機械の奴隷 第24話
…ドクンッ!!…ドクンッ!!
オーグリーン・昌平の心臓が今までの中で最も大きく高鳴った。
「うぐッ!?」
その瞬間、昌平はオーグリーンのマスクの中で目を見開き、胸を押さえてその場に蹲ってしまっていた。
「…ぐ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!」
…ドクンッ!!…ドクンッ!!
呼吸が出来ない。意識が遠退きそうになるほど大きく高鳴る心臓。
「ウフフフ…!!」
目の前には、勝ち誇ったように笑うカイザーブルドントが目をギラギラさせながら立っていた。
「苦しいだろう、オーグリーン?」
そう言うと顎に手を当てる仕草をしながら、
「やはり機械物質を人間の体内に流し込むのは拙かったか?」
と言ったのだ。
「…な…に…!?」
朧気だが、何となく心当たり、いや、悪い予感があった。するとカイザーブルドントは手にしていた道具を昌平に見せながら、
「この針の先をお前のチンポの先端に挿入し、この漏斗から、ボクはボクの体内で作り出した特殊な溶液を流し込んだ。さっきは、それはキミの生殖機能を刺激し、キミの体内で作り出される淫猥な液体を急速に作り上げるもの、いわゆる、媚薬だと言った。…でも、本当は媚薬なんかじゃない!!キミをボクの生ける奴隷にするための秘薬だったのさ!!」
と言った。
「…秘薬…だと…!?」
ブルブルと体が痙攣する。その体に鞭打つように、昌平は、
「…ぐ…、…おおおお…ッッッッ!!!!」
と呻き声を上げながら、ゆっくりと立ち上がり、
「うぅおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と雄叫びを上げた。
「…ほう…」
カイザーブルドントはその光景を見てやや驚いたような様子を見せたが、すぐにニヤリと笑い、
「まだまだそんなに動ける力が残されているのか?全く、超力と言うのはどこまで素晴らしい力なんだろう!!」
と言った。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
体が物凄く重い。今までこんなに自分の体が重いなんて、感じたことがあっただろうか。そんな昌平の心を見透かすように、
「オーグリーン。今、キミは思っているに違いない。体がとても重い、と」
と言った。
「…ッ!!」
その瞬間、昌平はその場に凍り付いた。
…ギシッ!!…ギッ、…ギシ…ッ!!
振り上げようとした両腕がギシギシと音を立て、鈍く動く。
「…な、…何だ…ッ、…これ…ッ!?」
「ウフフフ…!!」
カイザーブルドントは相変わらずニヤニヤと笑っている。
「これで分かっただろう?キミの体は少しずつボクが作り出した秘薬に冒されて行っていたのさ!キミの関節と言う関節は全て機械のように動きが鈍くなったのさ!!」
その時だった。カイザーブルドントは手にしていた道具、昌平の淫猥な液体を何度も奪い取ったそれを無造作にぽいと投げ捨てると、腰に提げていたサーベルを静かに抜いた。
「…ッ!?」
その殺気だった禍々しいオーラがカイザーブルドントを包み込むのが分かった時、昌平は後ずさろうとした。だが、体の節々と言う節々がギシギシと音を立てて思うように動かない。
「…ククク…!!」
カイザーブルドントの目がギラギラと光る。
「…最早、キミはボク達バラノイアの敵ではない!ただの木偶の坊となるのさ!運動能力を奪われ、キミはボクに超力を捧げるだけの人形と化すのさ!」
その瞬間、昌平の目の前で銀色の閃光が瞬いた。そして、
ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う音と共に、オーグリーンのマスクが爆発した。
「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
目の前で衝撃がして、昌平は背後へ思い切り吹き飛ぶ。
ガシャアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!ドガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!
元はと言えば清史郎の部屋だ。その中にあった家具類に体をしたたかにぶつけ、それらが粉々に破壊されて行く。
「…う…、…うううう…ッッッッ!!!!」
埃の中から、昌平が体を起こす。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
そんな昌平の目の前に、粉々に割れたオーグリーンのマスクが転がっている。
「…く…っそ…オオオオ…ッッッッ!!!!」
眉間から血を滴らせている。今頃になって、清史郎との出会いは、バラノイアが仕組んだ罠だったと言うことに気付くなんて…!
「あはははは…ッッッッ!!!!」
カイザーブルドントが笑う。
「バカだねぇ、オーグリーン。ボクが清史郎となってキミに近付いたことさえ、全く気付いていなかったんだから…!」
「…や、…止めろ…!!」
オーグリーンの光沢のある鮮やかな緑色のスーツが埃でくすんでいる。昌平の目の前には、サーベルの冷たい刃先を突き出したカイザーブルドントが、その間合いをゆっくりと縮めて行く。
「…終わりだよ、…オーグリーン…!!」
「…ッ!!」
「ただしッ、キミを殺すようなことはしないよ!!キミはボクの栄養補給源になってもらうんだからさッ!!」
そう言った時だった。カイザーブルドントの目がギラリと光った。そして、その手に持っていたサーベルが目にも留まらぬ勢いで動き始めたかと思うと、
ズバンッ!!ズガンッ!!ガアアアアンンンンッッッッ!!!!ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う音と共に、昌平のオーグリーンのスーツのあちこちがスパークし始めたのだ。
「うあッ!!ああッ!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!」
体に激痛が走り、昌平は悲鳴を上げる。
「…やッ、…止め…ろ…オオオオ…ッッッッ!!!!…止めて…くれええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「あはははははははは…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
狂ったようにサーベルを振り続けるカイザーブルドント。
「苦しめッ!!もぉっと苦しめッ!!キミの動きを完全に奪った後、キミをボクの木偶の坊にしてやるさ!!」
「うぐわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ひがああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ぐぎゃああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
辺りに埃と煙が立ち込め、どれだけ昌平が絶叫しただろう。
…シュウウウウウウウウ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!…シュウウウウウウウウ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!
その埃と煙が晴れた時、オーグリーンのスーツから煙を立ち上らせ、ぐったりと両足を投げ出し、ズルズルと崩れ落ちたようになった昌平の姿がそこにはあった。
「…そうだ…!!」
その時、カイザーブルドントは何かを思い付いたようにポンと手を打つと、
「キミの処刑の様子を、地球の愚かな下等生物に見せ付けてやろう!!ボクだけが楽しむのもいいけど、やっぱり、他のオーレンジャーにも楽しんでもらわなくちゃ!!やっぱり、ボクは天才だああああッッッッ!!!!」
と、狂ったようにはしゃぎ、そう言った。
「…」
その言葉を聞いた時、昌平の目からは一筋の涙が零れ落ちた。