大義名分 第7話
「シャイダーめを不思議時空に引き摺り込め!!ヤツをそこから二度と出すなッ!!」
大気中に浮かぶ不気味な真っ黒な渦。その渦の奥に広がる、マーブル状の空。そこに物凄い力で引き摺り込まれる直前、沢村は大帝王クビライの不気味な声を聞いたような気がした。
不思議時空。クビライの指示により、ポーが発生させる不可思議な亜空間。天界や地上界とともに宇宙を構成しており、内部では全ての原子核が圧縮され、6千度の熱と光を発して煮え滾っている異次元空間。
(…だがッ、ポーは何も言わなかった…!!)
ぐるぐると渦巻く世界。そこに落ちて行きながら、沢村は思っていた。
(ポーの口は、全く動いてはいなかった…!!)
聞こえて来るのは、あの忌まわしい不気味な呪文だけ。
「フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライッッッッ!!!!」
(…ッ!?…まさか…ッ!?)
その声は沢村がどんなに耳を塞いでも聞こえて来ていた。
(…しまった…!!…オレは…ッ、…オレは…ッ!!)
ポーの思念波に気を取られすぎていた。それに気を取られすぎて、クビライの言葉が聞こえた直後、
「不思議時空、発生ッ!!」
と、ポーが叫んでいたのに気付かなかったのだ。だが、もう後の祭りだ。
「…うう…ッ!!…うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
果てしない空間をどこまでも、どこまでも落ちて行く。そして、
ドオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う音と共に地面にしたたかに体を打ち付けた。
ゴオオオオッッッッ、と言う地響きのような音が聞こえて来る。
「…ここは…、…どこだ…!?」
「だから、ここが不思議時空だっつーのッ!!」
その声が聞こえて来た時だった。
ヒュッ!!ヒュッ!!
突然、あちこちからロープが飛んで来て、沢村の両手、両足、首に巻き付いた。
「うわッ!!」
「あ〜あ、こんなのに簡単に引っ掛かるなんて…」
「宇宙刑事って言うやつァ、本当は物凄くバカなんじゃねぇの?」
「いや、バカだからこんなところに簡単に引き摺り込まれるんだろう?」
いちいち腹が立つ言葉を放ちながら、ジン、ダイ、ブン、ダン、ボーイが姿を現す。その目はギラギラと野獣のように輝き、口元は不気味に笑っている。そして、その背後には神官ポーが静かに佇んでいた。
「…これで、お前も終わりだ…!!」
ジンがニヤリと笑って言う。その目がギラリと光った時だった。
ビキビキビキビキイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
沢村の両手、両足、首に巻き付いているロープに眩く光る真っ白な蛇のように蠢く超高圧電流が流される。
「うぐううううううううううううううううッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その超高圧電流のせいで、コンバットスーツの電子回路が再び暴走を始める。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
体中から力が抜けて行く。痺れと共に意識が飛びそうになって行く。呼吸がまともに出来ない。
その時だった。
「はああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ダンが両手に短い槍を持ち、沢村に飛び掛って来ると、それをX字に振り翳した。
ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
激しい衝撃音と共にコンバットスーツがスパークする。
「おおおおりゃああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ダンはくるくると回ると、振り向きざまに再びその2つの短い槍を沢村へ向かって突き出した。
ドガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!
「ぐはああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その衝撃で、沢村が背後へ吹き飛ぶ。そして、その拍子に体中に纏わり付いていたロープが解けて行く。
「…く…ッ!!」
何とかして立ち上がったのも束の間、
「はああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、ダンが執拗に飛び込んで来る。
「とぅぅぅぅッッッッ!!!!」
ゴロゴロと地面を転がり、ダンの2本の槍をかわし、レーザーブレードを振り翳す。
ギイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
ダンの槍と沢村のレーザーブレードがぶつかり合い、大きな金属音を立てた。その時だった。
「行けッ、ボーイッ!!」
「オッケエエエエエエエエッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ダンの叫び声と同時に、背後からボーイが飛び出して来た。それも束の間、ボーイの体が光ったかと思うと、なんと、ボーイが何人も現れたのだ。
「…な…ッ!?」
これには沢村も呆然となる。だがその瞬間、
「「「「「はああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
と、何人ものボーイが一斉にダガーを沢村目掛けて投げ付けた。そして、それらは沢村のコンバットスーツに突き刺さり、
ガアアアアンンンンッッッッ!!!!ガアアアアンンンンッッッッ!!!!ドガアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンンンンンンンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
と言う大爆発を起こしたのだ。
「ぐぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
激しい衝撃音と共に激痛が体に伝わり、沢村は悲鳴を上げる。
シュウウウウッッッッ!!!!シュウウウウッッッッ!!!!
コンバットスーツから立ち込める無数の煙。
「…あ…、…うう…ッ!!」
意識が遠退き始める。目の前が霞む。
(…こ…ッ、…こんなところで…!!)
だが、こんなところで負けるわけには行かない。
「「「「「食らえええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
ボーイの甲高い声があちこちから一斉に響いて来る。
「…」
その時、沢村はシャイダーの銀色のマスクの中で静かに目を閉じた。
(…どこだ…?)
ボーイが分身をしているとは言え、その本体がどこかにいるはずだ。気を集中させ、それを探った時、沢村はカッと目を見開いた。そして、
「ビデオッ、ビームガンッ!!」
と、1人のボーイに向かってレーザービームを放った。
バシュウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!
鋭い衝撃音が聞こえたその瞬間、
「うわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言う悲鳴が聞こえ、分身は目の前からあっと言う間に姿を消し、ボーイ本人は背後へ吹き飛んでいた。
「ボーイッ!?」
ダンが駆け寄り、ボーイを抱き起こす。そして、沢村を睨み付けると、
「てんめええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、2本の槍の柄の部分を合わせ、長槍に変化させた。そして、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と突進して行く。
「とぅぅぅぅッッッッ!!!!」
闘志が漲る沢村。レーザーブレードでダンの長槍を受け止める。
ギイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
耳を劈くような金属音が辺り一面に響き渡った。
「…てんめぇ…ッ!!…よくも、ボーイを…!!」
目を真っ赤に血走らせて怒るダン。その力が強くなっていることに、沢村は気付いていた。