次第に日が暮れて行った。不安と苛立ちが募った昌平が学校の職員室へ乗り込み、清史郎のことを聞いてみたところ、意外な答えが教師から返って来た。

「…ウ、…ウッソだあ!だって、オレは清史郎に会ってるんだぜ?」

 そう言った時、教師は生徒名簿を持って来た。各クラス、あいうえお順に並んだそれを順番に見て行く。だが、どこをどう探しても、清史郎の名前を見つけることは出来なかった。

「…ど、…どう言う…ことだ…!?

 ドクンッ!!ドクンッ!!

 その時、昌平の心臓が大きく高鳴った。

「うああ…ッ!!

 その時、2本の足の付け根部分に息づく、昌平の男としての象徴がムクムクと頭をもたげ始め、空色の制服のズボンのその部分を大きく押し上げようとした。

「あ、ありがとうございましたああああッッッッ!!!!

 それに気付かれまいと、昌平は急いで清史郎が通うと言っていた中学校を後にした。

 

 ピンポーンッ!!ピンポーンッ!!

 清史郎の家に着くと、昌平は狂ったようにドアホンを押した。

「清史郎ッ!!清史郎ッ!!

 ドアホンを押すのと同時に、ドアをドンドンと物凄い勢いで叩く。

「いるんだろッ、清史郎ッ!?

 その時だった。

 ガチャッ、と言う音を立ててドアがゆっくりと開く。そのスピードさえもどかしく感じた昌平は、ドアに手を掛けると、物凄い勢いでそれを大きく開いていた。

「うわああああッッッッ!!!!

 同時に、やや高めの声が辺りに響き渡った。

「…しょ、…昌…平…さん…?」

 清史郎が驚いて昌平を見上げている。

「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!

 顔を真っ赤にし、大粒の汗を浮き立たせて清史郎を見下ろしている昌平。

「…ど、…どうしたの、昌平さん?」

「…どう言う…ことだ…?」

 昌平の口から出て来た第一声がそれだった。

「…え?」

 当然、清史郎はきょとんとする。すると、昌平は辺りを見回し、大きく深呼吸をした。そして、

「…取り敢えず、中に入っていいか?」

 と清史郎に尋ねる。すると、清史郎は、

「…あ、…う、うん…」

 と言うと、昌平を家の中へと通した。

 

 しんと静まり返った清史郎の部屋の中で、清史郎と昌平が向かい合って座っている。

「…どうしたの、昌平さん?…今日は何だか、変だよ?」

 厳しい表情で清史郎を見下ろす昌平に不安を感じたのか、清史郎が恐る恐る尋ねる。すると、昌平はゆっくりと、いつもよりもやや低い声で話し始めた。

「…お前が通っているはずの中学校へ行って来た。…お前に少しでも早く会いたくて…。…だけど、…いつまで経ってもお前は学校から出て来ない。休んでいるのかとも思った。けど、オレと約束してからのお前はちゃんと学校へ通うようになった。いや、正確にはお前は通っていなかったんだ。そもそも、お前の籍が学校にはなかったのだから!」

 少しずつ顔が赤みを帯び、握られている拳がギリギリと音を立て始める。

「まさかと思って、オレは近くの中学校も何校かあたってみた。けど、お前の籍はどこにもなかった…!!

 じっと清史郎を見つめる昌平。いや、見つめると言うよりも、睨み付けていた。

「…お前、…オレにウソを吐いたのか?」

 それでも清史郎は昌平を見つめたまま、微動だにしない。

「…オレにエッチなことを教えてもらうために、…お前は、…平気でウソを吐いたのか…!?

 昌平の顔が真っ赤になっている。

 と、その時だった。それまで夕陽が差していた家の中が、急に真っ暗になった。

「…なッ、何だッ!?

 昌平が驚いて声を上げ、辺りをグルリと見回した時だった。

「…ククク…!!

 昌平の目の前にいる清史郎が不意に笑い始めた。

「…清…史…郎…?」

 その笑い声が2つに聞こえる。清史郎自身の高い声と、もう1つ、低い声。

「あ~あ、気付いちゃったんだ?」

 真っ暗闇の中で浮かび上がる清史郎の姿。

(…この姿…、…どこかで…!?

 目の前の光景に呆然となる。

「気付かなかった方が、キミのためだったのにねぇ…!!

 その時、清史郎の目がギラリと光ったかと思うと、その光が清史郎自身を包み込み、その光の中で清史郎が姿を変え始めたのだ。

「…ま、…ま…さ…か…!?

 昌平が驚いて目を見開く。

「…ふぅぅ…」

 清史郎よりも背が低く、でっぷりとした体格。ウィィィィン、ウィィィィンと言うモーターの音。

 マシン帝国バラノイア皇子ブルドントが、そこにはいたのだった。

 

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