大義名分 第4話
「…神官…ポー…!!」
男なのか、女なのかは分からないほどに中性的な顔立ち。だが、全身真っ白なドレスのようなものを身に纏い、キラキラと輝く飾りを付けている。その頭にはミラーボールのような大きな円形の冠。そして、その天頂部には角が付き、そこから真っ黒なレースのようなものが垂れ下がっている。
「…」
その目は冷たい光を放ち、目の前で睨み付けているシャイダー・沢村大を無表情に見つめていた。
「ようこそ、シャイダー。歓待いたしますわ」
「ここは、どこだッ!?」
「ここは見ての通り、人もまばらな奥深い山里。誰にも迷惑がかからない、我々にとっては最高の場所なのです」
そう言った神官ポーの目がカッと見開かれ、
「そう。あなたの命を奪うのに持って来いの場所なのです!!」
と言った。その横で、
「宇宙刑事って、本当に馬鹿だよなァ…!!」
と、ジンがニヤニヤと笑う。
「お人好しも度が過ぎると、自分の身を滅ぼすことになるんだぜ?」
「何ッ!?」
その時だった。
「…ッッッッ!!!?」
沢村はその場で思わず凍り付いた。
「…き、…君達は…!?」
「「「「「…ククク…!!」」」」」
目の前には小学生くらいの子供がいるはずだった。だが、今、沢村の目の前にいるのは沢村と同い年くらいの男5人。それぞれの顔には邪悪な笑みが浮かび、目を野獣のようにギラギラと光らせていたのだ。
「これが俺達の本来の姿だ」
ジンがそう言うと、
「子供の姿になっていたのは、お前を簡単に誘き寄せるためさ!!」
とダイが言う。
「お人好しだもんなァ、宇宙刑事って言うのはさ」
ブンがそう言えば、
「ほぉんと、簡単だったぜ!!あっさりと引っ掛かってくれちゃってさあッ!!」
とダンが笑い出す。
「ポー様の妖魔力で、オレ達は子供になった。もちろん、詳細な設定付きでねッ!!」
ボーイがそう言うと、ジンはニヤリと笑い、
「あだ名なんて嘘だ。お前があだ名だと思っていた呼び方こそが、オレ達の本当の名前だ」
と言った。
「…く…ッ!!」
沢村が思わず拳を握り締める。だが、後悔しても後の祭りだ。
その時だった。
「これこれ。お止しなさい」
ポーが静かな声を上げる。
「その者達はフーマ5戦士。その強さはヘスラーをも凌ぐほど。大帝王クビライ様が最も心を寄せる者です。そんな戦士があなたをこのショーへと歓待いたします」
ポーの静かな声。だが、その声には殺気が漂っているのが分かった。
「大帝王クビライ様に仇為す者よ、消え去りなさいッ!!」
その瞬間、ポーの目がカッと見開かれ、
「キーリーッ、テンッ!!」
と叫ぶと、手にしている大きな杖のようなものをブンと振った。と次の瞬間、
ショワショワショワショワ…!!
と言う不気味な声と共に、大勢のミラクラーが現れたのだ。
「行くぞオオオオッッッッ!!!!シャイダーッッッッ!!!!」
「ヒイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ジンの大声と共に、ミラクラーと不思議獣ヌメヌメ、そして、ジン達フーマ5戦士が一斉に沢村に飛び掛かった。
「とぅッ!!」
「とぅッ!!」
次々に襲い掛かるミラクラーを剣型の武器・レーザーブレードで叩き斬る。
ショワアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!
叩き斬られたミラクラー達は不気味な叫び声を上げ、クルクルと体を回転させながら吹き飛び、地面に倒れて行く。だが、多勢に無勢とはこのことだ。目の前で目まぐるしく動くミラクラー達。
「…く…ッ、…くそ…ッ!!」
苛立ちを覚えると、右腰に提げている銃に手を掛ける。そして、素早く抜くと構え、
「ビデオッ、ビームガンッ!!」
と叫び、そのトリガーを一気に引いた。
バシュウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!
鋭い音と共に眩く輝く青いビームが飛んで行き、ミラクラー達に次々に当たって行く。
ショワアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!
ミラクラー達の体に青い稲妻のような電光が走ったその瞬間、
ドオオオオオオオオンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う爆発音が起こり、大きな炎が立ち上った。
「ヒイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
間髪入れず、不思議獣ヌメヌメが飛び出して行く。
「とぅッ!!」
「ヒイイイイッッッッ!!!!」
「とぅッ!!」
「ヒイイイイッッッッ!!!!」
体中にある触手をブンブンと振り回し、沢村に襲い掛かるヌメヌメ。そんな触手をかわしながら、何とかしてヌメヌメの懐に入り込もうとする沢村。
その時だった。
「ヒイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ヌメヌメが一際甲高く叫んだかと思うと、その体から無数の触手が飛び出して来た。そして、それは至近距離まで近付いて来ていた沢村の体をあっと言う間に束縛したのだ。
「…な…ッ!?」
両手、両足、腰、首。あちこちに毒々しいほどに真っ赤な触手が巻き付き、ギリギリと言う音を立てて締め付けて行く。
「…ぐ…ッ、…ああ…ッ!!」
体の自由が利かない。ギリギリと締め付けられ、体中が痛み、呼吸がまともに出来なくなる。気が付けば、沢村の体は宙に浮いていた。
「…あ…ッ、…ああああ…ッッッッ!!!!」
手首に巻き付いた触手。それによって少しずつ感覚が薄れて行き、
…カンッ!!…カラーン…ッ!!
と言う音がした時、沢村の足元にレーザーブレードが落ちていた。
「ヒイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時、ヌメヌメは勝ち誇ったような雄叫びを上げると、沢村の体を思い切り宙へ持ち上げた。そして、そのまま勢い良く地面へ振り下ろしたのだ。
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
鈍い音が聞こえ、
「うわああああッッッッ!!!!」
と言う沢村の悲鳴が響き渡る。
「ヒイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ヌメヌメは沢村の体中に巻き付いている触手を離そうとせず、宙へ持ち上げては思い切り振り下ろし、また宙へ持ち上げては振り下ろすを繰り返す。そのたびに沢村は、
「ぐはああああッッッッ!!!!」
「ああああッッッッ!!!!」
「ぐぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と悲鳴を上げる。
「あ〜あ。アイツ、このまま死んじまうんじゃねえの?」
ダンがニヤニヤしながら言う。すると、
「いいえ。この程度のことでは死ぬことはないでしょう」
と、ポーが静かに言った。
「…まだまだです。まだ、シャイダーに死なれては困るのです」
厳しい眼差しで目の前の光景を見つめるポー。
「我々フーマの1万2000年の恨みを晴らすには、あれだけで死ぬのは許されないことなのです…!!」