大義名分 第6話
「フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライッッッッ!!!!」
神官ポーの呪文がうるさいほどに響き渡る。
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
耳を塞いでもその呪文は聞こえて来る。
「…あ…ッ、…頭が…ッ!!…割れる…ッ!!」
体中が見えない鎖のようなものに物凄い強さで締め付けられ、まるで重力に押し潰されるかのように体が動かない。そして、頭が激しく痛み、意識が遠退きそうになる。
「フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライッッッッ!!!!」
シャイダーを憎悪の眼差しで睨み付け、ひたすら呪文を唱え続けるポー。そんなポーを余所に、
「…え?」
と、それまで沢村と剣を交えていたジンは呆然としていた。
「…ヘヘッ!!」
その時、ブンがニヤニヤと笑った。
「…アイツ、そろそろヤバいんじゃないか?」
「…フッ!!」
ブンの横で、ダイがニヤニヤと笑う。
「今なら、アイツをあっと言う間にボロボロに出来そうだぜ…!!」
そう言って両拳を握り、ファイティングポーズを取ったその時だった。
「当たり前です」
「ポー様?」
ポーが静かに言う。だが、その目は激しい憎悪の感情が渦巻き、目の前で苦しんでいる沢村を睨み付けていた。
「我ら1万2000年の恨みがこもっているのです。まだまだです。まだまだ、我々の恨みを晴らすには、まだ足りない!!」
その言葉に、
「…怖ッ!!」
と、ダンが首を竦めた。
その時だった。
ガシャアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
けたたましい音を立てて、ポーが握り締めていた杖の柄を地面に叩き付けた。その瞬間、
「うがああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、沢村が悲鳴を上げ、ゴロゴロと地面を転がった。
「ええいッ!!」
ポーがその杖を大きく振ると、
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、沢村の体がまるでその杖の動きに合わせるかのように真横へ吹き飛び、ドゴオオオオッッッッ、と言う激しい衝撃音と共に沢村の体が地面に激しく叩き付けられる。
それからも、ポーは無言で杖をブンブンと振り回す。そのたびに、
「ああああッッッッ!!!!」
「あぐッ!!」
「ぐわッ!!」
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と沢村が悲鳴を上げ、ドゴオオオオッッッッ、ドゴオオオオッッッッ、と言う鈍い音を立てて地面に体を激しく打ち付ける。
(…何とか…、…しなければ…ッ!!)
だが、何とかすると言ったところで、ポーは遠くにいる。その目はギラギラと憎悪の炎が燃え滾り、口はまるで機械のように同じ言葉を紡ぎ出す。
「フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライッッッッ!!!!」
「うがああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
だが、地の底から響く呪詛はいつまで経っても消えることはなく、耳を塞いでも心の奥底にまで響いて来る。その呪詛は沢村の精神をも支配しようとしていた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
コンバットスーツの回路が暴走し始め、沢村の生命活動へも影響を及ぼし始める。呼吸を乱れさせ、窒息させようとする。さらに精神力、体力を削ぎ、沢村を木偶の坊にしようとしていた。
「…オレは…ッ!!」
その時、シャイダーの銀色のマスクの中で、沢村の目が光を灯す。
「…オレは…ッ!!…負けない…ッ!!…フーマの大侵略を…、…止めてみせる…ッ!!」
「…あれはッ!?」
シャイダーの銀色を基調とした眩いコンバットスーツ。その周りに、青白いオーラが纏わり付いたのを、ポーは見逃さなかった。
と、その瞬間、ポーの杖に向かって何かが投げ飛ばされて来た。そして、
キイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う音と共に、その杖が大きく傾いた。
「…あ…ッ!!」
思わず声を上げるポー。と同時に、
「…ッ!?…束縛が消えたッ!!」
と、沢村は大きく身を翻す。そして、
「とぅぅぅぅぅッッッッ!!!!」
と言う叫び声と共に、ポーやジン達がいる場所へ飛び込んで来たのだ。
「くそったれええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ダンが長槍を振り回し、
「でぇやああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と沢村に突進して行く。
「はいッ!!はいいいいいッッッッ!!!!」
「とぅッ!!とぅぅぅぅぅッッッッ!!!!」
「はああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
今度はボーイがダガーを両手に持ち、素早く動いて沢村の懐へ潜り込む。そして、それを大きく横へ振ったその瞬間、
ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う衝撃音と共にコンバットスーツがスパークし、
「ぐわああああッッッッ!!!!」
と、沢村が悲鳴を上げる。
「うおおおおおりゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そこへ、鋼鉄のナックルを嵌め込んだダイが突進して来る。そして、右手を大きく突き出した。
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
その鋼鉄の拳は沢村の顔面を捕らえ、
「ぐはああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う悲鳴を上げて、沢村が背後へ転がる。
「隙ありイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
今度はブンが両手に持っていた星形の手裏剣のようなものを投げ付ける。
カッカッカッカッ!!!!
それが沢村の体に突き刺さると、
ズガアアアアンンンンッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!ドガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と大爆発を起こす。その爆発に、
「ひがああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、沢村が叫び声を上げた。
「1万2000年の恨み、晴らしますッ!!」
すかさず、態勢を整えたポーが声を上げると、手にしている大きな杖を振った。
「キーリーッ、テンッ!!」
その瞬間、沢村の視界がグルグルと回り始める。
「…こ…ッ、…これは…ッ!!…不思議時空…ッ!?」
その時、沢村の体は宙に浮く別の次元・不思議時空への入口に物凄い勢いで引き摺り込まれて行ったのだった。